不完全神性機関イリス〈2〉 100億の時めぐる聖女

このページは約 6分36秒で読めます。

stars イリス、早くあなたと会いたいわ。きっと世界を変える出会いになる。

『イリスを私に預けなさい。結局、あなたが不完全神性機関を支えることはできない。できるのは世界で私しかいないのよ』
宝条軍学校の傭兵科に通う貧乏生徒の俺・凪は、機械工学科への転科に悩む機械マニアだ。夏休み前の定期テストをどうにか乗り切った俺は、クラスの連中に誘われて強制的に海に行くことになってしまう(もちろんダメ家政婦のイリスも一緒だ)。
海を満喫していた俺たちは、サラと名乗る一人の少女と出会う。みんなに可愛がられるサラだったが、俺と二人きりになった途端、「黙りなさい、愚民」と本性を現して――。
イリスを手に入れようとする少女の正体、そして真の目的とは!?

ちびっ子聖女はツンツンです!

そうだ、海へ行こう! とばかりにお約束の水着シーンが早くも登場。あれー、思ったより展開早いですね? もっと学園を舞台にラブでコメな展開がしばらく続くかと思ったら、ハイペースで物語の核心へと踏み込んできてる雰囲気。

前巻で不完全神性機関として対幽玄種戦において、世界最強クラスの戦闘能力を手に入れたダ家政婦メイド・イリス。ご主人の凪に対する、狙ってるんだか天然なんだかよく分からないお色気アプローチにも磨きがかかって、主人公たじたじですね。いや、相手が機械だと知らない人間からしたら、羨ましいやら妬ましいやらでどうにかなってしまいそうですね!?

壊滅的な家事能力をいかんなく発揮するイリスとの同棲生活にもなんとか順応し(ただし財政事情は火の車)、地獄の試験も突破してようやく手に入れた一時のバカンス。クラスメイトで破壊力抜群のボディの持ち主のシィやら、非常にわっかりやすいツンデレタイプなアンドロイドのミカエルやらの朴念仁・凪へのアプローチが微笑ましい。というか、こんなあからさまなアプローチを知らんぷりしてスルーするとか、そりゃあ、他人から変な性癖身につけたんじゃないかって疑われても仕方ないですよねぇ!? んー、でも人間に準じる権利を与えられたアンドロイドというなら、彼女との色恋沙汰もある意味では合法? この世界の科学力の基準がよく分かりませんが、ミカエル自身がそういう感情をプログラム上とはいえ表出させているというのは、人間と機械の付き合い方というのは思ったよりも柔軟なのかもしれませんねー。ただ、こと、凪をめぐる恋のバトルにおいては、彼女は結構損な役回りをしてそうですけどね。というか、凪の側が彼女に対して親友以上の感情を持ち得ない雰囲気なので報われないなあなんて同情じみた思いも抱いてしまいますが。

さて、新キャラも登場して盛り上がりを見せてきた本編。サラという偽名、そして紗砂という本当の名前。『氷結鏡界のエデン』でも氷結鏡界を維持する要として人々からあまねく崇敬される皇姫サラの若かりし頃……っていったら殺されそう(笑) 1000年前の世界では『エデン』で感じられる落ち着いた様子とはかけ離れたお転婆な様子で凪たちに接近してきますね。サラという化けの皮を被った妹キャラのあざとさと、紗砂としてのドSじみた本性のギャップ、そして時折見せる聖女ではないただの少女としての子供っぽい行動や「~もん」なんて言葉遣いだとか、あざとい! 狙いすぎていてあざとい! だが、それがいい! なキャラになっていますね。

運命の流れの中で、およそ常人とはかけ離れた異能を託された聖女。世界を背負うに足るだけの能力と、世界そのものの重責の中、たった一人で祈り続けてきた彼女が見つけた、もしかしたら彼女にとっても『希望』かもしれないイリス。対等に向き合える存在が、そこにいなかったがゆえに年相応の友だちを持つこともできず、ただプライドだけを膨らませていった紗砂と、凪のために在ることを最優先し自由に生きているイリス。得た力は同種のものでも、その力をどうやって振るうかを選択できるかできないかでここまで境遇に差が出るとは、紗砂が強制的にイリスを自分のものとしたいと思ったのは、その正義感と義務感だけでなく、自分と同じ境遇の対等になれる相手がほしかったからなんて甘いことも考えてしまいます。

そんな紗砂の望みは、結局はかなえられるわけですが、それは彼女が夢見ていたようなものではなかったのかな? イリスと同時についてきた凪は聖女にも容赦なくデコピンをかますようなスパルタですから(笑) イリスが不完全神性機関として目覚めたことがきっかけで手に入れた彼だけの力。あらゆる悪意に対して鉄壁ともいえる結界を持ち、一方で相手に傷ではなく痛みを直接与える力。自分を盾に誰かを守る純粋な願いと祈りの結実そのもののような力を得た凪は、これで名実共々、イリスに守られるだけでない、共に戦うことのできるパートナーへと成長できたのかもしれませんね。戦いの経験値はまだまだ足りなくても、切り札には十分なり得そうな能力。これまた、自身が望んだ力ではないかもしれませんが、滅びに瀕した世界で、それを守ることのできる力と立場が与えられたとしたら、それをどう使うかこそが、その者の真価といえるのではないでしょうか。

そして、なし崩し的に覇権戦争の代表にまで上り詰めてしまった凪とイリス。もう一人の重要人物・ツァリも時間には登場しそうだし、これでこの作品における主要人物はあらかた揃ったといえるのでしょうか。結果だけを見れば、この物語で語られるのは、いかに彼らが戦い、そしていかにして世界を後世へと伝えていったのか。勝利を掴むことができないのは確定している、結末が定められた物語です。けれど、希望を抱き、世界を諦めず、救うことを願い続けた彼女たちの思いがどんな形で咲き、そして散っていくのか、その行く末を見届けたいと思います。

hReview by ゆーいち , 2012/11/25

    スポンサーリンク

    Trackback URL

    No Trackback to 不完全神性機関イリス〈2〉 100億の時めぐる聖女

    Still quiet here.

    Comments are closed.