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ラノベ部〈3〉
出逢って、いろんな思い出を共有して、別れて、たまにあいつ何やってんのかなーって思い出したりして――それって、現実の世界と物語の世界で何が違うの?
留学生のリアが加わり、さらに賑やかになったラノベ部。メンバーは増えても、やることは変わらず、相変わらずの雑談に読書に花咲かせる毎日。そんなある日、文香は龍之介と二人きりになった部室で、自分が抱いている気持ちの名前と意味を知る。そして……。
ここでシリーズ完結とは予想外でしたね。だらだらといつまでも続けられそうなネタなのに、ここであえて物語に幕を引くという意味は、あとがきにも書かれていますが、納得できる理由でもあります。
ラノベを中心としたいわゆるサブカルの今をネタにした作品だけに、この作品を1年後、2年後に読むというのはネタ的な部分ではやっぱり苦しいんでしょう。けれど、この物語の中でキャラクターたちが語って、思って、伝えあった物語というものに対する気持ちというものは、新鮮さを優先したネタのチョイスと相反するようにある種普遍的な価値観を持っているのではないでしょうか? ラノベ部という、理想的な空間と、理想的な部員たちに囲まれた、楽園のような優しい時間。ああ、こんな時間を誰かと共有できていればなんて夢想をしてしまうくらいに現実はままならないものですが、優しい物語で心が癒やされるなら、きっと明日も生きていけるのですよ、なんてね。
1巻でも文香に対する暦の気持ちという形でほのめかされていましたが、2巻の龍之介と美咲の恋バナあたりから、恋愛ネタの方面でも割と大きな展開を見せてくれたのが意外といえば意外。そして、そこに一定の決着を見せず、想像に委ねる感じで未来へ繋げてくれたのが爽やか。といっても、個々人のやりとりを見ていると、ラノベ部の中で唯一恋人として成立しそうなのは、やっぱり龍之介と美咲のふたりなんですよね。なんだかんだ、恋人と見れないといいながらも何かにつけて彼のことを考える美咲、ふたりの後輩に告白されつつも、美咲への想いを捨てきれず抱えたままの龍之介。ちょっとしたハプニングと、どちらかの踏み込む勇気さえあれば、それこそラブコメのようなハッピーエンドが迎えられるんじゃないかなとか思うんですががが。まぁ、その前に立ちはだかる障壁、文香とリアは黒化するとかなりの難敵となりそうではありますが。
楽しくラノベを読むという、そんな当たり前のことを当たり前に伝えるためのお話。たまにやってくる読まなきゃという義務感や強迫観念に満ちた暗い気持ちになったときなど、改めて読み直して、物語を読む楽しさというのを再確認するというのもアリかもしれません。
hReview by ゆーいち , 2009/07/26
- ラノベ部 3 (MF文庫 J ひ 2-18)
- 平坂 読
- メディアファクトリー 2009-07
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ラノベ部〈2〉
現実の主人公っつーのはね、神様とか作者とか運命とかに勝手に選んでもらうんじゃなくて、自分でなるもんなのよきっと多分。
軽小説部――通称『ラノベ部』。浅羽美咲の決意表明を聞かされ、幼なじみの竹田龍之介は半ば強引にその設立の手助けをさせられる。特にラノベに興味もなかった竹田だが、美咲の協力を断れるはずもなく……。文香が入部する一年前、ラノベ部設立にまつわるエピソードがついに明かされる。そして、ラノベ部に新たな部員入部の気配が……。
読めば読むほどラノベが好きになる、かも?
新キャラも登場、そしてラノベ部の設立エピソードの裏に隠されていた、美咲と竹田の恋の行方がまたほろ苦くて、けれど素敵なお話で、ライトノベルを題材にしたメタ小説、なんて売り文句がなくても、日常系の物語として十分以上に楽しめますね。
もちろん、ラノベを読み込んでいるような重度の中毒者には、昨今のラノベを取り巻くホットな話題を作中のキャラクターの視点から論じて見せたり、特にメタについてのお話についてや、文芸とどっちが高尚? なたびたび繰り返される問題提起など、読んでてうなずいたり感心したりとしきりな部分もあるのが良いですねー。
ラノベ部の面々の日常も見てて楽しいですね。こういう駄弁りができる仲間とわいわいがやがやできる、それだけでも毎日が充実してる、そういう楽しさがこれでもかと伝わってくる内容。そんな中で、文香を中心とした微妙な気持ちの行き交いが生まれ始めていて、特に暦の文香に対する気持ちがなんとも可愛いじゃありませんか。当の文香は天然で空気読まない発言をして暦を見事に籠絡しきってる感じですが、文香は竹田が無意識に気になってる? 一方通行な想いが何方向にも向いてて、割と混沌。
新入部員のリアや、文香の妹の雪華も登場して、どんどんこんがらがっていくこの人間関係。ハタから見ていて楽しいですし、暦の悶々とした様子をこれからも愛でていきたい所存。
そして、今はもう決着が付いているっぽい美咲と竹田の恋の顛末は切なかったなあ。現時点でもお互いがお互いのことを自分以上に理解できてる、けれど、だからこそ恋人とは違った無二の存在としか見ることができない、そうするしかできないというジレンマが痛い痛い。ある意味、恋人以上に近くて、家族とは違った絆で結ばれている、幼なじみという関係は、失恋の痛みが思い出に変わる頃には、素敵なものになっていくのかも知れませんね。幼なじみは結ばれてこそ、と思っていますが、こういう「分かってる」関係というのも、また素晴らしいものですね。
とにもかくにも、ラノベを読んでいるなら一度は感じたことのある「あるある」を楽しげに描いてくれるこのシリーズ、次の巻が待ち遠しいですね。
hReview by ゆーいち , 2009/01/27
- ラノベ部〈2〉 (MF文庫J)
- 平坂 読
- メディアファクトリー 2009-01
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ラノベ部
……私はあなたに、こういう本を読んでほしいと思う。こういう本に、あなたのような人と出逢ってほしいと思う。それは多分、本と読者の双方にとって幸せなことだから。
文化系の部活に入ろうと、あれこれ見て回っていた一年生の物部文香は、気がつくと軽小説部――通称ラノベ部――に所属していた。濃ゆい先輩たちと、おとなしい感じのクラスメイトの部員、そんなみんなに囲まれて、文香はこれまで手に取ったこともなかった様々な物語に触れていく。部室で、書店で、自室で、出会うことになるたくさんの本たちに。
なんかこういう物語を読む物語な、メタ的なお話が流行中? いや、面白いんですが。
内容的には、ラノベ部の面々がただ駄弁り、どうでもいいような話題に花を咲かせるという、生徒会シリーズみないなお話で、ただ話題の中心がラノベに特化されているような感じ。
物語の視点の中心となる文香が、ラノベ初心者であるということで、確かにあちこちで言われているように、初めてラノベを読むときの入門書的に他の本と一緒に読んでみるのが良いのかもしれませんね。作中で語られているように、いろいろなストーリーの本があるし、気に入った本に出逢えるかもという、わくわく感が文香の視点を通して感じられますね。
ネタ的には比較的ライトなチョイスをされているのか、大部分は元ネタも分かる*1し、あんまり古い作品から取ってきてないので、それこそ今の中高生が読んで、ここから次の一冊を読んでみたくなったときに入手しやすいというのは小さいながらも粋な心遣い? 単に鮮度が高いネタだったからかも知れないけれど(笑)
そんなこんなでラノベにのめり込み始めた文香の周囲の面々と、和気藹々とした雰囲気が楽しめる一冊。最後の暦の興奮具合は、確かに物語を書いたことがあるひとにはかなり理解できる感覚かなあ。あそこまでえっちっぽくなったりはしないけど。なんか、文香と暦の百合百合な展開は、美咲ならずとも期待したくなりますが、ここはひとつ、遠くから眺め愛でるのが作法というものでしょう。
hReview by ゆーいち , 2008/09/26
- ラノベ部 (MF文庫 J ひ 2-14)
- 平坂 読
- メディアファクトリー 2008-09
- ただ、文香が最初に読んだ本は『スレイヤーズ!』しか分からなかったですが。 [↩]
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