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神崎 紫電 Tag Archive

マージナル〈6〉

stars 聞いてみたいのですよ――『殺人はあなたを幸せにしたのですか?』と。

堂坂音羽と春日井小夜歌のふたりによる、小夜歌の継母殺害は、完全犯罪となって誰にも暴かれることなどないはずだった。しかし、ふたりの前に現れた摩耶京也と名乗る男が、事件を嗅ぎ回り、次第に核心へと迫りつつあった。追い詰められる音羽と小夜歌。ただ自由を求め、そして道を誤ってしまったふたりは、ただひたすらに地獄へと転がり落ちていく。

これにてシリーズは完結? あとがき見る限りでは本巻で描きたいことは描き尽くしたように見えますが……。

もっとも、摩耶京也を主人公とした物語は、すでに4巻でひとまず片付いているようなもので、前後編に別れたこのエピソードは、彼を探偵役として配した、別の殺人者の物語であったわけで。

そういった意味では、京也がこだわっていた境界を越えてしまった人間――オーバーラインとして、音羽と小夜歌が認識されているようには見えず、探偵役としての彼と、犯人役としての音羽の頭脳戦がメインになってるあたりが、大きく雰囲気が変わって見える要因でしょうね。

そして、前回が音羽の変質が描かれたのに対し、今回は彼女の妹であり、音羽が守ろうとした小夜歌の変質がこれまた恐ろしい感じで。冷静に計画を練り、けれどイレギュラーな事態にはペースを乱されてしまう音羽に対し、静かに心奥深くに殺意という澱をためていき自分以外の誰をも切り捨てることに良心の呵責を抱かない小夜歌。彼女の本巻での逸脱ぶりは十分に壊れているといえるような気もしますが、それでも彼女が「戻ってこれた」という一点において、京也の眼力は確かだったということでしょうか。

どうしようもなく追い詰められ、避けようのない嵐のような繋がりに対して、殺人という方法でしか血路を開くことのできなかった悲劇的なふたりですが、その手段を美化せず、悪として描き、そしてその代償をしっかりと背負わせた話の筋は報われなくても、ようやく幸せに手が届いたのかな、とそんな思いを抱きます。

まぁ、百合を描きたかったとかそんな理由で、こういう黒い話を思いつくあたり、作者の色は変わってないなあとも思いますが。

hReview by ゆーいち , 2009/07/19

マージナル 6
マージナル 6 (ガガガ文庫)
神崎 紫電
小学館 2009-07-17
Amazon | bk1

マージナル〈5〉

stars わたし、音羽姉ぇと一緒ならどこまででも、いいから……。一緒に行くから!

生き別れの双子である堂坂音羽と春日井小夜歌は奇跡的な再会を果たし、同じ学舎で共に時間を過ごすようになる。しかし、小夜歌は継母の虐待を受け続け、それを助けたいと音羽が手を尽くしても、事態は一向に快方に向かうことはなかった。どうしようもない状況はいつしか殺意に変わり、音羽は小夜歌との自由を手に入れるため、完全犯罪の計画と実行を決意する。

今回も意欲的かつ刺激的な表紙ですなあ。血みどろて。

そして、またしても前後編。今回が出題編だとしたら、次回が解決編になるという構成でしょうか。

これまでの主人公である京也の姿がどこにも見えず、ただ事件を引き起こすことになる堂坂音羽と春日井小夜歌のふたりが、たったひとりの脅威に追い詰められていき進退窮まる様をこれでもかと描いていきます。現代を舞台にしていて、さらにはこのご時世を反映したような設定で話が進むものだから、どうにも生々しくて心が痛いです。そして、たったひとつの事態打開のための策により、活路を見出したかと思ったら、彼女たちの前には断罪者となりそうな人物が現れて……。

そういう意味では、こちらとあちらを踏み越えた存在となってしまった音羽と小夜歌の前に、彼が姿を見せたのも当然の成り行きなのかもしれません。それがいかなる理由かは関係なく、ただ踏破してしまった彼女たちは、逃げ込み、反撃し、勝ち取ったはずの平穏な世界を、またしても望まない形で破壊されてしまうのでしょうか?

容赦ないラストで片を付けてきた作品だけに、楽観も安心もできない引きですよね。

hReview by ゆーいち , 2009/04/04

マージナル 5
マージナル 5 (ガガガ文庫)
神崎 紫電
小学館 2009-03-19
Amazon | bk1

マージナル〈4〉

stars 御笠さん、納得してくれとは言いません。しかし、これが我々という生き物です。

自らが君臨してきた「ブラッディユートピア」から撤退を決めたヴェルツェーニ=摩弥京也は、最も信頼を置いていたスターマインにその後継を委ねた。そして、事件は起こる。かつてない規模で全国で発生した連続爆破テロ事件。一部で「ヴェルツェーニ事件」と呼ばれることとなるこの事件に、京也と御笠は否応なしに巻き込まれていく。

おお、なんか面白かった。なんか過剰に現代社会、ネット社会の暗部を拡大して演出してるような気はするけれど、確かに現状のネットで散見する愉快犯とかを見ると、こんなバカが出てきてもおかしくないとか思ってしまう。

自身の闇であるヴェルツェーニとの決別を決意した京也の前に現れたのは、新たなるヴェルツェーニ。自らが操ってきた、ブラッディユートピアの総力を自身に向けられ、そして圧倒的な力で京也を追い詰めてくるヴェルツェーニ。組織対個人という絶望的なまでに劣勢な状況に、敗北し続け、膝を着いてしまう京也。これまでのように京也が持っていた余裕が一切なくなり負けを認めてしまうというのは、結構意外。まぁ、そこから立ち直らせたの御笠の存在が、彼の中で大きくなっていたという、そのために、彼は弱くなり、また強くなったという風にも思えましたが。

そんな御笠も今回は思いきり矢面に立たされ、危機的状況に。というか、ラストシーンが1巻のリフレインなんですが、これ、御笠自身の状態が明かされないままに物語が終わっているので、その辺が次巻で問題になってきそうですね。御笠が立てた、姉の敵を討つという目的が、今回は棚上げされているので、それがこのシリーズのラストエピソードとなりそうな気がします。

京也自身も、このエピソードでついに一線を越えてしまい、もはや留まっていることができなくなりましたね。彼の存在の本質が、ヴェルツェーニへとぶれるのか、京也へと戻るのか、それが今後の物語で大きな意味を持ってきそうです。

hReview by ゆーいち , 2008/08/19

マージナル 4
マージナル 4 (ガガガ文庫 か 1-4)
神崎 紫電
小学館 2008-08-20

マージナル〈3〉

stars さあ、始めましょうかッ、境界人間と一線を踏み越えた者との生き残りを賭けた闘争を!

宇佐美との再会をきっかけに蘇った悪夢、過去の父の影に京也は神経をかき乱されていた。そして、新たなる殺人者・クロウメモドキの邸宅に御笠と共に忍び込んだ京也は、間一髪でクロウメモドキの兇刃から逃れることができたが、彼は最後の生贄として宇佐美を選ぶ。〈境界人間〉と〈一線を踏み越えた者〉、似て非なるふたりの決着は、もはや死をもってしかなしえない。

境界に立つ京也の不安定さをクロウメモドキが容赦なく突く、痛みに満ちたエピソードでした。正直、今回の犯人であるクロウメモドキは、小物臭が漂っていて、ここまで苦労する相手かという印象は無きにしもなのですが、なるほど、どうしようもなく狂気に堕ちてしまった人間のあらゆるものを顧みない感覚が、過去を思い出したことによって心身ともに衰弱してしまった京也を上回ったといったところでしょうか。

そして、瀕死の重傷のなかクロウメモドキとの決着を望んだ京也が、最後の最後に自覚した御笠への想いというものも、今の彼という存在を形成してきた、過去の辛い記憶や、それと相反するかのような愛情があるがゆえのものなのでしょう。それは、決して報われることのない、歪んだ、呪われたかのような愛情だとしても、互いがそれを望み、享受しあえるのなら、あるいは正解ではないけれど、間違わない道を選べるのかもしれませんね。

幼なじみだった宇佐美に残した、幼かった京也の言葉は、いつか京谷自身を癒すことができるのでしょうか。

なんだか、これで完結っぽい雰囲気だけれど、まだ続くのかな? 幸せな結末は望むべくもなさそうだけれど、何らかの救いはもたらされてほしいなあ。

hReview by ゆーいち , 2008/04/26

マージナル 3
マージナル 3 (ガガガ文庫 (ガか1-3))
神崎 紫電 kyo
小学館 2008-04-19

マージナル〈2〉

stars 新たな猟奇殺人事件の幕開け そして京也の失われた3日間の真実が明らかに

エスター公爵の娘事件が人知れず解決してからしばらくが経った。ブラッディユートピアの管理人・ヴェルツェーニと対話を望んだクロウメモドキは、エスター公爵の娘をヴェルツェーニが殺害したと指摘し、これから自分が起こす殺人事件に関わらないよう言ってくる。その言葉通り発生する殺人事件。全身を大小様々な石により打擲され殺害されるという奇妙な方法で……。

3巻に続いてしまった。一応4月に続刊が出るということで待たされることはあまりないですが、これまた良いところで続いてしまったなあ。普通に1冊で解決するものだとばかり思っていたので、これは意外。逆に、あと1冊使って何をやろうというのか。

京也のかつてを知る少女・宇佐美風香と、京也の妹・蘭が登場。今回の話にあまり関わってきてないのですが、3巻で何か大きなどんでん返しでも用意されているのかな。

しかし、物語の流れは違うとはいえ、登場人物の構成がなんとはなしに『みーまー』とダブってしまうなあ。あの作品ほどぶっ飛んではいないけれど、逆に変なブレーキ踏んでるようで突っ込みが足りない気がします。

まぁ、一線を踏み越えない、境界に立つというマージナルの役割に頑なにこだわっている京也のキャラなのかもしれないですが、やっぱり印象薄かなあ。彼の衝動の根源となりつつある御笠との関係がかなり不安定になってきているので、そこでどうなるか。

犯人はすぐに分かるんで、あとはどうやって解決するかを見ていく話ですが、それとは別に主人公の京也の過去とかも明かされて、彼が大きく変わってしまった理由なども語られています。けど、やっぱりいまいち重く感じないのは、淡々とした説明的な文章のせいなのかなあ。ともあれ、やはり先は気になります。

hReview by ゆーいち , 2008/02/27

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