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川上稔 Tag Archive

境界線上のホライゾン〈1・下〉

stars じゃ、行こうか皆、――頼りにしてるぜ?

三河消滅の責任を、ホライゾンの自害という形で決着させようとする聖連。それはすなわち、極東が聖連の完全なる管理下に置かれることを意味していた。しかし、そんなことお構いなしに、ホライゾンにコクる、ただそれだけのために彼女を救おうとするトーリ。様々な思惑をはらみ、世界の運命が動き出す。

のっけから最終回並の盛り上がり!

上下巻合わせて1300頁に及ぼうかという物量、それ以上に圧倒される物語。いや、もう、言葉もないというか。これがシリーズ最初のエピソードというのだから、これからどれだけ盛り上げてくれるのか、とにかく楽しみでしかたがないですね。

前巻が、前代の世界の担い手たちの物語だとしたら、今巻でようやく今代の主役たちが揃い、動き出したといったところ。オヤジたちの渋い格好良さとは打って変わり、トーリをはじめとしたメインキャラたちの若さと熱さにぐいぐい引き込まれていきます。登場人物が多いのもなんのその、各キャラにしっかりと見せ場が用意されていて、読み終えてみたらあら不思議、だいたいのキャラの性格と顔と名前が把握できるじゃあありませんか!? とにかく設定を並び立て、そこに気圧されている暇なんてありません、こんなそれこそ先が気になって気になって、一気に読んでしまいました。

とにかく、これからようやく物語が動き出す、そこまでに至る遠大なエピローグが、上巻と下巻の半分以上、1000頁近くをかけて語られます。そして、アリアダスト学院生徒会のメンバーが結集した様を描く挿絵にまた圧倒。こんなのは作家と絵師が机を並べて仕事してるような環境じゃなければなしえないような構成。本気ですげええ。

いや、もう、どこを取り上げても見せ場しかないんで、いちいち語りまくっているととんでもないことになるので、どこを語りたいか迷ってしまうんですが、表紙を飾る正純の相対のシーンも、葵姉弟の過去話も、二代の雪辱も、白と黒の魔女の空中戦も、銀の騎士の一騎当千の戦いも、ああああ、もう、他にもいろいろあるんだってば! ノリ的にはもう、『終わクロ』のクライマックスを彷彿とさせる、息もつかせぬ怒濤の展開ですね。

“不可能男”と呼ばれるトーリも、彼だけが持つ、彼しか持ち得ない思いと力がついに明かされました。誰よりも馬鹿だからこそ、誰よりも無茶を言い、そして、それを頑なに信じ笑い続けることができるトーリ。彼が力を得るために行った契約の代償の大きさは、逆にこれから彼らが得ていくものの大きさと鏡映しのようで。彼が失ったものを、ホライゾンが得るという展開は、これから先の物語の展開の暗示めいていますが、彼がホライゾンに望んだように、物語の結末に互いに笑い合えるという、幸いを求めた戦いをこれから行っていくんでしょうね。ラストカットのイラストがひとときの安息を与えてくれますが、今後の物語でも、トーリは馬鹿で突き抜けて行って欲しいものですね。

ということで、この先の面白さへの期待に一切の不安なし。この壮大な物語がどこへ向かうのか、とにかく続刊を楽しみに待つ、その一手ですね。

hReview by ゆーいち , 2008/10/22

境界線上のホライゾン 1下
境界線上のホライゾン 1下 (1) (電撃文庫 か 5-31 GENESISシリーズ)
川上 稔
アスキー・メディアワークス 2008-10-10

境界線上のホライゾン〈1・上〉

stars 君はどちらだ。世界を揶揄して喜ぶだけの批評家か、それとも、楽しむ者か。それとも、世界を作りに行く者か。

“重奏統合争乱”から160年。重奏世界の崩壊をきっかけとした争いに敗北した神州は、国土のほとんどを各国により分割統治され、航空都市艦・武蔵を唯一固有の領土として、各国の境界線上を航行していた。聖譜に従い、かつての歴史を繰り返してきた世界。しかし、その歴史記述が1648年をもって途絶え、世界の終わり・末世が訪れるという空気が広がっていた。果たして、1648年を最後に世界は終わるのか? 様々な思惑が絡みあいながら、未来を切り開くために戦う学生達。これは、再び天を目指すために歴史の再現を行う人々が織りなす“創世記”。

CITYシリーズ、AHEADシリーズに続く、川上稔の描く新たな物語・GENESISシリーズがいよいよ開幕。

今回も重厚長大な設定に裏打ちされたような世界観で、「1の上」とか訳の分からない巻数が付きつつ、設定資料が満載。これを見ながら読めというのですね、分かります。

そんな感じで、川上稔作品に触れたことないと、まずはこの設定の膨大さに圧倒され、挫折する可能性がなきにしもあらずといった風情ですが、そんなのは『終わクロ』で通過済み。シリーズ最初っから500ページ突破しつつ、その大部分が世界観の描写などに費やされている本巻も楽しく読ませていただきました。

もう物語のファーストエピソードから非常に盛り上がっていますね。いきなり世界規模の危機が起きているというか、今回の事件の黒幕によって明かされた事実が、微妙な均衡の上に成り立つ学園国家間に衝撃を走らせ、さらに主人公・葵トーリの物語とも深く関わってくるという。先々まで見越した伏線が膨大に張られて、こりゃまたそのうち読み返さないと置いて行かれるぞ的な感じさえします。

お話的には、下巻でようやく主人公達が動き出すという感じですが、上巻でも脇役あるいはかつての主役達の活躍が熱い熱い。オヤジ達が格好良いのは川上作品のお約束的でもありますが、今回もそういったオヤジ達の熱い戦いが繰り広げられてます。でも、これ、前哨戦……? とにもかくにも下巻が楽しみ。いきなり合わせて1000ページ超えそうな出だしですが、これでこそ、という作品なので続きを全力で待ちたいですね。

妄想的な考察。AHEADシリーズから遥か未来が舞台のGENESISシリーズですが、前シリーズの名残がそこかしこに感じられますね。固有名詞の数々だったり、「Tes.」や「Jud.」の応答の言葉だったり、重奏世界って概念空間の拡張? とか、八大竜王、全竜、とか前作のキーワードが形を変えて現れたり、そもそも舞台が神州世界対応論によって各国が割り当てられているっぽいなど、『終わクロ』知っていればさらににやにやできますね。なんというか、こういう無闇矢鱈に気合いの入った設定が織り込まれたお話が、なんとも川上稔作品らしくて非常に楽しいです。今回も驚くべきことにラストまでのプロットがほぼ完成しているとのこと、設定資料だけでA4・780ページとか、おかしいんじゃね的な練り込み乃本作ですが、まさに予想に違わぬ、それ以上を期待できるだけの出だし。これまた楽しみなシリーズが始まりました。

hReview by ゆーいち , 2008/09/15

境界線上のホライゾン 1上
境界線上のホライゾン 1上 (1) (電撃文庫 か 5-30 GENESISシリーズ)
川上 稔
アスキー・メディアワークス 2008-09-10

風水街都香港〈下〉

stars ねえ、聞こえる!? 私のこたえが!

香港を天界とする儀式が始まった。空には大地竜が舞い、都市は崩壊が続いている。香港返還の期日となる6月30日。タイムリミットはその日。この儀式を止める方法は一つ、陽の力を持つ大地竜に、陰の力を持つ大地竜をぶつけること。しかし、その可能性をもったアキラは、兄・ダブルリーとの戦いの後、風水の力に恐れを抱いていて……。

大地竜起動を阻止する総力戦にして第1戦は香港師団の手痛い敗北。アキラは風水を行えなくなり、リンは大怪我を負い。ダブルリーの思惑通り、けれど彼の真意は誰も見通せぬまま、香港が崩壊するそのときが刻一刻と迫りつつあって。

アキラとガンマルのふたりを主軸に据えながらも、香港という都市、そして飛翔歌に秘められた秘密、そして、相対した兄・ダブルリーの思惑の不透明さなど、伏線のオンパレードで怒濤のごとく終わってしまったような下巻でした。

まぁ、ぱっと見、ラストでこれでもかという大団円なので、これはこれで良しなんでしょうけれど、語られなかった部分、想像で補うと、より楽しめそうな部分を思うと、一回読んだだけでは楽しみ尽くしたとはいえないのかなあ。

と思って、Wikipedia の風水街都 香港の項を読んでみたら、過剰な設定と伏線のため、発売時から現在に至るまで「難解過ぎる」とする評が多い だって。やっぱりね。

hReview by ゆーいち , 2008/05/05

風水街都香港〈下〉
風水街都香港 (下) (電撃文庫―都市シリーズ (0266))
川上 稔
メディアワークス 2001-11

風水街都香港 〈上〉

stars アキラの風水ってのは、俺が知ってる風水とどう違うんだ?

返還が迫る魔都・香港。香港商店師団の一員として活躍する風水師のアキラは、とある事件の直後に香港一の五行師ジェイガンの最期を看取る。その背後では、香港上空に在る滅びた天界を、香港の土地でもって復活させようという、アキラの兄・ダブルリーらの思惑が動いていた。ジェイガンの弟・ガンマルと出会い、アキラは自らの風水を、そして五行を見つめ直していく。そして、香港崩壊の時は刻一刻と迫っていた。

上巻にして、かなりな盛り上がりと絶体絶命の窮地。アキラにとっては、圧倒的な実力の持ち主が後から後から湧いて出て、自信喪失、まさに絶望な引きですね。

そして、香港を天界にするという計画の第一段階が発動。いきなり大壊滅な香港ですが、これから一体どうやってこの計画を止めるというのか。アキラの仲間、師団の面々も皆、窮地に陥っているし、ここから一気呵成の大反撃となるのかどか?

風水師を毛嫌いするガンマルは、軽薄な言動とは裏腹に、重い過去を抱えていそう。兄との確執とか、戦いの道具としかならない五行の力とか、そんなものをひっくるめて、アキラと出会ったことで、彼もまた良い方向へ導かれていっているような。アキラと交わすどつき漫才も軽妙で楽しいし、なんともお似合いのふたりかと。

さてさて、大事な部分の伏線は張りっぱなしで緊張感全開で下巻へ続いていますが、下巻はこの調子だと最初からクライマックスな展開が予想されますね。期待大。

hReview by ゆーいち , 2008/04/21

風水街都香港 (上)
風水街都香港 (上) (電撃文庫―都市シリーズ (0263))
川上 稔
メディアワークス 2001-11

エアリアルシティ 架空都市─倫敦

stars Live with fear no evil whatever

架空都市倫敦。書物の中に築かれた英国はそう呼ばれている。天使と魔物が住まう都市、あらゆる存在・事象が文字として表される都市。そんな架空都市に簡単には入り込めないはずの人間が三人やって来る。そして、彼らは魔物を狩り出す。倫敦に天界を落とすという目的のために。魔族の青年・アモンは仲間を殺され、そして彼自身も否応なく事件に巻き込まれていく。

都市シリーズ第2弾。設定が独創的すぎて分かりづらい部分が多かったですね。登場人物・世界のすべてが文字で記述されているという設定のおかげで、絵面を想像するのに難儀しましたね。

そういう意味では、かなり人を選ぶ一冊かも。というか、川上稔の作品自体が人を選んでる気がしますけれど。

そんなこんなで、根本的な設定や用語の解説が作中でほとんどないので、なんとも置いてけぼり感を覚えますが、何気にどっかで聞いたことのあるような言葉が出てきたり、『終わクロ』からの設定を引き継いだりしてる部分があったりと、いろいろとにやりとさせられる部分はありましたね。

アモンと目を閉ざしたままの女性クラウゼルの関係は、割とあっさり目で、どちらかというと、自分の写し身みたいなヴァレスとの対比・戦いが物語の中心にあったような印象です。

ヴァレスとモラウとラルフという、敵方に立ったひとたちの物語の方が、なんだか深いものを感じた作品でした。

hReview by ゆーいち , 2008/04/20

エアリアルシティ
エアリアルシティ (電撃文庫―都市シリーズ (0190))
川上 稔
メディアワークス 2002-03

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