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犬村小六 Tag Archive

とある飛空士への恋歌〈2〉

stars いくら神さまが残酷でも、なにも悪いことをしていないわたしに、そんな酷い仕打ちをなさるはずがない。いくら神さまが残酷でも――そんなふうに人の運命を意味なく弄んだりはしない。

遠大な目的のため、終わりの見えない旅を続ける空飛ぶ島・イスラ。カドケス高等学校飛空科で再会を果たしたカルエルとクレアは、これからともに送る学校生活に心躍らせる。しかし、ふたりは知らないでいた。カルエルがかつての皇子・カールであることを。そして、クレアがカルエルにとって憎むべき仇・ニナ・ヴィエントであることを。皮肉な出会いを果たしたふたりは、回り出した運命の歯車の音に気付かないでいた。

学園編スタート。前巻がまるまるカルエルの回想に費やしたエピソードだったのに対して、ここからようやくこの物語が始まる感じですね。

因縁深いはずなのに、それに気付かず、惹かれ合っていくカルエルとクレア。クレアの方はカルエルの正体におぼろげながら気づき、その先に待ち受けているであろう拒絶と憎しみの感情に恐れを抱いていますが、一方のカルエルは色ボケしたのかクレアが憎きニナ・ヴィエントであることなど想像だにしていない様子。ヘタれヘタれとアニーにバカにされつつも、彼の奥底に燻っている憎しみの炎は決して消えることはなくて、真実を知ったときにこそ、彼はクレアへの想いを憎しみに変える以上に、彼自身をそのような運命へと導いた神へこそ、その呪いをぶつけるような気がしますね。

とはいえ、イスラの道程はまだ始まったばかり。大きなトラブルも起きず、学生同士の特権意識に基づいたいざこざはあれども、おおむね順調なその旅路。旅行気分と新生活に浮かれている学生たちの楽しさがこれでもかと描かれていますね。というか、アリーメンの描写はギャグですよね……(笑) ここまで至高にして究極な美食具合は、逆に人知を越えた料理に思えて仕方がないのですが。この辺のノリは、シリアス一辺倒だった前作の『追憶』よりは、むしろ『レヴィアタン』の日常パートに近いノリですね。某キャラもなぜか顔を出してますし、この辺、両作を知っているとニヤリとできるサービスなのかも。

しかし、そんな和気藹々の学生生活を吹き飛ばすような急展開で以下次巻。いやぁ、未知の勢力との遭遇、そしてこれまで知らなかった新たな世界が開ける驚きが詰まったエピローグでしたね。そして、ここで『追憶』との世界観のリンクが活きてくるとは。時間軸的にはあの国が発見されていないって段階で『追憶』の前の時代になるのかなあ。西と東の大国が争っているという設定は本作にはないようだけれど、果たして?

果ての世界を見つけるという目的の前に突如立ちはだかる敵対勢力。未熟な飛空士見習いたちを抱えたイスラは戦力的に心もとなさそうですが、ここから一気に空戦の物語へと突入していくのでしょうかね。カルエルたちの関係の行く末とともに、イスラの旅の行く末も気になります。

hReview by ゆーいち , 2009/08/17

とある飛空士への恋歌 2
とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)
犬村 小六
小学館 2009-07-17
Amazon | bk1

とある飛空士への恋歌

stars 旅立ちなんかじゃない、これはきれいに飾り立てられた追放劇だ。

伝説にある「空の果て」を目指すため、空に浮かぶ島・イスラは、いつ終わるとも知れぬ旅に出る。そんなイスラの上で生活することになる人間のひとりカルエルは、かつて革命によって全てを失った元皇子であり、イスラ管区長となった革命の旗印・ニナ・ヴィエントに深い憎しみを募らせていた。

昨年の話題作『とある飛空士への追憶』と同一世界で繰り広げられる新たな恋と空戦の物語。舞台設定が共通してるだけで、登場人物も一新され、別に前作を読んでなくても支障は欠片もないのですが、これ、思いっきり次巻へ続きまくってますね。

皇子としての幸福な生活と、何よりも愛していた母親を奪ったニナ・ヴィエントへの憎しみの一身で、この体の良い流刑じみた旅に出ることを決意するカルエル。今巻は、そんな彼の過去と現在を語り、そしてこれから訪れる恋と立ちはだかる障害の予感をほのめかせます。

物語の終盤でカルエルはクレアという少女に出会い、彼女を気にかけるようになりますが、そんな彼女が実は……という、どう考えても泥沼化して悲惨な結末を迎えるような設定が明かされたりして、早くも次巻は波乱が巻き起こりそうな雰囲気ですね。空翔るロミオとジュリエットって、それじゃあ、ラストは悲劇的なものになるってこと?

ともあれ、暗い過去を持ちつつ、偶然によって暖かい家族に引き取られ、義姉に義妹にかこまれた貧乏ながらも勝ち組な生活をしてるカルエルは、皇子の生活が抜けきらない高慢ちきだけれど、ピンチに弱い微妙なへたれスキルも持っていたりと、妙に愛嬌があったり。そんな彼の義妹なアリエルも男勝りな性格と、実は何年越しの想いを抱えてるっぽい純情さも秘めてそう。

そこに訳ありのクレア加われば、これは分かりやすい三角関係とかに発展するよりも、もっと苦しい状況になっていきそうな気がしてなりませんね。

長い長い旅の始まりで1冊使ってしまいましたが、この物語はどういう方向に向かうんでしょうか。旅の目的である空の果てへ至るという部分も無視するとは思えないし、実はけっこうな長編になったりするんでしょうかね? とにもかくにも、舞台も整い本格的に物語が動き出す次巻に期待です。

hReview by ゆーいち , 2009/03/23

とある飛空士への恋歌
とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)
森沢 晴行
小学館 2009-02-19
Amazon | bk1

レヴィアタンの恋人〈4〉

stars 惚れたぞ、美歌子。お前の永遠をおれのものにすると決めた。

渋澤美歌子率いる姫路コロニーの軍勢 4000 は門司に布陣を敷く日向コロニーの軍 14000 と相対していた。姫路軍の最高司令官、“万里眼”と称される白谷三座の策と、日向軍の戦目付・鉄斎庵一舟の策が激突する。数で圧倒的に劣る姫路軍は、美歌子自らが率いる白狼兵団による強襲を敢行する。

西日本の統一をかけた戦いが行われている中で、タマとユーキがひたすらいちゃいちゃしてるわけで。あんたら、完全にバカップルに成り下がってるよ!! 白河戦の血なまぐささと正反対の平穏さが束の間のものだと思えつつも、こういう日常のたわいない馬鹿なやりとりというのは和みますねー。

で、そんなことをしている間に、西日本は姫路軍によって一気に制圧されてしまった感じ。美歌子のカリスマさは、かつてタマが神追軍にいたときに発揮したそれとすでに同じレベルに至っているような。タマがユーキに語ったように、将として一番重要な才能を、この上ないレベルで体現しているかのような美歌子。彼女に復讐を誓っているはずの、タケルやシュンですら、自らの気付かぬうちに、その虜にされているような印象。今回の戦いの勝敗を決したのも、姫路軍の将たる美歌子のそれが、日向軍の将・岩切雨俊のそれを上回ったからですかねー。というか、自信も実力もしっかりあったはずなのに、雨俊は噛ませ犬にしか見えなかった……哀れ。

さてさて、今回のラストで調布新町はまた大きな転換を迎えることになったような。頼れる存在を失くしてしまったユーキが、これから自分だけの部隊をどうやって率い、成長していくのか、あるいは挫折してしまうのか。肝心なときに助けに来てくれるとユーキが信じているのと同じように、タマはまた現れてくると思うのですが、これからの展開はさらに激しさを増していきそうですね。

hReview by ゆーいち , 2008/10/11

レヴィアタンの恋人 4
レヴィアタンの恋人 4 (ガガガ文庫 い 2-5)
犬村 小六
小学館 2008-09-19

とある飛空士への追憶

stars 願わくばふたりの物語に最良の結末を

一万二千キロの単機敵中翔破。未来の皇女たる美しいファナを後部座席に、シャルルは遙か彼方の目的地を目指す。空戦において、帝政天ツ上空軍の遥か後塵を拝するレヴァーム皇国。敵国にこの作戦は察知され、ふたりは絶望的な状況下で西を目指す。

うはは、素晴らしすぎる。

犬村小六の文章が、この作品の雰囲気とかっちりはまって、硬派で、けれどもどこか切ない余韻を残す物語に仕上がっています。これは良い。

達成至難の任務。けれど、背後に乗せたファナを、自らの願いとしても送り届けたいと感じるシャルルの思いが熱いです。身分違いなれど、その断絶を越えて、ファナの方から歩み寄ってくれたり、旅の途中のちょっとしたハプニングで、ひとときの距離感の忘我を覚えたり、そして、命がけの空戦の中で育まれていく感情と、わずか1週間にも満たない時間の中に凝縮された一生にも等しい波乱の物語でした。

そして、ラストの演出がまた心憎い。この物語で語られたふたりの旅の最後の演出は、この上なく美しいし、その締めくくりの言葉もまた美しい。

明かされないからこそ価値のある類の物語ですね。彼らのその後は、確かに続いていったであろうし、その謎に包まれた部分にこそ、幸せを見つけたという願いを込めたいです。ファナの足跡を辿れば、彼女が不幸でなかったことは想像できるし、その影に幾許かのシャルルの姿が人知れず見えていたらと願ってやみません。

蒼天、白雲、飛行機、悲恋、語られない歴史。様々な要素はあれど、それらが見事にかみ合って、素晴らしい一冊に仕上がったと思います。

ガガガ文庫は微妙にマイナーですが、だからこそ埋もれさせておくには惜しい逸品。というか、今後の作者買い確定かも。

hReview by ゆーいち , 2008/03/19

レヴィアタンの恋人〈3〉

stars 武蔵野共同戦線VS白河軍 大血戦!

調布新町町長・高比良啓十率いる武蔵野共同戦線と、白河軍は新宿にて激突した。優秀な特進種を擁しながらも、軍師不在の武蔵野勢は、白河軍の術中にはまり、戦線を分断。苦戦を強いられ、徐々に戦力を失っていく中、タマは武蔵野側の負けを確信し、しかし、最前線で奮闘するユーキは援軍を信じていた。

全編大戦争。いや、大戦争というにはその規模は800対1700と数だけ見れば大きくない気もするけれど、ほぼ1冊、その闘いの描写に使ってくれれば壮絶さはこれでもかと伝わってきますね。

個人の力では敵軍を圧倒しながらも、数の論理で徐々に押され始める武蔵野勢。士気をくじかれたものから死んでいく容赦ない戦場で、それぞれの思いを抱えながら戦うひとびと。その戦況を覆したのは、意外といえば意外な人物で。そしてそれのための準備を用意周到に行った高比良町長の腹黒さはなかなか侮れないと思ったり。

結末は思ったよりあっけなくて、序盤の活躍は特進種のユーキらの手によるものでも、最後まで戦線を維持したのは、守りたいもののために自らの命をかけ、闘い散っていった一般の兵士たちのおかげ。闘いの後の、守り切れた自らの町に帰還した彼らの安堵のほどやいかほどか。だからこそ、エピローグのひとときの平穏さと暖かさが染みるように感じるのでしょうね。

ユーキ、タケル、シュンの過去から現在に繋がる話も今後大きな意味を持ってきそう。タマと美歌子の関係とも密接に繋がっていそうだし、一同が今後どのような形で物語を動かしていくのか? そして、うっかりフラグが立ってしまった沙也加は、タマとユーキの間にどう割って入ってくるのか。激しい闘いと、妙にほのぼのした日常のギャップがなんとも魅力的なシリーズになってきましたね。

hReview by ゆーいち , 2008/01/26

レヴィアタンの恋人 III
レヴィアタンの恋人 III (ガガガ文庫 い 2-3)
犬村小六 赤星健次
小学館 2008-01-19

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