生徒会の金蘭―碧陽学園生徒会黙示録6

2013年2月4日

stars 任せてよ! 絶対に、当てさせてみせるよ、その未来予知!

生徒会の金蘭 書影大

「私達は今、とても大切な時期にあります」
私立碧陽学園生徒会――そこは、美少女メンバー四人が集う楽園だが、変革を求められる時期が訪れていた。シリーズも終盤へ突入した今だから、出来ることがきっとあるはずだ。さあ「生徒会の一存」の新たな可能性を見つけ出そうじゃないか。失敗を恐れてはいけない、挑戦し続ける勇気が人を成長させる!
だから……許して欲しい。中目黒善樹の女装姿を。一瞬「あれ、新キャラ、美少女!?」って思ったあなたも、怒らないで欲しい。そして逃げずに、この本をレジまで。ねっ、お願いします!だって彼、本当にいい奴なんですよ。2年B組編も、ついに決着!?

[tegaki font="marugothic.ttf" color="white" size="36″ strokecolor1="red" strokesize1="6″]さようなら、2年B組!![/tegaki]

いや、それでも中目黒君表紙はどうよ、言われなきゃオトコノコだって気付きませんが!

ということで、番外編もクライマックス、本巻入れて残り2冊? もはや途中から番外編というかアナザーストーリーの体をなしてきたけれど、ストーリー重視のエピソードは黙示録シリーズの方が多かったかな。今回は1冊の半分以上を使っての2年B組完結編。

前半の短編はいつも通りな感じですが、だんだんカオスな感じになってきてるなあ。「大生徒会の一存」とかひどすぎるけど、突き抜けてるぞ。旬を外すと寒い感じがするから、刊行から1年以上経って読むと微妙だけどね!

まぁ、本編(?)は、卒業、進級を間近に控えた2年B組の面々+αが織りなす群像劇「二年B組の進級~決意の章~」ですかね。前巻の引きで、中目黒君がまさか!? とか爆弾投下で引いていましたが、その種明かしと、それから、それぞれの選択と決断。うん、まぁ、確かにこの本の内容を見ると、中目黒君表紙になってもおかしくないけどさ、でもさ、女装ってのはどうなんだ、純情をもてあそびやがって……(ぇ

以前いた学校で一悶着あり、碧陽学園へとやってきた中目黒君。その過去の重いエピソードが語られる。で……うわぁ、って感じでホントに重いんですが。勘違いと少しの嫉妬、悪意がこじれて歪められてしまった学園生活。加害者も犠牲者もいつの間にか感情がすり切れてしまって、大切に思っていたはずのものを壊してしまうような選択をしてしまう。大なり小なりこういうイジメみたいな話は目に入り耳に聞くだけに、フィクションの中でのエピソードとはいえ、気持ちが重くなってしまいますね。時間が経てば経つだけ、澱のようにたまった感情は少しずつ形を変え、いつしか友人だと思っていた人にさえ憎悪の気持ちをぶつけてしまう。それが八つ当たりというものだとしても、どうして自分だけ? な救われない心を守るためにはどうしようもなかったのかも知れませんね。けど、一方で、一時的とはいえ、最善の策を取ってくれた少年の心を、思い遣って欲しかったなんて高望みまでしてしまいます。以前の学校でのささやかながらも幸せな時間は幻ではなかったのですからね。

でも、中目黒君の決断は、想像の上を行ってましたね。逃げることを止め、戦うことを選ぶ。学校という空間においては、それは世界そのものとの戦いといっても良いくらいに勝ち目なんてなさそうだけれど。それでも、2年B組で過ごしたこと、友人たちから与えられたこと、学んだこと、成長したこと、その全てでもって前へ進むという決断を下した彼は、確かに、杉崎が眩しがるくらいに輝いてますね。BL要員に数えられたり、下僕扱いされたりしてたけれど、何気に熱いハートの持ち主でした。がんばれ!

そんな少年の決意と同じように、一歩進むための宇宙姉弟の告白は逆に切ないですね。特に守の方は、もう、勝ち目がないだけに見てる方がはらはら。恋心をネタにされたりしてるけれど、さすがにこういう場面では茶化すなんてこともできず、見事な男泣き。下手に未練を持たせないような深夏の返事もそうだけど、サブキャラの告白にもしっかりと見せ場を用意してくれるとはやるなあ……。

一方の巡については、ある意味では守以上に勝ち目がないような雰囲気だったけど、ここに来て可愛さの倍プッシュ。杉崎もことここに至ってようやく彼女の気持ちと可愛さに気付くとか、鈍感すぎ。プライド高いアイドルの、仮面を捨てた本心からの告白にぐらぐらしつつも安易な答えを出さないのはさすが主人公だけど、その先の返事には巡でなくてもポカーンですわ。いやぁ、さすがハーレム王を目指すだけのことはある。これくらいの度量がなくちゃ個性的なヒロインたちに等しく愛は注げないか(笑)

重いエピソードだったせいか、ラストも重苦しく終わるかと思ったら非常に前向きな締め方。これならもう、逃げずに頑張れそうな明るい未来へレディ、ゴー! 本編最終巻読了後に読んだから卒業式のシーンはすっ飛ばして、後日談行ってみよう。このシリーズも残すところあとわずか!

hReview by ゆーいち , 2013/02/03