インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI

stars わるい娘はわるいことをして自分だけを救った。それを正しいとするのは間違いだけれども、世界中に嫌われようとも、世界中に嫌われるからこそ、僕だけは彼女の手を握っていよう。

インテリぶる推理少女とハメたいせんせい 書影大

「……せんせいにはわるいうわさがあるのです。もちろんわたしはせんせいを信じています。けれど……」
人間は無作為にテキトウに動くのだ、と主張する文芸部顧問になった「せんせい」と、この世の全てが理屈通りに動いている、と信じて疑わない中学生の文学少女「比良坂れい」の2人が孤島を舞台に繰り広げる壮絶な頭脳戦と恋愛模様。

[tegaki size="36″]これはひどい![/tegaki]

書くのもはばかられるような原題から改題して発表された本作。ある意味で話題作でもあったんですが、中身が題名そのままだとは、お釈迦様でも思うまい……っ! というか、なぜこれを受賞させ、発売する決断をしたんだ、HJ文庫編集部。良識を疑われるぞもっとやれ

まぁ、こういう悪のり(?)なのか、大まじめに新境地を開拓使用としたのか分からない奇書ですら、存在できるのがラノベというジャンルの奇妙なところですが、正直本作は私のような凡俗の理解の及ぶところでは到底なかったようです。

肯定的に読むことができるなら、世間的には決して受け入れられない倫理に背いた価値観を持つ「せんせい」と彼に憧れ恋する少女・比良坂さんの歪みまくった純愛ストーリーなんでしょうけれど、その為に払う犠牲の大きさが半端ない。世界を犠牲にしても云々じゃなくて、もうね、身近な少女たちの貞操をさえ犠牲に、せんせいを自分に縛り付けようとするとか、中学生の発想じゃあありません。この段階でもう大部分の読者は置いてけぼりというか脱落確定。冒頭から乱舞する強姦の文字がゲシュタルト崩壊を起ながらストーリーも崩壊気味に進み、どこまでが現実でどこまでが妄想なのか境界の曖昧な奇妙な感覚を思いっきり味わわされます。

いやぁ、本を読んでいて悪酔いするというのはなかなかない経験ですね。論理は破綻するわ、時系列は無視するわ、文脈行間を読むことにほとんど意味はないわ、語り部たる主人公の認識がおかしくて彼がどこまで真実を語っているか、その地の文さえ疑ってかかると混乱必至。唐突にミステリをディスったかと思ったら、その概念を利用して物語を収束させようとしたり、メタメタな展開は面白い……? と感じたりする場所が多少はあるんですが、いかんせん全体像が掴めません。

物語を収束させようと、作品の中の登場人物たちが動き始めるのはいいんですが、「完」と記される直前で別のキャラが全部台無しにしたりと、お前ら話を終わらせるつもりがあるのかと突っ込んでしまうのも作者の計算の内なんでしょうか。全体を通してみると、本当に褒められる部分なんてなくて、読んだ時間を返せとまじめに思ってしまうくらい自分には合わない作品だと断言できるんですが、それでも、妙に引っかかる。

その引っかかりがおもしろさに直結してるかが分からないのがもどかしくて、この物語の、これだけ引っ張ったにしては落ちきっていない結末ももやもやさせられます。せんせいと比良坂さんにとっては、もうお互いだけで完結してるような世界でモブキャラたちの存在なんて認識することなど無意味とばかりな終盤の暴走ぶり。結局何が言いたかったのかが掴めず悶絶しそうになりますが、多分、深く考えても答えが出てくる気がないので思考停止しておきます。面白いという感想も少数ではあるが見かけますから、多分、別の視点で見ることができれば何か発見があるのでしょうか?

そういう意味では、再読したりすると、何か気付くことも出てきそうなんですが、今のところ、それをするだけの気力が湧いてきません。面白い、面白くないという評価とは別に、訳分からんという評価こそが相応しいと思います。これ、誰かに「読んだ方がいい?」って訊かれたとしたら、私は全力で「止めとけ」と答えるだろうなと感じるそんな一冊です。いや、この変さは多分読まないと伝わらない。でも、読んだ後の心のケアはできかねますのでっ!

人類が手にするには早すぎる作品だ……(違)

hReview by ゆーいち , 2013/03/22