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細音啓 Tag Archive
氷結鏡界のエデン 楽園幻想
ようこそ。
凍てつく大海の遙か上空に浮かぶ浮遊大陸オービエ・クレア。そこは幽玄種と呼ばれる存在に、絶えず脅かされ続ける世界。幽玄種の侵攻を結界により防ぐ巫女の役目を負うユミィはただひたすらにひとりの少年を待ち続ける。かつて共に在り、そして果たせぬ約束を交わしたまま別たれてしまったシェルティスを。
『黄昏色の詠使い』から間を置かずスタートした新シリーズ。前作のあとがきで思わせぶりな予告をしていた内容に違わず、なるほど、この世界も前作の設定・世界とリンクした部分を伺わせるギミックに満ちているようですね。共通する言葉が出てきたり、前作ラストのアマリリスが紡いだ言葉でその存在がほのめかされていた世界が舞台になっていたりと、根本的な部分でつながっていたりするのかな。
それはそれとして、お話的にはこの作者の十八番芸的な美しさに満ちた流れですね。約束でつながれたふたり、だけれど運命に引き裂かれたふたり。一番近くにいるはずなのに、決して触れあうことができないという、想いは届いていてもそのぬくもりを感じることさえ許されないという枷が、ふたりの関係を切ないものにしていますね。世界を護るという大役を背負わされ、自分の心の安らぎを得ることさえ許されないかのようなこの境遇。だからこそ、望まぬまま別れ、長い時間の中で互いへの想いを降り積もらせ積み重ねていったユミィとシェルティスの再会へ至るまでの流れがとてもきれいに映るのですね。
お話的にはこれから始まる壮大な物語のプロローグ的な位置づけなんでしょうね。世界観の説明やら、登場人物たちの顔見せやら、お話の風呂敷をどんどんと広げていってるような印象でした。説明部分が説明部分という風に分かってしまって、お話の流れと浮いているような印象はやっぱり今回も健在で、重要度の低い部分とかはぼかしたりさらりと流してくれたりしても良いのかなあとか思っちゃいますね。まぁ、前シリーズ読んだりしていると、すんなり受け入れられる部分とか共通項的な部分とかを感じたりするのでまたかと思ってしまうのかもしれませんが。
バトル分多めで、主人公TUEEEEE! な展開を見せ、シェルティスたちの活躍をわくわくしながら読めましたね。のっけから超人揃いで、人ならざる幽玄種との戦いの過酷さ苛烈さをアピールしてますが、規格外の主人公だと戦いの緊張感というものはこれからこそが本番といったところでしょうか。
巫女と、それを護る千年獅という何よりも強い絆を紡ぐための物語の始まり。誰よりも近く誰よりも遠いユミィとシェルティスの想いが、『
hReview by ゆーいち , 2009/11/08
- 氷結鏡界のエデン 楽園幻想 (富士見ファンタジア文庫)
- 細音 啓
- 富士見書房 2009-09-19

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夜明け色の詠使い―黄昏色の詠使い〈10〉
……そう。悲しいことじゃない。だって、想いはここにある。それさえなくさなければ、きっとまた会えるから。
クルーエルは消え、そして世界から名詠式そのものさえも失われた。世界中で混乱が広がる中、ネイトはアマリリスが残した手がかりをもとに、セラの塔へと向かう。ただ、クルーエルを取り戻す、そのためだけに。
ああ、これでこの物語も完結ですか。予定調和という言葉がこれほど似合う物語もないような。紡がれるうたのように、響き合ううたのように、いつか訪れるその終わりがついにやってきた、そんな印象ですね。
ネイトとクルーエル。前巻で永遠かもしれない別れを経、けれど、再会するという約束をし、最後の物語となる本巻では、ネイトは自身の言葉を違えないため、ただひたすらに前を見続け、クルーエルを求め続けます。彼と対を成すような存在のシャオが、誰を求めることもなく、ただ在るべき世界のために、在るべき名詠のために、行動していたのと対照的ですね。
お互いに譲れないものを持ち、決して揺るがないだけの強さを持ち、けれど、最後の最後に勝敗を分けたものは何だったのか。シャオがそこに生きる何ものでもなく、ただ自分の使命に殉じ、世界を愛し続けたのに対して、ネイトは世界よりも何よりも、たったひとりの大切な少女を、クルーエルをこそ求め、愛し続けましたね。そして、彼が最後に頼んだのは、神ともいえる存在のミクヴェクスやアマデウスの力ではなく、お互いの想いであり繋がりであったことが、どこまでも似通った、そして対照的なふたりを決定的に別つものだったのでしょうか。
そこに至るまでの戦いも、ひとびとの想いも、願いも、祈りも、ただただ透き通った透明な美しさに満ちていて、最終的に誰も彼もが祝福を受けるような流れになったのが、この世界の在り方の象徴のように思えますね。どれくらいの繰り返しの果てに訪れたこの結末なのか、けれども、この世界の在るべき姿を、そこに息づくひとびとが、作り上げていく、そんな未来を見たくなった、そこに夢を思い描いた、調律者たちの心に、ようやく共感が得られたような気がしますね。
全てが収まるべきところに収まり、在るべき姿を取り戻し、これからも果てしなく続いていく世界の中で、どこまでもどこまでも、幸せを携え、手を取り合い、共に歩んでいく、ネイトとクルーエルの未来に幸あれかし! 通してみればやっぱりどこまでも美しいという印象が残る、澄んだ物語でしたね。
そんな余韻に浸りつつ、氏の綴る新たな物語『氷結境界のエデン』にも期待したいですね。どうやら別の世界でありながら、根底にある部分は共通したものを持ってそうなので。次の物語がどんな音色を響かせるのか、楽しみです。
hReview by ゆーいち , 2009/08/23
- 黄昏色の詠使いX 夜明け色の詠使い (富士見ファンタジア文庫 さ 2-1-10 黄昏色の詠使い 10)
- 細音 啓
- 富士見書房 2009-08-20
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ソフィア、詠と絆と涙を抱いて―黄昏色の詠使い〈9〉
……わたし信じちゃうよ? 本気にしちゃっても……いいの?
凱旋都市エンジュ、夜の競闘宮で繰り広げられるミクヴァ鱗片を巡る戦いは続いていた。シャオが目指す理想など関係なく、ただクルーエルを失いたくない、その想いだけを頼りにするネイトの前に、最大の選択が迫られる。クルーエルを想うネイト、ネイトを想うクルーエル、ふたりがふたりのために下す決断の時が迫る。
第2部完結編! ということで、ほとんどの謎が語られることになりましたね。
前巻でネタ晴らしのあらかたが完了していたおかげか、今回はそれを前提に、登場人物たちがどんな道を選ぶのか、その選択を迫られる展開になってますね。主人公たるネイトやクルーエルは当然として、これまでなかなかその真価を発揮してこなかったカインツの虹色名詠の本領がようやく発揮されましたね。
見せ場的には、そんなカインツとファウマのバトルが一番盛り上がりを感じましたね。戦いの合間に、それぞれの状況が挿話的に語られるので、じりじりと焦らされてるような感じがしてしまいましたが。カインツが大切にする虹色の名詠と、そんな彼に一縷の望みをかけていたファウマの、あるいは望まなかった対峙という、なんとも燃えるシチュエーションと、救いをもたらす優しい決着に、甘いと思いつつも拍手喝采でございます。
メインキャラの中では、挫折しっぱなしのエイダはアルヴィルの残酷な言葉を突きつけられて、果たしてこのまま心折れたままなのか? 同じように敗北を喫したレフィスと同様、雪辱の機会が訪れるような気がしますね。おあつらえ向きにラストダンジョンも登場したことですし。
そして、最終話へ向けても布石もばっちり。運命に引き裂かれたかのようなネイトとクルーエル。一反の定められた別れを強制され、それでもお互いを信じ続けるふたりの想いが奇跡を呼ぶわけですね。借り物だった夜色名詠から、自分だけの名詠を生み出すための大切な想いをいくつも受け取ったネイト。これまでのすべてを積み上げて、彼自身の詠をどのように紡ぎ上げてくのやら。がんばる少年の想いに幸あれ!
hReview by ゆーいち , 2009/03/29
- 黄昏色の詠使いIX ソフィア、詠と絆と涙を抱いて (富士見ファンタジア文庫)
- 細音 啓
- 富士見書房 2009-03-19
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百億の星にリリスは祈り―黄昏色の詠使い〈8〉
……ずっと怖かったの。わたしの気持ちがなんなのかって。
ミクヴァ鱗片を巡る争いの最中、ネイトはついにシャオと出会う。シャオは問う、
思わせぶりにこれまで断片的に語られてきた、この世界の秘密が一気に明かされていきます。前巻で、ミクヴァ鱗片を巡る、シャオ一派と、イ短調・ネイトらの対決の構図が示されて、いざ激突! かと思いきや、そこから延々と解説モードに入るのはさすがに微妙かとは思いましたが。
ということで、そんな設定解説編が前半の大半を占めているので、実際に物語が動くのは後半からという形になります。
大きな見せ場はやはりオシリスとファウマの対決ですかね。直接ミクヴァ鱗片を確保すべく競闘場に赴いた競闘場の覇者であるオシリスを待ち受けていたのは少女然としたファウマ。どちらも超絶的な実力者であることから、その戦いは苛烈を極めるインフレぶりですが、その決着は意外な形に。互いの認識していた勝利の形が違ったことによる、痛み分けみたいな結末でしたが、むしろこの戦いを彩ったのは、加勢することもなく、オシリスの戦いを見守り続けたシャンテの思いだったのかも知れませんね。オシリスとファウマによって、自らの在り様を良くも悪くも変えられてしまった彼女だからこその内面の描写が良かったですねえ。
他方で展開していたエイダやレフィスの戦いも、それなりに見せ場はありつつも勝負はおあずけ状態? 相手に一枚上を行かれてしまった形になってますが、これはもう相手が悪かったとしかいえないような……。内面が未成熟な少年や少女らしいあしらわれ方でしたしね。
そして、物語の、世界の中心にいるクルーエルはその場から動くこともできず、最後の最後で自分の気持ちをようやく自覚します。それは、シャオと話し、世界の真実を知ったネイトも同様で、シャオの望みが叶った結果もたらされる世界が、優しく穏やかであろうとも、すべてをなかったことにするという、どうしても認めることができない結果に立ち向かうことを選ぶわけで。
しかし、シャオは世界に生きる人間を愛する意志法則体と同様に、確信的に平和な未来を作るために、今の悲劇と犠牲を肯定して行動してるなあ。ある種の狂信的な行動に思えてしまいますが、やはり世界の根幹に在るものの影響なんでしょうかね。そういった意味では、やはり対極的な立ち位置のネイトとシャオの決着の形が気になりますね。
次がクライマックス、そして物語の一つの区切りがあと2話ってことは10巻で完結なんでしょうか? まだまだ続けられそうな話ですが、とりあえず、今回のエピソードの結末を描く、次のお話を楽しみに待ちたいです。
hReview by ゆーいち , 2009/01/03
- 黄昏色の詠使いVIII 百億の星にリリスは祈り (富士見ファンタジア文庫)
- 細音 啓
- 富士見書房 2008-12-20
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新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ―黄昏色の詠使い〈7〉
ゆめゆめ忘れるな。その時にお前の選んだ
凱旋都市エンジェ。そこで開かれる新種
そこでネイトはアーマに告げられる『お前はそこで〈
新章突入で大きく物語が動き始める雰囲気。というか、思いっきり良いところで続いてしまってますね。これから謎が明かされようかというところ、そして因縁めいた対決の行方もお預けです。
物語のこれからの加速のための助走でしょうか。ネイトとクルーエルの関係は、確実に変わっていって、お互いがお互いを思う気持ちに信頼に加えて「恋」という意味も与えられ始めているような感じですね。微妙に暴走気味なクルーエルが可愛い可愛い。ネイトも天然な感じでクルーエルへのフラグを立てまくってるし。ここで交わしたささやかや約束が、叶えられると良いんですが……。
世界の根幹に関わる秘密が少しずつ語られ始めました。名詠に関すること。新たな色の名詠、夜色、灰色、そして空白、それらの詠い手が集結し、そしてネイトはシャオとついに出会います。あるいは、これからがネイトにとってのもう一つの物語の始まりなのかも。ネイトの選択がクルーエルの、そしてクルーエルの選択がネイトの未来を左右する、そんな関係に至ったふたりに、シャオがどのように関わってくるのか、世界の深淵を知っているかのようなシャオの問いかけ。その答えが、未だ謎めいたままの名詠や真言に秘められた真実を明かしてくれるのでしょうか。
続きが待ち遠しいですね。
hReview by ゆーいち , 2008/08/20
- 黄昏色の詠使いVII 新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ (富士見ファンタジア文庫 さ 2-1-7 黄昏色の詠使い 7)
- 細音 啓
- 富士見書房 2008-08-20
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