07:00am起床。
読了。
素晴らしかった。うっかり風呂場で2時間過ごしてしまうほど。
冒頭に書かれているように、絵描き・国崎桜花の挫折と栄光を描いた物語。分厚さの割に、一気に読ませてしまう、それだけの魅力にあふれた作品でした。
絵では見せることのできない世界、桜花の心の中にのみに存在する彼女だけの風景・色彩を文章でのみ伝えるという手法は、困難に思いつつ本作ではそれを見事に表現しています。一語一語が描く世界は、読み手の中にのみ再現され得るものなのでしょう。桜花の描く絵の描写のどれもが、やたらとクリティカルに私の心に届いて、美しいと評される絵は美しく、禍々しいと評される絵はどこまでも禍々しく。波長が合う人にはかなり堪えるのではないでしょうか。
章だった構成は、順を追って桜花と、彼女に関わった人々の、彼女の絵を通した交流を描き、彼女の足跡をたどるというもので、冒頭にて結末が示され、登場人物の役割がかっちりと定まっていて、文字通り舞台装置としての役割を負わされていたのかなと。良くも悪くも桜花という人物の表現をするために登場させられているようで、彼ら・彼女ら自身の問題についてはあまり深入りしていなかったのが少々物足りなかったです。
あとは、ように、挿絵なしの方が私も良かったなぁ。本作は挿絵を与えられることにより、想像の範囲が狭められてしまったように思えたので、その点については残念でした。あくまで登場人物のみを描き、桜花の描いた絵については一切が視覚化されなかったことは、逆にいえば良かったと思います。
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