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ムシウタbug 7th.夢高まる鳴動
想像してみて。誰よりも強いあなたたちが戦うんじゃなくて、手を取り合うことがあれば……特環とかそんなもの、ちっぽけだと思わない?
亜梨子の身体を蝕んでいく摩理の“虫”銀色のモルフォルチョウ。残された時間が少ないことを悟りながらも、亜梨子は一号指定の虫憑きたちを一堂に会させることに成功する。対立し、戦うことしかできなかった“かっこう”・リナ・ハルキヨたち。亜梨子の願いは三人の手を繋がせることができるのか……。
過去の物語を紡ぐ『ムシウタbug』もいよいよ終局へ向けて加速が始まった印象。本編においてその存在感を失くしてしまっている亜梨子が、過去において“かっこう”やリナ、ハルキヨたちと何を語り、何を目指したのか。このシリーズの最後で語られる物語こそが、本編において変わってしまった彼らの原因となっているのでしょうか。
そして、亜梨子と摩理の求める答えはどうなるのか。生きたいという夢を残しながらも、親友を思い続けている摩理の心と、それを知ってしまった亜梨子の心。提示された答えはふたつ。あるいは別の選択でもって、新しい答えに至ることができるのか。
書き下ろし中編「夢抗う語り手」にて示された、摩理と“先生”のエピソードを見ると、摩理の願いも純粋で儚く切実なもので、そしてイレギュラーによって生まれてしまった彼女だからこそ、ある種の不幸と、また別の未来を手にする可能性を併せ持ってしまったんですかね。
物語の収束点が見えてきました。ゴールはあと少し。答えまであと少し。
hReview by ゆーいち , 2008/06/09
- ムシウタbug 7th.夢高まる鳴動 (角川スニーカー文庫 163-57)
- 岩井 恭平
- 角川グループパブリッシング 2008-06-01
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ムシウタbug 6th.夢恋する咎人
ハルキヨメインの書き下ろしストーリーも収録 って、この表紙誰?
本編とのクロスオーバー具合が良い感じに増してきた過去編『ムシウタbug.』。先の『ムシウタ09』でも活躍した綾瀬川七那が再登場したりとここ最近の巻のリンクぶりはスゴいですね。
ストーリーも佳境のさしかかっている感じ。その存在を疑われる今は亡き“ハンター”花城摩理と、彼女の真意が掴めず五里霧中な亜梨子。摩理の足跡を辿り、彼女が探していた“三匹目”を探す過程で、ハルキヨとの接触を決意し、彼を追うのが主な展開。それぞれの短編ごとに、様々なタイプの虫憑きが登場し、“不死”の虫憑き一玖皇嵩も大きく関わってきます。虫憑きを憎悪する彼が、特環の本部長である以上、虫憑きに対する非道な対応もむべなるかな。自身もその憎悪の対象に含めていそうな彼と、虫憑きを好きだと声高に叫ぶ亜梨子の対比が本巻の名シーンのひとつになるかと。
そして、書き下ろしのハルキヨの物語。生い立ちから虫憑きになるまでの過程が描かれ、彼の特異なまでの強運さと、生き残ったゆえに獲得した強さ。虫憑きとなることでどうしようもなく強くなってしまった彼の絶望と、彼に比肩しうる強さを持っていると思われた摩理への恋慕にも似た焦がれる想い。それが叶えられないと知った、その先で、ハルキヨが亜梨子に何を望むのか、亜梨子がハルキヨに何を望むのか。屋上でようやく彼に辿り着いた亜梨子は、そこで何を知り何を得て、あるいは、何をなくすのか。
決められた結末に向かって加速していく物語。けれど、その最後はまだ誰も知らず、失われたままのミッシングリンクが明かされたとき、二つの物語はどのような形に姿を変えるのか?
ところで、表紙の子、ねねさんですか。From 岩井恭平 消閑の挑戦者・ムシウタスレ @ ウィキ。ここで彼女を出すという意味は!? キャラが増えすぎてイラストと対応し切れてません。もう、読本が必要なレベルじゃないかと(笑)
hReview by ゆーいち , 2008/01/12
- ムシウタbug 6th. (6) (角川スニーカー文庫 163-56)
- 岩井 恭平
- 角川書店 2008-01-01
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ムシウタ 00.夢の始まり
大助、詩歌、利菜 それぞれの夢の始まりの物語
初めての実戦任務に参加した“かっこう”は、“ふゆほたる”と出会う。物語の始まりを告げるエピソード。それは白い雪に染め上げられた中の、ほんの短い邂逅の物語。
そして、死してなお、多くの人の心の中に息づく、利菜という少女が、遠く叶わぬ夢を抱くきっかけとなった生誕の物語。
“虫”という存在が、本編ほどに認知されていない過去。身近な人間が、自分と同じものから、虫憑きという異形へと変貌してしまうことで生まれる、強烈な拒絶と縮まることのない隔絶。ささやかな夢を抱きつつも、それを叶えることはおろか、持ち続けることすら否定されてしまうかのような、弾圧の強さが描かれた2編のエピソードでした。
『夢の始まり』では、“かっこう”と“ふゆほたる”の最初の出会いと別れ。ほんのひととき、心を通わせあったかのような幼い二人の夢の交換。野心に燃える土師と大助の利用し利用される利害関係に基づいたかのような奇妙な友情。そして、今は“むしばね”に属している“なみえ”に降りかかった理不尽な出来事。暗い。暗すぎる。けれども、まだ、そこには確かに未来への希望が感じられているのです。本編では誰も彼も傷付いて満身創痍なのがなおのこと痛々しいのですが。
そして、『夢の黄昏』では“むしばね”のカリスマとしてチームをまとめていた利菜の始まりの物語。特殊な家庭に生まれ、両親からの歪な期待と、薄幸な愛情に育てられた幼い人格が、どのように“むしばね”結成へと傾いていったかの片鱗が語られます。幼くして、人心を束ね、また、誰かを救わずにはいられないという難儀な性格ゆえに、彼女に初めて救われた三人の虫憑きとの奇妙な関係も、また彼女の数奇な運命に綴られる1つのエピソードだったということでしょうか。仄かに抱いていた、幸せになりたいという夢すら心の奥底に封じ込め、別の夢で蓋をした彼女の顛末をすでに知っているだけに、しんみりとせざるを得ない過去談でしたね。
9巻に登場した秘書は、多分彼女なんだろうなあ。こういう複雑に絡み合った人間関係に、後になって気付かされるというのも、奥深さを感じますね。
hReview by ゆーいち , 2007/10/24
- ムシウタ 00.夢の始まり (角川スニーカー文庫 163-30)
- 岩井 恭平
- 角川書店 2007-08-31
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ムシウタ〈09〉 夢贖う魔法使い
始まりの虫憑き・αを巡る戦い 全ては金で決まるのか?
虫憑きの力をビジネスに利用しようとする赤瀬川七那は、“むしばね”のリーダーとなった詩歌の元を訪れる。現スポンサーである宗像の失踪と、かつて発生した虫憑き発生の転機となった“エンクロージャー”“バブル”“パラダイムシフト”という隠匿された経済現象。そしてそれらの最奥に潜む“始原の虫憑き”αの存在を巡り、七那は途方もない金額が舞うオークションに臨む。
今回は“むしばね”サイドのお話。リーダーとして心許ない詩歌を必死にサポートする周囲の人間と、そこに新たな変革をもたらした七那により、ようやく新生したといえる状態になったのではないでしょうか。天然で空気読めない詩歌も、リーダーらしい自覚が少しは芽生え、戦うための覚悟らしいものも決め、新しい理想の実現に向けて邁進していくのか。
物語の中核にあった、始まりの三匹の、さらに裏にあるとされる、“始原の虫憑き”αを巡っての争いは、これまでの虫憑き同士の戦いから、顔の見えない相手とのオークションによるマネーゲーム。他人を信じず、金にのみ愛された七那の、頂点を極め、けれどそれゆえ他人を信じられなかったことによる転落の軌跡の物語。二転三転したオークションの結末と、それに絡む人々の“金”を巡る信念の違い、知謀知略を尽くした心理戦と、これまでにない種類の熱い戦いを感じました。
大助も前巻でかなりボロボロになりつつも、戦線復帰した模様。全力を出せない、最強の伝説のみが一人歩きをしつつある孤独な虫憑きである彼と、詩歌の(一方的な)再会はなんとも切ない感じです。それぞれが信じて歩む道が、それほど遠くない未来に交わるとき、信念の実現のために戦うということを決意したふたりがどのように相対するのか、一筋縄でもいかなさそうな雰囲気ですね。
ただ、外伝のbugとのリンクがどんどん密接になってきているので、本編だけを追っている人は厳しそう。結局リリースされた順に読んで行けっていうことなのかなー。
あと、登場人物の関係がどんどんワケわからなくなっていくので、やはり前巻は手元に置いておいて、さらっと読み直してから読まないと結構辛いですね。
物語が大きな音を立てて動き始めたことを感じさせるエピローグ。詩歌とαの出会いが何を生み、世界を変えていくのかが、とても楽しみです。
hReview by ゆーいち , 2007/10/24
- ムシウタ9(9) 夢贖う魔法使い
- 岩井 恭平
- 角川書店 2007-07-01
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ムシウタ〈08〉 夢時めく刻印
うあああああ、作者の仕掛けに見事に引っかかった。そりゃもう気持ちいいくらいに。
でも、その分物語の構造がやや難解になってた印象がありますね。違和感の正体を確かめるために、何度も前半を読み返したり。
これまでのシリーズに登場したキャラや、『ムシウタ bug』のとあるエピソードが大きく本編に影響していたりと、いよいよこの作品もクライマックスなんだなあと実感させられます。キャラが増えすぎてるのと、個性的な名前が多いのとで、久方ぶりの登場をした人物がどんな役回りだったのか思い出せませんでしたがorz
そんなわけで、大助が主人公らしく全編出ずっぱり。厳密にはそうじゃないかもしれないけれど、本巻はまさに大助という人物の今と未来を語るための重要な位置づけとなりそう。虫憑きとしての運命は、誰も彼も例外なくその夢を食らいつくし、不幸な結末に導こうとするけれど、それに抗うべく前に進む人たちも確かにいる。誰かに会いたいという純粋な思いと願いが、満身創痍の身体を突き動かし、限界を超えても膝を着かない。信念とか使命感とか、そんな大仰なことでもなく、そこにあるのは少年らしい、あるいは少女らしい純粋な気持ちだけだったり。
今回も、新たに登場した虫憑きの少女・萌萌は悲劇的な結末を迎えたかに見えるけれど、悲壮感とともに想いを遂げたという満足感も感じられて、素直に美しい最後だったと思えたり。それでも避けられない別れが現実としてあるというのはやはり悲劇なのでしょうけれど。
虫憑きとして、人間として、大助が自分自身でいられる時間はどんどん削られていってるようで。詩歌との再会をただひたすらに望む彼が、「むしばね」の中枢にいる彼女にどうやって近づくのかとか、特環の追っ手の動向とか、前途多難。
そして、ついに国外からの日本への干渉の可能性すら示唆されて、この先一体どうなってしまうのやら。過去と現在の物語が、一つの着地点に向かって収束しているように感じられて、非常にわくわくしてきます。
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