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上月雨音 Tag Archive
SHI-NO-シノ-空色の未来図
問題は誰が嘘を吐いているかじゃない。誰が、どれだけの嘘を吐いているか、である。
実家へと帰省した僕は年賀状の中に忘れもしない名前を見つけた。大薙詩葉。高校時代の僕の彼女、そして、今はもういない彼女からの年賀状を。帰省前に届けられた詩葉からの手紙には「お願いを聞いてください」そんな言葉が記されていて。そして、僕は彼女の死と向き合うために、彼女との思い出に区切りを付けるために、故郷に戻ってきていた。
僕のスペックがいきなり跳ね上がった感じがしますが、これは主人公補正? あるいは、志乃がいなければ意外にできる男なのかも?
そんなこんなで、僕の過去の一端が明かされるお話。彼女持ちだったとは意外ではありますが、しかし、大学生活初めて志乃との関わりの中で巻き込まれた事件も半端でないですが、高校時代もバカにならない波乱の生活を送っていたんじゃないのかと。
詩葉という少女の存在は、作中で語られているように、すでに常人の枠をはみ出て、ずいぶんと万能感のある存在に昇華されているように思います。というか、これは作者の代弁的に受け取ってしまうなあ、未来を確定させる言葉、希望を捨てないための願いの言葉、彼女の予言が事実となるのならば、それは救いのもたらしを意味するのですが、しかし、これから僕と志乃が向き合う、ふたりの出会いの物語はすでに起こってしまった出来事。そこから、ふたりがどう歩んでいくのか、また別の答えを見いだすことができるのでしょうかね?
僕が故郷で詩葉と決別するためにあらゆるものと戦った事実は、彼にとってまたしても苦い記憶となるのかもしれませんね。けれど、小さな幸せを願い、それを叶えるために皆が想いをひとつにし、実現させた、それだけは変えられない事実としてまた思い出に変わるはず。
さてさて、僕と志乃、ふたりが歩んでいく未来は果たして何色で描かれるのか。次は激動のエピソードが控えていますね。
hReview by ゆーいち , 2008/08/02
- SHI-NO-シノ-空色の未来図 (富士見ミステリー文庫 76-8)
- 上月 雨音
- 富士見書房 2008-07-19
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SHI-NO ─夢の最果て─
夢の最果てはね、本人がそれを自覚した瞬間に現れる
志乃の母親の随伴して訪れたパーティ。場違いな雰囲気に恐縮する僕の前に現れたのは鴻池キララ先輩と、厳つい警察官の冨樫さん。先日発見された身元不明の遺体の傍に、このパーティの招待状があったため、捜査に訪れたとのことだけれど。そして、夜も更け、そろそろ帰宅しようとした僕たちは、新たな殺人事件の現場を目撃する。死亡推定時刻と、監視カメラの映像から、犯人は間違いなくとある人物に絞られるけれど、決定的な証拠はなくて……。
謎解きというよりは、志乃の独特の容赦なさで犯人を追いつめ、破滅させていく過程がぞくりとさせられたエピソード。堅い殻で自らを覆って、本当の姿を隠していた犯人を、非道い方法で止めを刺してくれました。でも、これ、結局犯人は自白もしてないし、万事解決ってワケじゃないですよね。
相変わらず、ミステリ要素よりは志乃と僕の関係の変遷の方がメインのお話で、僕に対する志乃の感情が、少しずつ波を持ってきているような感じ。僕のために着飾ったり、褒めてもらえないことに落胆してみたり、別の女にこっそり会いに行くと視線で射殺しにかかってみせたりと、そんな感情の起伏が良い方向に向いてるように思いますね。
けれど、彼女の中に抱えた暗闇の部分は、依然として残るわけで。それも含めて、志乃が僕との在り方をどういう風に定めていくのか、そろそろクライマックスとのことなので、答えが示される日も近そうです。
しかし、鴻池先輩は、なんだか乙女チックモードのスイッチが入っていたり。ああいう、プレゼントのおねだりは、ありがちだけれど、ぐっと来てしまいますね。鈍感な僕は、多分何も気付かないんでしょうけれど、さらに修羅場に陥る可能性、上がってません?
hReview by ゆーいち , 2008/03/23
- SHI-NO夢の最果て (富士見ミステリー文庫 76-7)
- 上月 雨音
- 富士見書房 2008-03-08
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SHI-NO 支倉志乃の敗北
第2部スタート 志乃の内面の変化が語られるミステリ風味(?)な物語
僕の退院祝いの帰り、先輩からもらった、画家・九瑠夜明日の個展のチケット。その個展で出されたクイズに正解した志乃は、保護者代わりの僕を伴って、九瑠夜明日のアトリエへ招待される。気むずかしげな九瑠夜明日。滞在に気乗りしない志乃。すったもんだの末、一泊することになった九瑠夜邸で、事件は起こる。
シリーズ第2部の開幕。という割には、展開に大きな変化は感じられず、どちらかというと今後の展開への橋渡し的なエピソードに思います。
山奥にある隔離された邸宅。電話も車も使えない陸の孤島状態。そこで起きた惨劇。ミステリの定番的な要素を盛り込んでおきながら、事件の解決に至らないという反則技。推理するより感じろと言うことみたいだけれども、ならばミステリのフォーマットを使うことなく志乃の変化を描いて見せてほしかったかなあ。
そんなわけで、僕と志乃の関係が変化の兆しを見せた物語。女の子らしい機微を見せるようになった志乃の中にある、僕に対する思いのウェイトがどんどんと膨れあがって来ているよう。それは志乃という存在にとっては不要なものかもしれないけれど、すでにそれを切り離すことはできないくらいに深い関係になってしまっているような感じ。すでに手遅れ。
エピローグで僕が思いだした過去の情景。それが夢なのか現実なのか判然としないながらも、ふたりがふたりでいるためには決して無視できない何かが、語られていない過去に、そしてこれから語られる未来にあるということは間違いなさそうです。
hReview by ゆーいち , 2007/11/18
- SHI-NO支倉志乃の敗北 (富士見ミステリー文庫 76-6)
- 上月 雨音
- 富士見書房 2007-11
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SHI-NO―呪いは五つの穴にある
人を呪わば……あれ、墓穴が五つ?
前巻と次巻を続くかのような、閑話休題的なエピソード。
志乃ちゃんと僕の距離が縮まったりしたかと思ったら、真白ちゃんの乱入で微妙な空気が流れたり、何このラブ寄せ? エピソードがどこまでも救いがなく、後味の悪い結末が畳み掛けるように描かれているのに、それを語り、心情を解体していく彼らの何とも軽い空気よ。
てな感じで、呪われた、といわれる本「リゼィエの日記」を巡って起きたふたつの事件とよっつの死を巡る物語。誰もが持ち合わせている、自己愛と、他者へ注ぐ愛情のバランスと、ちょっとした巡り合わせの悪さが生んでしまった悲劇の顛末。
そして、主人公が志乃ちゃんへ抱いていた名状しようのない畏怖にも似た感情との折り合い、彼女の心への近づき。今までは志乃ちゃんを見守る保護者的な立場から、彼女が触れるあらゆる負の事象に対して、嫌悪や忌避を諭していた彼の、一歩前進した物語。
事件に関わったひとたちの感情の揺れ動きとかは、作中で主人公が語ったように、一般通念としての常識からはかけ離れたもので、異質なもの。ただ、それを生み出したのも人間であり、感情に基づき展開していったことが、理解できても納得できないというジレンマを生んでいる感じ。愛情の歪んだ側面とか、善意の裏に潜んでいる無自覚な悪意とか、人間の二面性、物事を見る角度を変えたら表出してくる別の姿とか、一筋縄ではいかない、結末の苦みは、決して良い後味とは言えないですねえ。
そうして、志乃ちゃんへ自分から近付いて、ともに在ることを決意した主人公は、今後彼女が巻き込まれ、関わっていこうとする事件の中で、どんなふうに変わっていくのでしょうか?
hReview by ゆーいち , 2007/07/05
- SHI-NO―呪いは五つの穴にある
- 上月 雨音
- 富士見書房 2007-06
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SHI‐NO―愛の証明
うん、いい感じで第一部完。主人公と志乃の心の交流、というかその関係の進展は非常にゆっくりとではありますが、互いの望んでいた最良の未来へと向かっていくような希望がありますね。ぶっちゃけ、ここで完結しても悪くないんですが……。もし、もし次巻以降、志乃が中学生になったり高校生になったりして登場したら、非難囂々な気ががが(笑)
まぁ、それはおいておいて、結構ミステリしてましたねぇ。富士見ミステリー文庫らしくない。今回の犯人当てのトリックは、私が単純なせいか最後まで気付かなかったり。イヤ、なんか変だなと思って読み直してみたら、なるほど、でしたけれど。
正直、第一巻を読んだときは、ここまで面白くなるとは予想もできなかったけど、続きが楽しみなシリーズに成長してくれましたね。この作者の書く人間の在りようとか生き方とか、なかなかに惹かれるものがあります。
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