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マテリアルゴースト〈5〉

stars 祝 完結! 帰宅部面々の掛け合いはもっと見ていたかったなあ

4巻の衝撃的な引きからどんな風に完結させるか期待半分不安半分だった本作。

蛍の喪失という誰にとってもかつてないほどの大きな痛手を誰もが引きずり、それぞれがそれぞれの方法で彼を悼み、代償行為や逃避、気丈な振る舞いをする中、それでも世界は何事もなかったかのように流れていって。

帰宅部の面々のそんな痛切な内心の描写と、神無の家の深螺や新キャラの雨森、鏡花の奮闘ぶりを交互に描きつつ真相に至る展開。上手いこと時系列を混乱させられてまたしてもしてやられた感ががが。
予定調和的なシーンではありましたが、自ら閉じこもっていた殻を破った先輩のしおらしさは破壊力が高し。これまでの影の薄さを、前巻である『マテリアルゴースト 0』と本巻で一気に挽回した感じ。いいですな。

そんなこんなで、それまでの重みを吹き飛ばす中盤の盛り上がりは非常に気持ちが良くて、やはり作者の真骨頂がこういった軽快なツッコミ溢れる会話で発揮されているなあと、楽しみながら読み進めていけます。死にたがりから解放された蛍のプレイボーイっぷりったらもうッ!! これなんてエロゲ?

なんとも楽しくてにぎやかで、どこまでもいつまでも続いてしまえばいいと思えてしまう楽園のような空間。
そこから外れることを選んだのは、その時間と空間を誰よりも愛おしんでいたはずの蛍とユウで……。

ラスボスたるタナトスとの決戦は、まさに決死の思いで臨むはずのものなのに、蓋を開けてみたら正直拍子抜け。どうも、ボス格のキャラの脅威とか強大さとか、危機感とか、そういったものが希薄であっさり片付いたなあと印象。その実、タナトスの目的が……というのは意外といえば意外ですが、正直この終盤の展開は惜しいなあと。すでに中盤で最高潮に至ってしまったが故に、本来のクライマックスシーンが消化試合風に感じてしまいました。

逆に、エピローグは帰宅部の面々の成長とかを描き過ぎた時間の確かな実感を持って、終わってしまうという寂しさを静かに湛えつつ綺麗に閉幕したなという感じ。誰もが臨むような、大団円的なハッピーエンドの形ではないけれど、かつての死にたがりだった式見蛍という人間が、様々な出会いとか、別れとかを経た先に辿り着いた終着点としては、この上なく暖かで眩しい場所だったのではないかなと。彼の物語としての本作の結末は、寂しいけれども、決して悲しいものではなかったと思えます。

しかし、惜しい。この気持ちいい空気にもう少し触れていたいという思いもまた事実。願わくば、語られなかった時間の補完を、短編集か何かの形で希望したいところ。あとがきとか作者ブログを見ていると、本作絡みでもう少し何かありそう? 期待しつつも、無事に完結されたこの作品におめでとうとありがとうを。

hReview by ゆーいち , 2007/05/24

マテリアルゴースト〈5〉
マテリアルゴースト 5 (5)
葵 せきな
富士見書房 2007-05

マテリアルゴースト 0

マテリアルゴースト 0読了。

雑誌掲載の短編3編+書き下ろしの短編3編の計6編を収録。帰宅部メンバーと蛍の出会いのエピソードが描かれているのが嬉しい短編集です。

雑誌掲載の短編については、執筆の時期が如実に感じられますね。正直、一番古いであろう「ピリオドに至る日」の感想としては、それこそ1巻を読んだときのものとほとんど同じ。蛍の性格がどうにも合わないのですよねえ。それ以降のエピソードについてはそんな違和感がなくなってるので、やはり第一印象の問題だったのだろうけれど。私としては3巻から大化けしてかなり楽しいシリーズになったので、結果オーライなのですが。

後半の書き下ろし短編については、作者が好き勝手にかけているのか非常に楽しい。鈴音との出会いはややシリアスに、先輩との出会いは、その仄かな感情の芽生えに暖かな感慨を抱いたり、深螺さんの恩返しはやりすぎなくらいに萌えさせられて(笑) 個人的には先輩イチオシなので、「(前略)第一話」と「夢見る少女じゃ、結構いられる」の彼女の活躍ぶりは、本編の冷遇気味さから一転、美味しくいただきました。や、こんかいは挿絵もツボを突きまくりで大変よろしい。

そんなこんなで残すところは最終巻のみ。本編はシリアス一直線だけど、こういうラブでコメな短編集は、マテゴを題材に、もう1回くらい出して欲しいなあ。

マテリアルゴースト〈4〉

マテリアルゴースト 4 (4)読了。

おお、なんかかなり面白かった。事件が起きない日常の、微妙な歪みから崩壊を、主人公の内面の適度な描写を通して描いてます。ヒロイン視点の場面転換は一人称タイプではどうにも視点が飛ぶ感じがして苦手なのですが、構成的には場面転換として使われているので、アイキャッチ的な挿話として捉えられます。むしろ、次回予告的?

前巻の結末で、前向きに生きようとした蛍の、今度は生きようと思ったときに感じる様々な生きづらさに苦しむ内面の吐露は青臭いなと思いつつも、そう感じられるようになった彼の変化の方が好ましく思えたり。そして、訪れたはずの「日常」に投げ込まれた小さな違和から生じる不協和音は、これまでのような直接的な危機ではない、暗喩に近い終焉を予感させられると思ったら、ラストがとんでもないし。

せっかくユウと想いを交わしたというのにこの仕打ち。本当に鬱な展開が好きですね! だが、それがいい。

ラスト2頁のテキストは、淡々と客観的に語られるからこそ伝わる痛みがあるという。遺された側の表現がないだけに、想像で補完するとなおのこと痛苦を感じるこの生殺し感。よりによって次巻が短編集で、最終巻はその後というのがなんともずるい。ただ刊行の方法としては、構成的にも正しいと思うので仕方ないけれど、いっそのこと0巻と最終巻を同時に出してくれれば良かったのになぁ……。

しかし、記号化されたキャラががんがん出てくるかと思ったら、何気にメタな展開を好んでやってるあたり、侮れないシリーズになってしまったなぁ。1巻はかなり微妙だったんだけど(^^;

毎度仕込まれてる叙述トリック、作者ブログ見ると分かりづらいという意見があったようですが、アレって実は(ネタバレにつきコメントアウト)なんだろうなぁ。

蛍が世界の敵だとすれば、今回登場したヘルメスの役割っていったい何なのか? 蛍の存在を隠れ蓑にして、世界の目を欺いているとか? このどうしようもない最悪からどのようにオチを付けるのか、さてさて、面白くなってきましたよ。

マテリアルゴースト〈3〉

マテリアルゴースト 3読了。

ああっ、2巻を読んだときの予想が微妙に当たってる!?

てなわけで、死にたがり主人公、式見蛍の周りには今日もフラグが立ちまくりの女の子揃い。鈴音の姉の天才クールな巫女さん深螺嬢や、実妹・傘も加わって大変なことに。ってこれだけ聞くとハーレムライフな展開を予感しながらも、中盤以降はぐんぐん重くなっていってるしー。

すでに蛍自身で対処できる範囲を超えているような気がしますが、今回の騒動を通して、無気力から少しだけれど生への渇望を得るというところまで前向きになってきたあたりが成長といってもいいのかもしれません。

ほのぼのコメディサイドから、シリアスサイドへの急転直下さは今回かなり見事だったかな。傘の件についてはやられた感があったし、その後の蛍が追いつめられていく過程も、世界への絶望も、辛いやら切ないやら。だからこそ、彼の決断に拍手喝采なのですね。まぁ、深螺の冷酷になりきれない部分や、傘へのフォローなど、どん底にまで落としきれない良心が見えたりしますが、実はこれも次巻以降待つ、さらなる泥沼への伏線だとしたら平伏しますよ。

エピローグでラスボスっぽいのが出てきましたが、どう考えても最強・最凶・最狂なこの人物を相手にどんな足掻きができるのやら。そして、一気に株を落とされた深螺、哀れ。

しかし、物語の流れはかなり楽しくなってきたけれど、言葉の選択のセンスが私の趣味と合わないなぁ。デフォルトとか。文意は合ってるけど、この会話で使うかー、とか思ってしまった。

マテリアルゴースト〈2〉

マテリアルゴースト2読了。

キャラの掛け合いなどは非常に軽快で、前巻に比べてずいぶんと好みの雰囲気になっているのですが、やはり主人公の在りようの歪さが際だって、違和感が消えませんね。

作中の冒頭で、自らの死への指向性を生理的なものと語らせていましたが、それは第1巻でも仄めかしておいてくれれば、あるいは見方も変わってきたのかなという気もします。自分の命を軽視しているようで、周囲の人間への気遣いを見せたり、時々やたらとひどいことをいったりと、主人公・蛍の行動に一貫性が見えないのが辛いなぁ。いや、普通に友達思いで良いヤツだといういうのは、周囲に集う人たちの言動で容易に理解できるのですが、意図的なのかそうでないのか、蛍がその好意の多くを重荷に感じているように思えるのが非常に理不尽で。

今回の事件の関わりは、次回以降に描かれるであろう、さらに大きくやっかいな事件への繋ぎ的な位置づけで、神無姉曰く「数年来の厄介」さを感じさせない小物感あふれる描写ばかりだったのは、こけおどしなのかな。むしろ、前巻の「中に居る」のが脅威さは顕れていた印象。今後もこのレベルの霊が出てきたりして、バーゲンセール化するのは避けてもらいたいところですね。

むしろ、蛍の能力と、死への指向性の因果関係と、彼の存在によって引き起こされうる災厄を巡っての展開になるのかな。

いずれの方向へ進むにしても、重苦しいお話になりそうですが、個人的にはダークな方向へ走りすぎず、適度に肩の力を抜けるようなほのぼのシーンも入れてくれたバランスのよいストーリーテリングを期待したいですね。どうにも各キャラまんべんなく活躍させようとして、かえって散漫になってる感もあるので、ユウならユウ、鈴音なら鈴音とフラグをきっちり立ててください。先輩? 彼女は、今回くらいの意地悪さと、肝心なところで役に立たないへっぽこさがよいので、そのままでいてください。

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