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葉桜が来た夏〈2〉 星祭のロンド
おまえが俺を守るって言うなら俺の身体だけじゃない、俺の正義も守ってくれ。おまえならそれができるだろ。
紆余曲折の末、葉桜との共生関係を受け入れた学。人間とアポストリとの交流フォーラムに招かれ東京を訪れた学たちは、そこで星野友深と名乗る少女と出会う。学の父・恵吾と連絡を取りたいという彼女は理由を話さず、しかし、彼女を追う謎のアポストリハンターや自衛隊とのいざこざに、学と葉桜は否応なしに巻き込まれていく。
人間とアポストリが共存する世界の危うさがだんだんと描かれるようになってきてますね。アポストリ内の派閥の力関係と、政治思想の違いが露わになり、それぞれの思惑と人間側の思惑との齟齬が、不協和音を生み始めているような印象を受けます。
望む望まないに関わらず、学と葉桜はそのかなり中心に位置し、その存在自体が非常に政治的な意味を持つ。それを今回登場した星野友深という少女が巻き込まれた事件を通じて、ふたりに自覚させるというお話でもあったように思います。
そんな友深の背景は、葉桜や学が抱えるものに負けず劣らず複雑なもので、その出会いも合縁奇縁なのかどうなのか。なんだか設定ありきでキャラクターが作られたような気がしないでもないですが、彼女が登場したことで、また両種族間の関係は新たな局面へと進んでいくのでしょうか。
物語的には、やはり終盤の覚醒モードじみた学と〈秋〉の灯籠との交渉シーンが盛り上がりましたね。これまで学が対峙してきた、対個人の交渉ではなく、〈秋〉という大きなまとまりに相対しての交渉。信念だけでは押し通ることのできないステージにおいて、誰もが完全に納得のできるという、存在しない答えではなく、誰もが妥協できるという答えを導くための交渉はまさに静かな戦いともいえるかと。甘ったれた理由で孤独を選ぼうとする友深も叱り飛ばし、父である恵吾をも食うかのような交渉でしたね。これが彼の先行きを暗示するような気がします。
そして、微妙な関係のままの学と葉桜も、お互いの素直な部分を少しずつ見せられるようになってきてるかな? 共棲という政治的な言葉に縛られたままでなく、互いが互いを望むから共に在る、そんな関係もあるのだということはすでに身近な前例があるわけで、それに気付き、もっと歩み寄っていく、そんな物語に期待したいですね。
hReview by ゆーいち , 2008/09/20
- 葉桜が来た夏 2 (2) (電撃文庫 な 12-2)
- 夏海 公司
- アスキー・メディアワークス 2008-09-10
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葉桜が来た夏
嘘をつくのが嫌ならつかないですむ世界を作ればいい。大丈夫、時間はたっぷりあるんだから。
アポストリと呼ばれる異星人との邂逅から19年が過ぎた。彼女たちを乗せた「十字架」が落下した琵琶湖周辺は、アポストリと人間が共存する居留区となっていた。アポストリが絡んだ過去の事件により、アポストリに対し憎しみを抱く南方学は、居留区独自のシステムに則り、異星の少女・葉桜との共棲生活を強引に始めさせられるが……。
ファーストコンタクトに失敗した『帰星子女』みたいな印象が。異星人との異文化交流だったり、技術レベルの違いによる政治的な取引だったり、ボーイミーツガールの背景に結構黒い大人の事情がひしめいていたお話でした。
アポストリをこれでもかと憎しみ、仇を討つことにすべてをかけていたような学が、葉桜との出会いと最悪から始まった関係の、改善が割とあっさりだったりしたのはやや拍子抜けですが、こういうまっすぐに理想を追う少女と、ひねくれた少年の距離の縮まりを見るのはやはり楽しいですね。
そして、事件の黒幕だったり背景だったりは、やっぱり後味が悪くて、その結末もなんだか切ないなあ。立て続けにこういう救われないラストを見てしまうとしょんぼり気味。
けれど、学の父、そして、葉桜の伯母ら、おとなの築いてきた道を、今度は学たちが造っていく、そんなラストシーンは良かったですね。
hReview by ゆーいち , 2008/05/31
- 葉桜が来た夏 (電撃文庫 な 12-1)
- 夏海 公司
- アスキー・メディアワークス 2008-04
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