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富士見ミステリー文庫 Tag Archive

ROOM NO.1301 #11 彼女はファンタスティック!

stars 可哀想な娘を守ってあげたいという気持ち。それはきっと愛情ではなく同情だよ。

冴子が倒れた。それは1年前の奇跡が終わりを告げることの報せだった。出会った頃の彼女が告げた言葉の意味を、健一はようやく理解する。唐突な別れと喪失感に自失する健一。そんな健一と多くの時間を過ごした13階の住人たちは、それぞれの道を選び、旅立ちを決意する。そんな住人たちの姿を見、健一は……。

後日談で何もかも持って行かれた!!

ええ、なんですかこのエピローグは(笑) 冴子との別れを機に、自分の内面と向き合い、そして13階で共に過ごした仲間たちと対話し、それぞれの方向へ歩み出したかと思ったら、この結末ですよ!

どこまでも心の広い健一の彼女さん・千夜子さんはある意味最強ですが、健一とのぶつかり合いを経ても、その慎ましやかな関係と距離感は時間が経っても変わらないって? それはそれで、お互いが同意してる感じで選んだ関係ではありますが、やっぱりどこか私が思っている、一般的な(ああ、こういう型はめな語だと語弊があるかもしれないけど)恋人関係とは字面通りではない形に収まってますね。

それは、作中で過ごした13階のメンバーとの再会が困難であるという不思議なジンクスに裏付けられた、消去法的な関係の維持にも思えますが、それでも後日談でそのお約束すらが覆されたシーンが描かれたわけで、語られないエピソード的に、これからも健一と周囲の彼女さんたちのお話はこじれ絡まり、また解け続いていくような感じがしましたね。というか、永遠の別離と思われていた別れが、割と頑張れば再会できるんだという程度だったのが驚きだったり。

まぁ、そんな感慨も、最後の最後の蛍子との会話で明後日の方向へうっちゃられたような気がしないでもないのですが。あの親にしてこの子あり、なのか、親がなしえなかったことを、その無念と応援を受けて、子がなしえたという、「何を」を語らなければある意味大勝利なんですが、これは……すごいなあ。健一と千夜子の関係が恋人ならば、健一と蛍子の関係は愛人とでも言いましょうか。恋と愛の言葉の重みがそのままふたりの関係に反映されてるような、これまたひと味違った繋がりですよね。

これを客観的に見てハッピーエンドというかどうかは判断保留で。でも、ま、当事者たちが幸せっぽいので、この世界は、物語は大団円だったんじゃないですかね。

hReview by ゆーいち , 2009/04/25

SHI-NO-シノ- 君の笑顔

stars それで良いんです。陳腐な言葉で構わないんです。貴女にそれが伝わるのなら。

前巻から思いっきり続いていて、そしてシリーズ完結。僕と志乃ちゃんの再会とともに起きた事件の真相解明と、最後の事件。

失われてしまったもの、もう戻らないもの、別たれてしまったもの、そして得ることができたもの。事件に巻き込まれ、様々な人間の姿を見せつけられ、その中で僕たちが辿り着く答えは、お互いに握りあった手のひらの温もり。

人間は根源ではどうしようもなく孤独で、他者と交わることなどできなくて、最初から最後まで独りで生きていくことしかできない。そんな風に悟ってしまっていた志乃ちゃんに、そんなことはないと心で思い、願い、伝えようと努力し続けてきた僕。今回の事件は、いろいろなものを失いながらも、決して失くしたくないもの、ずっと寄り添っていきたいものとしての互いを確信するに至るための、なんとも遠回りな告白めいたお話でしたね。

笑顔など見せることのなかった彼女が、僕との生活を通して未来で得ることができたもの。合理的でもなんでもないけれど、それはたった一人で在り続けたままでは手に入らなかった誰かとの絆の形でしょうか。それを描いてくれる最後の挿絵と、読了後に見る表紙絵はなんとも感慨深いものです。

hReview by ゆーいち , 2009/03/22

SHI-NO-シノ-  君の笑顔
SHI-NO-シノ- 君の笑顔 (富士見ミステリー文庫)
上月 雨音
富士見書房 2009-03-19
Amazon | bk1

SHI-NO-シノ- 過去からの招待状

stars 『貴方』に問いたい。もし『それ』が真実でなかったら、『私』はどうすれば良い?

世間を騒がす猟奇殺人事件に、僕はかつての事件を思い出していた。今回の事件と同じ異常性、同じ悪夢のようなその事件の犯人は、しかし、あのとき死んだはずだった。大阪の町へ戻り、そして再会した彼女と迎えた初めての事件。再び僕たちに追いついてきたその事件から、忘れられない記憶から、逃げず向き合わなければならない。僕たちの未来を共に歩むものにするために。

物語も佳境。ついに、僕と志乃ちゃんの最後のエピソードが始まったようです。

過去から逃げ、かつて暮らした大阪の町へ逃げるようにやってきた僕が再会したのは一時でも兄妹のように生活したことのある志乃ちゃんで。そこから時間を積み重ね、少しずつお互いの距離を縮めつつあるかと思っていた矢先に起きた事件。再会してまもなく巻き込まれた事件と酷似したそれが、ふたりの生活に小さな影を落としてきます。

無関心な態度の志乃ちゃんとは逆に、今回の事件に積極的に首を突っ込んでいくような感じの僕。彼の周囲にいる、鴻池先輩や、さらにプレッシャーをかけてくる公安とか、望むと望まざるとに関わらずに、ふたりはこの事件から逃れることができなさそうな雰囲気。

今回は事件の起こりと過去の語られが大部分だったのか、ふたりの関係が大きく変わるような展開ではなかったのですが、終盤は彼らの与り知らぬところで自体が風雲急を告げていますね。一体どうなってしまうのやら。生死不明で途切れてしまった部分が、次巻でどんな風に語られるのか、怖くもあり、それ以上に気になりますね。

なんというか、これまで僕と志乃ちゃんが経てきた事件と時間を積み重ねた果てに、起こるべくして起こったかのようなこの事件。ふたりが迎える未来は、この事件を乗り越えた先にあるはずですが、それがどんな未来なのか見当が付かないですねえ。まだ十分に語られていない僕と志乃ちゃんが最初に経験した事件、そこで何かが起こっているのは確実で、そして、それが現在進行形で牙を剥いてきてる、そんな印象です。いよいよ次は完結編……? 楽しみですね。

hReview by ゆーいち , 2009/01/10

ROOM NO.1301 #10 管理人はシステマティック?

stars 全部は無理でも、すごく大事なことくらいはわかりたいじゃないですか。

佳奈に自分の気持ちを伝え、そして報われることのなかった日菜は健一に慰めを求めていた。健一は男と女ではなく、親友として、そんな彼女の傷ついた心を救おうと思いを巡らす。そんな出来事を境にしたかのように、皆が変わっていく。まるで、この幽霊マンションからの旅立ちのときが来たかのように、少しずつ、けれど確実に変わっていっている。

富士ミス最後の砦(?)な本作もいよいよクライマックス。次巻で決着を付けるためなのか、物語が一気に動き出していってますね。出番のなかったひとたちも動きまくり、健一をはじめとして、綾や冴子、刻也、そして日菜と、幽霊マンションの住人たちがそれぞれ歩き始めたような印象です。

マンションの住人同士、そこを出てしまったらもう会うことができない、そんなルールが少しずつ表に出てきていますね。日菜と健一は親友として良い感じの関係を築けたのに、日菜の自立を以て見守ることしかできない関係に変わってしまうのは切ないですね。

そして、健一と一番深い関係っぽかった冴子の身に起きたトラブルも、次巻でどう決着するのやら。なんだか重い展開が用意されてるような気がするけれど、どうまとめてくれるのでしょうかね。恋人のはずの千夜子は出番少なめ、もうちょっと彼女にも見せ場をおお。

シリーズ完結しても、コミックやら別レーベルでの単行本やらが出るみたいですね。がんばって終わらせなくても、他レーベルへ引っ越してもいい気がしますが……。ともあれ、最後のエピソードを楽しみに待ちたいところです。

hReview by ゆーいち , 2008/10/04

SHI-NO-シノ-空色の未来図

stars 問題は誰が嘘を吐いているかじゃない。誰が、どれだけの嘘を吐いているか、である。

実家へと帰省した僕は年賀状の中に忘れもしない名前を見つけた。大薙詩葉。高校時代の僕の彼女、そして、今はもういない彼女からの年賀状を。帰省前に届けられた詩葉からの手紙には「お願いを聞いてください」そんな言葉が記されていて。そして、僕は彼女の死と向き合うために、彼女との思い出に区切りを付けるために、故郷に戻ってきていた。

僕のスペックがいきなり跳ね上がった感じがしますが、これは主人公補正? あるいは、志乃がいなければ意外にできる男なのかも?

そんなこんなで、僕の過去の一端が明かされるお話。彼女持ちだったとは意外ではありますが、しかし、大学生活初めて志乃との関わりの中で巻き込まれた事件も半端でないですが、高校時代もバカにならない波乱の生活を送っていたんじゃないのかと。

詩葉という少女の存在は、作中で語られているように、すでに常人の枠をはみ出て、ずいぶんと万能感のある存在に昇華されているように思います。というか、これは作者の代弁的に受け取ってしまうなあ、未来を確定させる言葉、希望を捨てないための願いの言葉、彼女の予言が事実となるのならば、それは救いのもたらしを意味するのですが、しかし、これから僕と志乃が向き合う、ふたりの出会いの物語はすでに起こってしまった出来事。そこから、ふたりがどう歩んでいくのか、また別の答えを見いだすことができるのでしょうかね?

僕が故郷で詩葉と決別するためにあらゆるものと戦った事実は、彼にとってまたしても苦い記憶となるのかもしれませんね。けれど、小さな幸せを願い、それを叶えるために皆が想いをひとつにし、実現させた、それだけは変えられない事実としてまた思い出に変わるはず。

さてさて、僕と志乃、ふたりが歩んでいく未来は果たして何色で描かれるのか。次は激動のエピソードが控えていますね。

hReview by ゆーいち , 2008/08/02

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