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幻想症候群

stars 時間が進むから生きていることができます。生きているから死ぬんです。私は死ぬまで、生きていたいんです。

「幻想症候群」という原因不明の病がある。願望や恐れが現実となる現象。原因も理由も分からず、ただ、発症した人間は高い確率で死を定められる。幻想に浸食される現実、定められた死へと向かって生きていく人びと。そんな世界を描いた短編連作集。

電撃で出てた『二四〇九階の彼女』と同様に短編で構成された作品。少しずつ世界が広がっていって、最後の章ではかなり壮大なオチが付いていますが、その中で語られる物語というのは、私とあなた的なごくごく身近なもので、だからこそ、この病に囚われてしまったひとの心の機微に琴線を揺さぶられたりするわけですが。

そんな感じで、雰囲気のある作品ですね。ちょうど夏を舞台にしているお話が多かったので季節的にも良い感じ。第1章『遥か遠くの夏』の儚さとか、第3章『夏休みの終わり』の切なさから終章『1000年の森』への繋がりとか、あと、第2章『無限回帰エンドロール』は異色だけどホラーだし。

短編の積み重ねで、この世界の美しさを見せてくれましたね。なんか終盤だともう病気の設定とかうっちゃられてる気がしましたが。静かな雰囲気の作品でした。

hReview by ゆーいち , 2008/07/26

幻想症候群
幻想症候群 (一迅社文庫 に 2-1)
西村 悠
一迅社 2008-07-19

二四〇九階の彼女〈2〉

二四〇九階の彼女 2 (2)読了。

前巻と同様、塔の階ごとに異なるさまざまな「幸せ」の定義に支配される世界。悲劇的な結末を迎える別れもあれば、運命的な出会いもあり。主人公・サドリと住人たちの出会いと交流の果てに残されたものの多くは悲しみであったりするのかもしれないけれど、希望の芽を残すことができたこともあったりと、様々。前巻に比べると、切ない展開には耐性が付いたのか強烈なエピソードはなくとも、パートナーとなるカエルとサドリの出会いを描いたエピソード「一二四四階の競争」は珠玉。一人と一匹の奇妙な信頼関係は、その実かなり根深い部分でしっかりと築かれていると感じられた短編。これを読むと、カエルの辛辣な発言もなんだか多少愛嬌が出てきたり。前巻を再読するのも良いかも。

しかし、まだ続くと思って読んでいたら、割とあっさり目的地に達したような感じでやや肩すかし。この部分はもう少し盛り上げて欲しかったかも。
そもそも塔の存在の意味や、外界の状況、塔を出たサドリらの今後など、描き切られていない部分もまだあるので、出来ればその辺も明らかにしてほしいですね。
そして、表紙が壮大なネタバレだったと最後に気付く。いや、この表紙はスゴい好きなんだけど。

二四〇九階の彼女

二四〇九階の彼女

読了。

いろいろな世界を旅をするという点で『キノの旅』に似てるけれど、主人公の目的がはっきりとしていて、終着点が遠く見えなくても決まっているというのが異なるのかな。や、『キノの旅』未読なんですが(^^;

閉じられた神さまの箱庭。神の代理人のアントロポシュカによって管理される、さまざまな「幸せ」を内包した世界。その世界に住まわない主人公から見た「幸せ」の歪さと、その世界を去る間際に見る、【鍵】となった人物の結末が、とても切ないものになっていますね。

いつかどこかで理想と思える世界が見つかる可能性もゼロではないのですが、その世界とはもしかしたら主人公自身が捨ててしまった世界のことなのかなぁとか終章を読むと思ってしまいました。結局その世界で生まれた人間は、その世界で朽ちていくのが小さいけれど確かな幸せで、けれど、それを捨てて求めた外の世界は「希望」の象徴なんだろうなとぼんやりと妄想。

いつか、辿り着けたとしたら、そこが絶望で終わるような結末でないことを望みます。この話続くのかなぁ?

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