星とハチミツの存在証明

stars お前が不安なら、俺がお前の手を掴んでやる。お前が自分を見失いそうな時は、必ず導いてやる。いつだってお前の存在を証明してやる。だから、俺を信じろ。自分を空っぽの存在だなんて言うんじゃねえ……俺たちはお前の仲間だろうが。

星とハチミツの存在証明 書影大

かつて、一番星光世は、ヒーローだった母を失った。
それから11年、平穏な高校生活を送っていた彼の前に、非日常は何の前触れもなく訪れる。
異形の襲撃者から光世を救った、蜂蜜色の髪の少女が差し伸べた手。それは、存在の力“ザイ"をめぐる、証明者テスタメント修正者コレクターとの終わりなき戦いへの扉だった――!
「俺が、世界を照らす光星ヒーローになってみせる!」
超超超・王道学園バトルストーリー、開幕!

[tegaki font="dfgot_p.ttc" color="DarkOrange" size="36″]世界を変える希望の光![/tegaki]

のっけからハードな展開で始まる物語。いきなり主人公の母親が悪役に倒されるとか、結構衝撃的なシーンじゃないですか。まぁ、事前の説明なしにいきなり超能力バトルでヒーローと敵が殺し合ってて訳分からんみたいな部分はありますが、それこそ主人公の光世と同じ心情を味わわされたのかも。

ということで、存在の力“ザイ"を巡る戦いの渦中に飛び込むこととなった光世の超超超・王道学園バトルストーリー、開幕! とアオリに書いてありますが、王道という割にはキャラクターの個性がその水準をぶっちぎるくらいに個性的な気がしますねえ。能力名とか言葉遊びが利いてるし、口調も十分ぶっ飛んでるキャラの多いこと多いこと。そして、思いの外ハードなストーリーと、あらすじとか気にしないで読んだらかなり驚かされましたね。

主人公は主人公で暑苦しいくらいにまっすぐなキャラで、力及ばぬ窮地でも諦めず、そして仲間が苦境にあるなら励まし決して見捨てない。今どきはヒロインに守られる主人公が多いような気がする中で、ここまでヒーローしてる主人公もなかなかいないんじゃないでしょうか。母親から力を受け継いでヒーローになるってところもひねりが利いてます。

が、個人的には微妙に読みにくかったんですよねー。言葉遊びの部分とか、キャラの口調とか、この作品ならではの部分が気になってしまうと駄目ですね。逆に、それを丁寧な感じに直していくと、この作品のスピード感を殺してしまいそうな気もするので善し悪しでしょうか。新人賞応募作の拾い上げ作品でもあるためか、完成度でいうと他の新人賞受賞作品に比べるとやや及ばないのかなあと思ってしまいますね。設定的な部分で既存作品を思い浮かべてしまったりで、物語に没入しきれなかった序盤~中盤でした。

それでも、終盤の展開はヒーローものとしても熱いですね。というか、最終章からの展開が魅せてくれます。善と悪の枠組みで敵味方を見ていると足をすくわれるような怒濤の展開。本当の敵が一体誰だったのか、それが判明してからの、かつての敵との共闘シーンとかはお約束ながらも燃えますね。敵も良い感じにゲスくて思いっきりぶちのめされるのを期待してしまいます。そして、それに応えてくれる主人公の活躍。まさに、これぞ王道と頷きたくなるラストバトルでしたねー。

物語としてはバトルがメインなせいか、キャラ同士の掛け合いが足りないとか、設定の説明不足が結構ある気がするとか、アラも目立ちますが、それらも含めて、勢いのあるお話だなあと感じます。

俺たちの戦いはこれからだ! という感じなラストシーンですが、そもそも母親の敵とか描いたんだったらせめて手がかりとか与えても良いんじゃないかという思いもなきにしも。続きがあるなら、そういう因縁の敵が続々現れてくるんでしょうかね?

hReview by ゆーいち , 2013/01/20