変態王子と笑わない猫。〈2〉

stars ぼくらは同じ世界のすぐそばにいる。だけどそれは、百パーセント同じ座標で同じ目線で同じ風景を見て暮らすという意味じゃない。そんなのは不可能だ。ぼくらは同じ世界のすぐそばで、決して重なり合わずに、たまに寄り添うようにして生きているのだ。

変態王子と笑わない猫。〈2〉 書影大

夏が終わる。十六歳のたった一度きりの夏が。いったいぼくは何をして過ごした というのだろう? 大いに焦る横寺陽人は、今日も今日とて空回り。月子に振られ、小豆に振られ、ポン太に振られ――自宅までも消滅した! なんで? どうして? どういうこと!? 雷雨のなかにひとり、なにもかも喪って、どこに行くあてすらもない。「それなら先輩。今夜は、わたしの家に泊まるですか」「あ、うん。うん?」
……夏の終わりの台風日和。最後の最後に、最高のホームランイベントが待っていた! 風呂場の裸。縛られる布団。落ちる手錠。破られる衣服。そして――土蔵に潜む猫?
早くも人気沸騰の爽やか系変態青春ラブコメ第二弾! バイバイ、ぼくの初めて――

ある日、帰宅したら家が消滅していた。な、何を言ってるか分からねーと思うが(ry

なんだよ、笑わない猫像、万能すぎにもほどがある。テレポーテーションに天候操作に精神操作に、なんでもありかい。単なるラブコメに微妙にファンタジー要素が加わってる分、もはや何が起こっても驚かなくて済みそうな雰囲気。いや、突っ込みますけどね!?

今回もヒロインはかわいいを通り越してちょーかわいい。表紙に出てる梓の扱いがひどすぎて泣けてくるけど、彼女、ドMの素質ありありで大変な事になりそうですね。いつも脳内であんな妄想しているのかしら(*´Д`)/ヽァ/ヽァ

ダブルヒロインの月子と梓の陽人への好感度はすでにマックスに達しようという状態で、猫像の御利益がまた要らぬトラブルを巻き起こす。でも、その原因となる心の動きは、やっぱり乙女ゴコロを感じてしまって微笑ましく思ってしまうんですよねえ。

月子。てっきり、梓と同じように陽人に想いを告げることを諦めていないかと思ったら微妙なところで妥協していたんですね。彼の妄想通り妹ポジションに甘んじようとしていたとは。この時点で、公的には付き合っている形になってる梓と主人公の間に割り込む難しさを感じていたのか、それとも梓に遠慮していたのか。前巻で、自分たちがした仕打ちを考えると気持ちを伝えるというのに臆病になるのも仕方ないかも。あるいは、全部が解決するその大団円を自分では諦めている、あるいは、自分の感情が戻ってこなければ、せめて陽人との繋がりは切れることはない、そんな後ろ向きな判断が働いていたのでしょうか。それが、今回の天災の遠因になっているとはねー。

月子が自己分析していたように、彼女自身はやっぱりまだまだ子どもなんでしょうね。両親を早くに失い、家族という関係に渇望し、姉だけでは満足できないわがままさん。母親代わりの姉と、父親代わりの兄がいれば、彼女の世界は完璧になったんでしょうか。広い筒隠家という、けれど狭い世界に引きこもって、ままごとのような生活を続けたいと思うくらいに。猫像の願いの叶え方が妙な方向に行っちゃってるのは確かだけれど、そういった近視眼的な子どもの考え方を、変態な主人公がたしなめるというシーン、前振りがなければ格好良かったのに(笑) 月子、変態な陽人と、先輩な陽人をしっかり区別して対応していて、その辺はしっかり割り切ってるんだなあなんて思ったり。

巻き込まれた梓はさんざんな目に遭った感じですが、それでも雨降って地固まるになるんでしょうか。陽人の勘違いスキルがはた迷惑を通り越して害悪になりつつある気もしますが、彼女のトラウマを掘り起こすような仕打ちをして、殺されても文句言えませんよ、冒頭のアレは。その後の筒隠家での嬉し恥ずかしイベントとか、恋する少女の必死さが滲んでいたりで、主人公はもげろとか思うけど、ヒロインたちの気持ちは応援したくなるんですよねえ。

そして、いきなりフラグが立ちまくった、鋼鉄さんことつくしさん。彼女の豹変ぶりはキャラ崩壊っていうレベルじゃねーぞ(笑) そもそも、陽人の演技に最初から最後まで気付いていないとかどんだけちょろいんですかね、このお人。そして、男子に免疫がないのは妹と同じで、あっさり恋に落ちてしまうとかチョロすぎます。その分、おそらく初恋の熱に浮かされたような行動は初々しくてギャップ萌え。終盤の行動は見てる方が悶え転げるくらいにうわああああああ! な感じでそしてにやにやが止まりません。

……っと思ったら、最後の最後にまた爆弾ががが。良いことなしの梓さん、次こそはしっかりリベンジしてヒロインの名誉挽回してくださいな。

hReview by ゆーいち , 2013/04/28

変態王子と笑わない猫。〈2〉

変態王子と笑わない猫。2 (MF文庫J)
さがら 総 カントク
メディアファクトリー 2011-01-21