Home > Tags > 植田 亮
植田 亮 Tag Archive
ラプンツェルの翼〈2〉
君はいつもそうだ。私の嫌がることばっかりする。
遼一と奈々の平穏な日常は唐突に終わった。見知らぬ場所で目覚めた奈々は、一人、鎖につながれていた。遼一が近くにいない奈々は満足に力も発揮できず、そこで奈々は4人の少女と対峙する。天使育成のためのプログラムに落第した少女たち。5人が放り込まれた密室で生き残りをかけた新しいゲームが始まろうとしていた。
前巻できれいに終わっていたかと思ったら続きが出たよ!
宿主を食らうことで天使として完成するという残酷なゲームをイレギュラーな形で生き残った奈々と遼一。あの後は割と穏やかに暮らしていて、そのまま何も起こらなければそれこそハッピーエンドだったろうに、だけれど、そうは問屋が卸さないってことで今度は奈々の方がゲームに巻き込まれ、生き残るために過酷な試練に挑むというエピソード。
疑心暗鬼の中、自信の知恵だけが状況を打破する唯一の鍵であるというのは、これまでのシリーズと同様。ルールの穴を突き、裏切りを強要するようなシステムの、さらに裏を突いて最終的には(ふたりにとっての)ハッピーエンドに至るあたりは、逆にこのシリーズならではなのかも? 割と救いのあるラストを、今回も提供してくれたので、そういう路線の物語なのかも。ただ、そんな安心感があるからこそ、緊迫感が微妙に薄れている一面もあるかもしれませんね。ぎりぎりな状況なんだけれど、何とかなるんじゃないかって予感が常にありましたし。
今回は影の薄かった遼一は、それでも最後の最後で主人公らしい決断を下しますね。こういう自己犠牲な選択を下すのが人間で、作中でそういう選択をハナから否定していた天使たち対比する形になってるのが面白いかも。不完全な奈々と依存すべき相手である遼一、今回も結果的に遼一との関係が断ち切られることもなく、けれど天使として生きることになった彼女。機械然とした他の天使たちと違い、不必要な感情というものを残したまま天使となった奈々は、その不完全さがあるからこそ、彼女らしいのかなと思います。
hReview by ゆーいち , 2009/05/18
- ラプンツェルの翼〈2〉 (電撃文庫)Amazon |
- 土橋 真二郎
- アスキーメディアワークス 2009-05-10
- bk1
- Comments: 0
- Trackbacks: 2
ラプンツェルの翼
君はぼんやりと道を歩いているだけよ。なんの目的もなくただ歩いてるだけ。意志もなく歩いている君はなんなの? 君は誰なの?
《絶対に開けないでください。人にとって危険な武器が入っています》そんな注意書きが書かれたトランクの中に入っていたのは、精巧な容姿をした一糸まとわぬ少女だった。とても「危険な武器」には見えない彼女と、救済者を名乗る女性によりもたらされたいくつかの道具。人類を守る天使を育てるためのプログラムに強制的に参加することになった遼一と少女の、目的とゴールの見えないゲームが始まる。
おおお、なんかきれいに話が終わったぞー。『扉の外』といい『ツァラトゥストラへの階段』といい、なんだか肝心な部分が明かされないうちに次のシリーズが始まったりしてましたが、これはこれで1冊でまとまってるので次は『ツァラトゥストラへの階段』の4巻になるのかなあ?
人間と、人間ではない別の人間ぽいものとの共存する社会。隠匿されているけれど、天使や悪魔と呼ばれるそれらが、社会に根付いていて、ひっそりと、けれど確実に、その社会に生きる人間たちの生命への脅威となっているという世界。
天使と悪魔のどちらもが、人間によって育てられ、課せられたゲームを勝ち抜いた先に、自らの存在の意味があるなんていうのは、相も変わらず趣味の悪い設定ですね。人間が道具として、天使未満の少女たちを使ってゲームに臨んでいるかと思ったら、いつの間にかその主従が逆転してしまうどんでん返し。何らかのルールに支配されたゲームを通じて、対人間だけでなく、意思の疎通ができそうでいて、実はできてないんじゃないかというパートナーとの対話に不安を感じさせられますね。
主人公の遼一とパートナーとなった亡き妹を名乗る奈々の関係は、仕組まれたゲームで生み出された不信やら欺瞞やらの試練の先に、ようやく対話と理解への一歩が踏み出せたようなラストでしたね。この世界の中に、きっと数え切れないくらいに生み出されてきた両者の関係の行き着く先としては、理想的な終わり方であり、始まり方であったように思います。
hReview by ゆーいち , 2009/02/28
- ラプンツェルの翼 (電撃文庫)
- 土橋 真二郎
- アスキーメディアワークス 2009-02
- Amazon | bk1
- Comments: 0
- Trackbacks: 1
さよならピアノソナタ〈4〉
直巳は、どうして。音楽なら。なにが要るのか、すぐわかるのに。わたしのほんとにほしいものは、どうしてわからないの。
直巳と真冬の距離は少しずつ近づいていった。春に出会い、夏をともに過ごし、秋にようやく自分の気持ちに気づいた。そして、冬。直巳は自分の想いを伝えるため、真冬の誕生日を、そしてクリスマスを、ふたりで彼女とふたりで過ごしたいと思うが、それは神楽坂先輩の思惑や、千晶の、直巳には理解できない気持ちに振り回され思うような一歩を踏み出せない。そんな中、次のライブの予定が決まり、練習を開始するが、真冬の身に起きた異変が、再び4人の活動に黄信号を灯してしまい……。
ここで物語が終わるのがとても惜しいです。けれど、一年を通して四季のように移ろい流れ、変わっていった直巳、真冬、神楽坂先輩、千晶の想いへのひとまずの決着。
誰かが想いを叶えるということは、それ以外の残されたものは、その想いが叶えられないということ。そんな当たり前のことに気付けなかった直巳のヘタレさ加減こそが、どうしようもなく手遅れな事態を生んだ原因であり、彼に惹かれてバンドという形で集い、活動した彼女たちは、あるいは貧乏くじを引かされてしまったのかなあと思いました。が、神楽坂先輩の言うように、好きになるひとなんて選べない、だからこそ恋は切なくて、だからこそそれを叶えたいと願い、あるいは妬み、けれど純粋さゆえに傷ついていく。
直巳がフェケテリコの心臓と例えたのは見事ですね。彼がいなければ、そもそも彼女たちの気持ちは死んでしまう。けれど、彼が彼として鼓動を響かせ、血を通わせている限り、傷ついた彼女たちは血を流し続けなければならない。最終巻たる本巻は、そんな彼女たちの三者三様の心の痛みにも彩られていて、届かなかった想いを抱えることとなってしまったふたりの痛みは、なおのこと琴線に響きまくってしまうのですね。
ああ、もう、それにしても、どうして文章で描かれる音楽にここまで心が揺さぶられるのか。あらゆるシーンで流れる音楽が、どうしようもなく雰囲気を盛り上げて、聞こえないはずの音楽に耳を傾け、妙なシンクロをしてところどころで涙腺緩むわもう大変。真冬のピアノシーンなんて、ねえ、彼女が、直巳のためだけに弾いてくれた楽曲の数々。その意味と、彼女の想いが、その調べに乗せられているのに、この朴念仁主人公ったらさあっ!! その後のライヴ、片翼で懸命にうたいあげるシーンとかも、彼らの必死な思いに彩られていて、それこそ聴き入ることしかできなくなるわけで。
クライマックスで美味しいところを持っていったのが、ダメな大人の代表格だった直巳の親父・哲朗ってあたりが憎いなあ。ダメダメだったくせに、どうしてここ一番で格好いいところを見せるのか。ヘタレな部分を似せてしまった罪滅ぼしにしては破格ですよね。親父からの詫びの言葉を直巳がどう受け取ったのか、彼が過つしかなかった恋愛を、息子の直巳がどう決着を付けたのか、その答えが出るのは……。
はじまりの場所。めぐりめぐってようやく辿り着いたのは、ふたりの出会いの場所。かつてそこで出会い、そして遅くなりすぎてしまったけれど、ついに踏み出すことのできた一歩。ようやく始まる新しい物語。ヘタれすぎた直巳でも、最後の最後で自分で動き、答えを形にしてくれました。これまでの積み重ねがあったからこそのラスト。分かりやすいラストシーンですが、だからこそ、出会いの場所で思いを通わせることができたっていうことが、とても美しく思えますね。
ああ、本当に、これで終わってしまうのが残念。まだまだ見てみたいシーンは多いですね。直巳と真冬のその後もそうだし、それこそ、語られていないバンドメンバーたちの後日談もほしい、そして、何より、フルメンバーが再び集ったフェケテリコのライヴを見せてほしい。そんな我が侭を声を大にして言いたくなってしまいます。ぜひとも後日談でも短編集でも出してくださいませ。
とにもかくにも、素晴らしいお話でした。この最高の物語に惜しみない拍手を。
hReview by ゆーいち , 2008/12/12
- さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)
- 杉井 光
- アスキーメディアワークス 2008-12-05
- Comments: 0
- Trackbacks: 0
さよならピアノソナタ〈3〉
大事なのはスピードじゃないよ。四人で呼吸を合わせることだ。
合唱コンクールに体育祭、そして文化祭。民音部は初めての単独ライヴを文化祭のステージと定めて練習に励む。そこに至るまでの道のりは平坦ではなく、まさに単独ライヴを勝ち取るための戦いの日々だ。ときを同じくして来日したヴァイオリニスト・ジュリアン=フロベール。真冬の既知である少女と見まごうばかりの容姿の彼は、ナオに問いかける「ナオミは、真冬の、なんなの?」と。
今回もナオの鈍感で民音部のメンバーは苦労させられてますね。もう、この鈍感さ加減は罪と言っても良いレベルかと。神楽坂先輩だけは、それでもナオを手玉に取る一枚上手さを見せてくれますが、自分の気持ちに全く気付いてもらえない真冬と千晶の立場は……。
そして、登場する新キャラ・ユーリことジュリアン。彼の登場で、今まで確固たる言葉を持たなかった、ナオの真冬への気持ちが、おぼろげながらも形を取り始めていきます。ナオが知らない真冬の姿を知るユーリ。けれど、ユーリが知らない真冬の姿をナオは知っているわけで。まっすぐに、自分の気持ちを言葉にしてくるユーリにたいし、ナオが取った行動はじれったいながらも、自分と真冬の関係を新しく規定しようという想いが感じられましたね。
むしろ、真冬の口べたながらも、ナオへの依存を隠そうとしない態度に、土壇場まで気づけなかったナオこそが、やっぱり今回も戦犯じゃないかなあと思うのは仕方ないよなあ。あそこまで真冬に言われて、ようやく、自分がどうしたいのか。ただ、ただ真冬の隣にいたいという、そんな願いを口にするまでの紆余曲折の物語でありましたが、だからこそのラストシーンだったのかなと。
相変わらず、様々な楽曲とともに綴られ、奏でられる物語です。真冬が居場所を見つけたバンドという仲間とは別に、彼女が本来いるべきだったピアニストとしての居場所へも戻りつつある真冬。かけがえのない仲間と音楽。けれど、一度は逃げだし、再び立つことが許され、戦うことを決意した舞台が真冬にはあります。季節は秋から冬へ変わりつつあります。そして、冬の終わりが訪れたとき、民音部のメンバーにとって、その時期は別れの季節となるのか、あるいは新しい関係の始まりを告げる季節となるのか、楽しみですね。
hReview by ゆーいち , 2008/08/10
- さよならピアノソナタ 3 (3) (電撃文庫 す 9-9)
- 杉井 光
- アスキー・メディアワークス 2008-08-10
- Comments: 0
- Trackbacks: 0
さよならピアノソナタ〈2〉
たぶんナオはわかってない。自分で考えて自分で見つけて。そうしてくれないと、あたしも困る
真冬が帰国し、民族音楽研究部に入部して初めての夏。神楽坂先輩はとんとん拍子に夏合宿、その後のライブへの参加と、立て続けにスケジュールを埋めていく。部内での自分の立ち位置に自信の持てない真冬。そんな彼女に先輩が命じたバンド命考案の大役。すったもんだの末、真冬から出されたfeketerigó──フェケテリコ──、その名前に込められた意味を、彼女の想いを、ナオはまだ知らない。
今回も素晴らしい物語でした。相変わらず音楽シーンの躍動感は、その曲を知らなくても描写から伝わってくるようだし、曲に込められたちょっとした蘊蓄も、登場人物たちの言葉と同じかそれ以上に、彼らの内面を語ってくれているし、何より非常に美しいお話でした。
ナオのおかげで、民族音楽研究部に居場所を見つけた真冬。けれど、ナオは真冬のそんな気持ちに気付く素振りもなく、メンバーの千晶や神楽坂先輩も、ナオに対しては単なる部活仲間以上の感情を抱いているようで。男1:女3という、恋愛関係に陥ったら修羅場回避不能な陣形で、けれど、ナオの鈍感さが、全てを台無しにしているのか、あるいは微妙な均衡を保たせているのか。
なんでもできそうな神楽坂先輩も、過去にあったバンドの集合離散の辛い思い出が尾を引いてるみたいで、初めて見せた弱さみたいなものが、新鮮で、切なくて。超然としているようだけれど、彼女も恋からは逃れられないのか。なんか、どんどん泥沼化していきそうだけれど、みんなが幸せになる道はあるのでしょうか。
ラストの演奏のシーンは、やっぱり素晴らしい。そこに至るまでの、繋がっていると感じられる演出の連続が、最後の最後で四人が一体となった演奏を、さらに盛り上げてくれます。その描写は最低限だけれど、ナオが、真冬が、千晶が、神楽坂先輩が、創り上げた空間の熱狂は、切なくなるくらいの感動を与えてくれました。いや、本当、圧倒させられます。杉井光の文章、どんどん好きになっていってます。
バンド名、feketerigóの意味も憎らしいくらいで、ナオと真冬が大切にしているものが、同じものだということが分かっただけで、なんだか泣きたくなってしまいました。
そして、お互い、音楽から始まった繋がりが、それを越えて、互い同士を必要とするような関係に発展していったら素敵ですね。ナオも真冬も、自分の気持ちを言葉で伝えるのは苦手で恥ずかしくて不器用だけれど、きっと、音楽の中でなら素直に繋がれる。そして、それがいつの日か、音楽とは違った形で通じ合うことができたら、もっと素晴らしいんだろうなあ。
……まぁ、彼らの四角関係は、それを簡単に許すほど、温いものではないでしょうけど。この調子で、もっともっと素敵な物語を見せてほしいです。
hReview by ゆーいち , 2008/03/23
- さよならピアノソナタ (2) (電撃文庫 (1570))
- 杉井 光
- メディアワークス 2008-03-10
- Comments: 2
- Trackbacks: 0
Home > Tags > 植田 亮
- 応援中
- サイト内検索
- フィード
- メタ情報
- 54 queries.
- 2.981 seconds.
