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Kaguya〈4〉月のウサギの銀の箱舟
だから、ゆうひもがんばってください。みんなを許してあげてください。好きになってあげてください。誰かにやさしくされたいのなら、誰かにやさしくしてあげないとだめなんです。世界に愛されたいのなら、まずは自分が世界を愛してあげるんですよ。そうすれば、きっといつかわかってくれますから……。
ふたりの繋いだ手の間に生まれたアルテミスコードを研究するために、菜々子から“ずっと手を繋いでいる”ことを命じられた宗太とひなた。寝るときも食事のときも、お風呂のときも、といくらなんでも色々とマズくないですか? そして、そんな生活の最中、新しいアルテミスコードが突然変化を引き起こして……!?
前巻の事件で宗太とひなたの間に生まれたアルテミスコードの謎を解くために、無理矢理に四六時中手を繋がされることになったふたり。同居生活はそれなりに慣れてはいても、過剰なまでに密着した生活はお互い初めてで、嬉しいやら恥ずかしいやら。お互い、プライベートで他人には見られたくないところまで共有しなければならなくなったシチュエーションは、ハタから見ればなんてラブコメとも思いますが、宗太とひなたにとってはドキドキしっぱなしの蜜月のようで、くそう、なんだこの新婚カップルは、けしからん!
そうこうしているうちに、既成事実まで生まれてしまって、さあ大変。チャイルドコード、ゆうひと名付けられたふたりの愛の結晶(?)まで登場して、子どもに付きっきりになる男親に対するひなたの嫉妬炸裂っぷりもかわいいやら微笑ましいやら。今まで誰よりも宗太の近くにいたという自負が、彼女の今の居場所での拠り所になっていたふしもありますから、その領域を侵犯しようとするのが例え我が子でも心穏やかではない、なんてのは、成熟しきってない少女な彼女の内面の、新しい一面を見せてくれるようでもありましたね。
そして、急展開の中盤以降。人類とアルテミスコードの間に横たわっている深く広い溝が体現したかのような男・竹中伸三*1。人類と相容れない存在に対するものへの恐怖と敵意に凝り固まった彼の取る非道な行動は、これまた残酷に宗太たちを打ちのめして。味方だと思っていた黒田たち、大人の力に頼れない状況におかれても、たったひとりのゆうひを救うために戦うことを選ぶ子どもたち。誰かにとっての希望となるために傷つくこともいとわず、痛みを正しく伝えるために、間違いを間違ったままにさせないために、幼いゆうひに相対する宗太とひなたの願いこそが、彼女を決定的に人間たらしめる契機になったんじゃないでしょうか。
けれど、世界はまだまだ優しくはなってくれないようで。アルテミスコードを追う側から一転、追われる側になってしまった宗太たち。仇敵ともいえる銀の箱舟へと至ってしまった彼らは、これからさらに過酷な真実というものに晒されそう。ひとの心を動かすものはひとの心であるという傍観者・杏奈のその言葉が、真に世界へ届くのか、宗太たちにとっての幸福を、世界が与えてくれるのか、物語はいよいよ佳境のようですね。
hReview by ゆーいち , 2009/05/19
- Kaguya〈4〉月のウサギの銀の箱舟 (電撃文庫)
- 鴨志田 一
- アスキーメディアワークス 2009-05-10
- Amazon | bk1
- あんまり関係ないけど、竹中のイメージが無常矜侍にダブってしまって困る……。 [↩]
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Kaguya〈3〉月のウサギの銀の箱舟
可能性を信じて抗うか、現実を受け入れて諦めるか。それは君次第だ。
晴れて恋人同士となった宗太とひなた。お互いに初めての“お付き合い”に嬉しくもあり戸惑いもあり。どうして良いか分からず、少しだけぎくしゃくするふたりの間の空気。そんな空気を吹き飛ばすかのように、体育祭実行委員の打ち上げ旅行の計画が持ち上がり、旅行の準備と初めてのお泊まり旅行に期待も高まっていって……。
くああ、こっ恥ずかしい~~!!
そりゃ、黒田さんでなくとも、この初々しいふたりの姿を見たら、いろいろ言いたくなるだろうなあ。と、そんな嬉し恥ずかし恋人生活のスタートなお話です。
けれど、やっぱり、かぐや姫であるひなたに対しては、接触を持とうとする勢力が消えることはなくて、今回登場した人物は、宗太たちの知らない真相にかなり近い場所にいて、敵対するわけでもなく、けれど手助けするわけでもない傍観者的立場で、ひなたの行く末を見届けようとします。
この辺、ムーンチャイルドとアルテミスコードにまつわる秘密の、まだ語られていない部分が関連しているようだけれど、その守人を任じているような上杉杏奈が何を守ろうとしているのか、そして、そもそもアルテミスコードとは何なのか、そんな物語の根幹に宗太たちが近づいているのも感じられますね。
今回のラストはまたなんとも夢のあるような、あるいは口をあんぐりと開けるような、突飛な終わり方でしたが、エウレカセブンの最終回とか微妙に思い出しましたね。全人類に自分の告白を晒されてしまった宗太は、次巻、強く生きていけるのか?(笑)
それはともかく、これまでは終盤、宗太の身近の人物が事件の黒幕だったりして、手痛い裏切りや、心を穿つような痛みを伴う別れを宗太にぶつけてくるのですが、今回は次の物語への繋ぎとなるようなお話だったのでしょうか? 初々しい恋の始まりと、どきどきするようなふたりだけの時間、そして、より強く結びついたふたりの絆というものを、今回のエピソードで描いておいて、その先に大きな試練が用意されているような気がしますね。
アルテミスコードを持つ人間として、もしかしたらはじめての行為を成し遂げたかもしれない宗太とひなたですが、その結果が、ひなたのかぐや姫としての運命に抗う武器となりうるのかどうか、それがこれからの展開の鍵となりそうですね。
……でも、やっぱり序盤のダダ甘な蜜月生活が良かったなあ。ひたすらいちゃいちゃしていてくれても、私は一向に構いませんよ? あと、今回の表紙はいろいろな意味で危険でしたね。帯が付いてればはいてないように見えるし、帯を外せば、ほら、なんか見えますよ? これは買うのに勇気が要りますね!
hReview by ゆーいち , 2009/01/13
- Kaguya〈3〉月のウサギの銀の箱舟 (電撃文庫)
- 鴨志田 一
- アスキーメディアワークス 2009-01-07
- Amazon | bk1
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Kaguya〈2〉―月のウサギの銀の箱舟
わたしはこう思うんです。きっと世界にやさしくなれた分だけ、世界もわたしにやさしくしてくれるんだって。
「宗太さんのこと、好きになっちゃったみたいです!」そう告白したひなたに対し、宗太はその場で答えを返すことができなかった。それから始まるひなたの熱烈なアタックに、ひとつ屋根の下で暮らす宗太は気が気ではなくて……。そして、先の執行人事件の記憶も薄れぬ間に、新たな事件が発生する。「銀の箱舟」を名乗る組織の手によって、祭りの夜に爆音を轟かせ、始まりの狼煙として。
宗太への好意を隠すことなく、世間知らずであるがゆえの無垢さを武器に、京先輩の入れ知恵を疑いもなくこなすひなたが可愛いったらもう。宗太もまんざらではないくせに、その面倒な性格と、好きだと思っている里見千歳への妙な遠慮から、そんなひなたの告白に答えることもせず引き延ばして……。ああ、なんで、こう、主人公たちは煮え切らないのか。この場合、据え膳ですよっ! スク水でお背中お流ししますですよ!? 何この嬉しいシチュエーション、いただいちゃえよ!!
宗太の年不相応な冷静さと達観めいた考え方は、こと、事件に立ち向かうときには大きな武器になるけれど、自分の感情すらも分析しようとして、色恋沙汰にはまったく向いてないですね。そのおかげで、先輩にからかわれるわ、千歳からの好意を棒に振るわ、ひなたを不安にさせるわと、朴念仁スキルフル発揮ですが。
そして、ひなたの圧倒的な力の秘密がこれからの事件には大きく関わってくると。この辺は予想通りというか、物語の収束地点が見えてきた感じですね。かぐや姫と呼ばれる、ひなたのような特殊なムーンチャイルドの運命は、ご多分に漏れず悲惨なもので、そもそもムーンチャイルドであること自体が、世界の中で生き辛くさせる大きな要因であることに、どうやって立ち向かっていくのかというのがこれから描かれていきそう。
今回の事件の結末も、首謀者の登場から大きな転換と、これまた残酷な事実の明かされを伴ったものでしたが、こんな絶望を抱えて子どもたちが生きている世界を、大人たちはどう見ているのか、その辺の葛藤もちらりと語られましたが、歪んでいる世界で幸せを掴むことの難しさは痛切に感じますね。
キーマンとなりそうな人物も登場し、ひなたの運命はこれから大きく揺さぶられていきそう。宗太と通じた思いが、彼女の支えとなり、未来を掴む力に繋がることを祈りたいですね。
hReview by ゆーいち , 2008/08/12
- Kaguya 2―月のウサギの銀の箱舟 (2) (電撃文庫 か 14-5)
- 鴨志田 一
- アスキー・メディアワークス 2008-08-10
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Kaguya―月のウサギの銀の箱舟
- 2008-05-29 (木)
- ライトノベル
立花ひなたはいつもお前を見てた。ちゃんとお前を見ていた。なのに、お前は何をやってたんだ。
「近々、何か大きな事件が起きるね」生徒会長も務める先輩の京にそう言われた帰り、宗太は自分の住むマンションの前でシーツに身をくるんだ少女と出会った。その格好と、何より、彼女の目が不自由なことに気付き、学校への道を尋ねる彼女を、自らの家に招く宗太。ひなたと名乗った少女と、他人には秘密にしたままの能力を持つ宗太の共同生活が、その時から始まった。
ほんわかしたノリかと思ったらそんなことはない。このギャップは狙ってるのな狙っていないのか。途中から、それまでの印象を覆すような怒濤の展開でどうしようかと。この表紙から、まさかそんな方向の物語になるとは想像できようか。いや、できまい。ということで、意表を突かれました。
ムーンチャイルドと呼ばれる特殊な能力を宿した少年たち。かつて、月の欠片が地に落ちた事件を境に、そんな超常の力を持った人々は、けれどその存在を肯定されず、社会的に迫害を受ける世界。そして、その力を悪用する人間を、毒をもって毒を制すがごとく、能力者によって捕らえる公安特課。主人公の宗太らは、そこの所属し、人知れずムーンチャイルドによる事件を解決していた最中、その犯人たちを非情の手段で断じる「執行人」が現れて……、というお話。
結構容赦なく人死にが出たり、宗太たちと親しく会話した子が大変なことになったり、そして事件の真相がこれまたお話の都合なのかどうなのかはともかく痛いですね。強大な力を持ちながら、目の見えないというハンデを持つひなたと、自らの能力で文字通りひなたの「目」となることのできる宗太。上の都合で半ば無理矢理に始めさせられた共同生活の中で、少しずつ距離を縮めていきつつも、決定的な部分で踏み込めない宗太のへたれさが光ります。天罰。
一生懸命に手に入れたささやかな生活を守ろうとするひなたと、まさに対照的で、この事件を通してようやく真正面から彼女を見ることのできた宗太ですが、宗太が想いを寄せる千歳嬢とひなたとの、なんとも微妙な三角関係に発展していきそうですね。次巻では思い切りラブってコメってほしいですよ。
hReview by ゆーいち , 2008/05/29
- Kaguya―月のウサギの銀の箱舟 (電撃文庫 か 14-4)
- 鴨志田 一
- アスキー・メディアワークス 2008-04
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