聖剣の刀鍛冶 #11 Women

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stars 戦ってください。運命が過酷ならば、それに負けないだけの強さで立ち向かってください。あなたが諦めさえしなければ、その背中を見て育つだろうあなたの子もきっと挫けない。不幸にはならない。そして及ばずながら――いえ違います、必ず、わたくしも力になります。あなたもあなたの子どももみんな幸せにしてみせます。呪いがあろうがなかろうが人並み以上の幸せを約束します。

聖剣の刀鍛冶  11 書影大

ルークの変調をリサから明かされたセシリー。ルークは頑なに隠そうとしているが、セシリーとリサは互いに彼を支えることを心に誓う。ルークとの関係をどのようにするべきか悩んだセシリーは母に、亡き父との馴れ初めを聞くことにする――。
一方、軍国ではゼノビアが付き人のシャーロットとともに城を抜け出し、大陸を包む不穏な空気に萎縮しかねない市井の声を聞くべく街中へ繰り出していた。
また他方、帝政列集国のフランシスカは、主に従属する魔剣の定めをヴェロニカから見出そうとしていた……。
穏やかな日常の中で覚悟を固めていく女たち、心底に銘を切り、居並ぶ!!

ようやく二人の関係に一区切り。この作品はやはり強い女性の姿が輝いていますね。いや、別に男衆がヘタれだとかそういうわけではなくてですね……。

魔剣精製の代償として視力をほぼ失ってしまったルーク。本人はそれを隠そうとしながらも、セシリーはその事実を身をもって知ってしまうわけで。そしてそれは、残された時間の少なさをも意味していて……。

自分から踏み込むことを決意するセシリー。一世一代の大舞台を前に、勇気をもらおうと助言を請うたのは厳格な母の、なれそめの話。

いやぁ、母親の恋バナを聞いて盛り上がる娘世代という感覚は、自分に当てはめるとなかなか共感はできませんが、セシリーの母親ルーシーと、父親チェスターの出逢いから結ばれるまでは、まさに現世代のセシリーやルークがそれをなぞっているんじゃないかと思うくらい似ていますね。どちらも頑固で、不器用で、そのくせまっすぐにお互いを想い合っている男女。けれど、自分のせいで相手を不幸にすることを恐れる余り、拒絶してします。構図は正反対とはいえ、現在のセシリーとルークの関係にぴったりすぎるくらいハマっているシチュエーション。ここから何が学べるかといえば「当たって砕けろ?」っておいおい(笑)

セシリーの性格、父親の頑固さを受け継いでいるとか言われていますけど、母親の血もはっきりと分かるくらいに入ってますよ、この話を見ると。納得できないことがあれば、それが誰であってもぶつかっていく諦めの悪さ、けれど、真摯に相手を思う一途さ、男勝りな性格に見えつつも、その実しっかり女らしさを感じさせる心根。そのくせ、彼女の告白シーンの強烈さといったらないですね。自分と結婚しろ! なんて命令できる女性はなかなかいないでしょう。チェスターの、キャンベル家の呪いの運命を知り、それでも彼に逃げることなく戦うことを望む、共に生きることを望む。臆さず幸せになって良いのだと告げるルーシーの姿こそ、ただ涙を流して途方に暮れるしかなかったセシリーに、あのとき採ってほしかった選択なのではないかと思ってしまいますね。

まぁ、そのおかげかどうかはともかく、セシリーも吹っ切れ、覚悟を決めて最後の一線を踏み越えるというのが本巻の最終話であり、その他のエピソードはそれを盛り上げるための前哨戦でもあるのですね。副題の通り様々な陣営の女性たちの姿を描き、緊張感高まる世界を別の視点から伝えてきます。短編集で少しだけ雰囲気が軽くなっているかと思いきや、大きな災いが遠からず巻き起こるその緊張感がひしひしと伝わります。不安が溢れ、戦争への恐れが人々の心に影を落とす。それを払拭する側と、望んでその状況を作り出した側。立場の違いから見る世界の見え方がどれほど違うのか。おそらくそれは、幸せというものの価値観が大きくずれているのに通じているんでしょうね。

決定的な違いは、帝政列集国のフランシスカを描いたエピソード。魔剣が望む幸せは主と共に戦い、死ぬことであると断定されたようなものですね。傷付いてしまったままのアリアが望むような幸せなどそこにはないような、血にまみれ傷を負ってこそ価値があるというような結論。無論、シーグフリードのおよそ正常とはいえない考えに共感している時点で、どこか歪んでいるとは思うのですが、ここまで断定的に自らの生き様と死に方を語り納得する姿には、敵方ではありながらも悪なりの潔さまで感じてしまい悔しくもあったり(笑) 祝福されぬ愛の形というのもまた儚く美しいということですか?

一方で、祝福されるべきは主人公たち二人でしょう。本当に長い1年だったでしょうね。出逢いか、様々な事件を経て、互いを認め、パートナーとして戦い死線をくぐり抜け、呪いという運命に縛られながらも生き方を変えなかったセシリーとルーク。母親譲りの度胸と覚悟で、勝負を挑まれたルークにもはやあの場で価値の目なんてなかったのですから。そして、なんともセシリーらしい、無茶で無謀で一途な告白に拍手。大人になってしおらしくなるなんて、本当、らしくなかったんですよ。こういうひたすら前を向いて走り続ける姿が、彼女には一番似合っていますよね。後先考えず、全市民が二人の告白とその先のおのろけまで聞いてしまって、お腹いっぱいで大変な事に。後々そのことを知らされた二人がどんな顔で悶絶するのか、次巻で見せてもらえるんですよね?

刻一刻とヴァルバニル復活が迫る中、それでも、人は幸せになっていける。人間の強さを、ひときわ、覚悟を決めた女は強いと、思わされる副題通りの良エピソードでした。

hReview by ゆーいち , 2013/04/08

聖剣の刀鍛冶  11

聖剣の刀鍛冶 11 (MF文庫J)
三浦 勇雄 屡那
メディアファクトリー 2011-11-23

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