やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

stars ようこそ、奉仕部へ。歓迎するわ。平塚先生曰く、優れた人間は憐れな者を救う義務がある、のだそうよ。頼まれた以上、責任は果たすわ。あなたの問題を矯正してあげる。感謝なさい。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 書影大

孤独に負けず。友達もなく、彼女もなく。青春を謳歌するクラスメイトを見れば「あいつらは嘘つきだ。欺瞞だ。爆発しろ」とつぶやき、将来の夢はと聞かれれば「働かないこと」とのたまう――そんなひねくれ高校生・八幡が生活指導の先生に連れてこられたのは、学校一の美少女・雪乃が所属する「奉仕部」。さえない俺がひょんなことから美少女と出会い……どう考えてもラブコメ展開!? と思いきや、雪乃と八幡の残念な性格がどうしてもそれを許さない!繰り広げられる間違いだらけの青春模様――俺の青春、どうしてこうなった!?

アニメ化間近ということで一気買いです。話題になっているのを知りながらなかなか手を出さなかったシリーズでもありますが、面白かったですね。

でも、何となく、暗黒の青春時代を思い出させるエピソードが多いのはなぜなんでしょう。主人公の八幡ほど、オンリーロンリーなぼっち生活だったわけではないですが、決してリア充でもなかった学生時代の、忘れかけていた古傷を抉るかのようなエピソードの数々! 作者の実体験含まれてるんじゃね? 的な妙に生々しい描写に心が痛くなってしまいますね。

それにしても、八幡のひねくれっぷりというかシニカルさというかは孤高の域にありますね。いや、友だちがいないから結果として一人でいることに最適化されていったような節もありますが、リア充爆発しろとか作文に書く時点で手の施しようがない、駄目だこいつ早く何とかしないと、って平塚先生に思われ矯正の場もとい奉仕部での奉仕活動を命じられるのも致し方なし。まぁ、この主人公、自分からラブコメの場へ飛び込んでいくことを積極的に避けてるもんだから、学園ラブコメのあれやこれやのお約束を良い感じに裏切ってくれてますねえ。自分が舞台の中心に立つなんてあり得ないとでも思ってるのか、例えばクラスメイトで奉仕部を通じてようやく知りあったっぽい、由比ヶ浜さんとかの思わせぶりな態度の裏を読まずにそのまま受け取ってみたり。この辺の駆け引きの下手さというか人の感情の機微に無頓着なのは、生粋のラブコメ主人公が話の都合上鈍感になってるのとは違って、分かっていつつ無視しているのか、あるいは相手を心底では決して信じない一線を引いているのかとそういう感じですね。こういうタイプは珍しいというか、ここまで世を斜めに見てるようなニヒルな性格は高校生にしては新鮮です。あんまり好感抱けるようなタイプじゃないですが、なんだかんだで成りゆき上仕方なく面倒見良かったり、引くことのできない場面を見極めることができたりするところは、こいつ出来る! なんて思わせられますね。

一方の彼と同じようでいて対極的なヒロインの雪ノ下さん。完璧超人のくせに友だちいないとか毒舌が過ぎるとか、既視感を覚えるキャラですが、彼女もまたぼっちなお方。それを苦にしないのは八幡と一緒だけど、結果的にそうなってしまってるのは彼女のハイスペックさと妥協しない性格ゆえだよなあ。由比ヶ浜さんみたいなふらふらして世渡り上手なキャラとは違って自分を貫きまくってる硬派な感じですが、八幡への容赦ない毒舌は他の人にも等しく与えられるようでぱねぇ感じですね。そりゃあ、歯に衣着せぬ言動してたら友だち出来ませんよねえ。そんな彼女がどうして人助け的な奉仕部で、誰かを救うことを自身の責務と思うようになったのか、並々ならない理由がありそうですが、彼女もなんだか面倒な背景がありそう……?

なりゆきで始まった八幡と雪ノ下さんの人助け対決。今どきの女の子な由比ヶ浜さんの料理作りを手伝ってみたり、中二病こじらせたままの材木座君の相手をしてみたり、もしかして一番ヒロインの座に近くね? だが男だ! な戸塚君の部活に付き合ってみたりと、今までのぼっち生活からずいぶんと様変わりしてきてませんか、八幡の日常。それでも、相手の言葉に態度に勘違いしそうになる一歩手前で自制するその精神力が培われた背景には涙するしかなくて、孤独な戦いを生き抜いてきた彼の精神はもはやこの程度の温いラブコメでは揺り動かすことは出来なそう。

けれど、ここに来てようやく彼の青春が動き始めたような感じがしますね。間違っていようと、変わっていようと、清酒でラブコメな舞台の幕が上がったのは確かっぽい。彼がそれをどう感じ、変わっていくのか、それともスルーを貫くのか、これからの展開が楽しみですね。

ところで、妙に、千葉の知識が身につくようなネタが多いんですが、これはガチネタなんでしょうか(笑)

hReview by ゆーいち , 2013/02/13