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聖剣の刀鍛冶 #3 Fool
死なない。誰も死なない。全員生きて帰る。それが“全てを救う”ということさ。
灰被りの森で野草の採集をしていたリサとルークは、異形の怪物に襲われた。全身から剣を生やした人外。街で多くの被害を出したそれを倒すため追いかけてきたセシリーとアリアは、『爪痕』と呼ばれる亀裂へと落ち行くリサを助けるために、その身を躍らせる。
緊張感高まる世界の中で、自らの信念だけを貫くために懸命に戦うセシリーに訪れる大きな挫折。信じてきた世界に裏切られる絶望と、どうしようもない理由で折れてしまう心。主人公が女性キャラであるからこその、バイオレンスなシーンはちょっと意外、というかここまで描く意気込みの作品とは思わなかったですね。
ルークとリサ、そしてアリアとの出会いは、セシリーにとって大きな転換をもたらしてきてます。それは、その三者にとっても同様で、それぞれが抱えていた、打ち明けることのできなかったような負の側面を、互いに明かすことができるくらいの強さをもたらしてくれてもいます。ルークとリサの関係の改善もそうで、それはルークが一方的に感じていた引け目かもしれないけれど、それをリサとともに分かち合い、心を明かすきっかけを生んだのは、ひたむきに自分の生き方を貫くセシリーの言葉があったから。
そして、今回はそんなセシリーも、皆に支えられていることが、彼女にも理解されるお話。自分の力を信じ、信念を貫けると思い続けてきたセシリーにとってのどうしようもない挫折。明確な悪意と敵意と圧倒的な暴力に為す術もなく刻まれてしまった心の傷を乗り越えるためのお話。大きく変わろうとしている世界の中で、誰も彼もが当然のように変わらずにはいられないくて、独力で乗り越えられない壁があるなら、誰かの力が助けになる、誰かが助けてくれる、これまで彼女がしてきたように、そんなことに気付かされるお話でもありましたね。
世界的な危機感が高まる中で、その中で思惑を張り巡らす帝国の、シーグフリードの動向は気になるところですが、それに輪をかけ、ルークの身に起きている異変がなんとも不吉なカウントダウンに思えてしまいますね。少しずつ歩み寄っているセシリーとルークですが、ふたりの間にはまだまだ飛び越えなければならな溝があったりで、ラストシーンは良い感じなんだけれど、すんなりと幸せには手が届きそうにないですね。
hReview by ゆーいち , 2008/09/27
- 聖剣の刀鍛冶 #3 (3) (MF文庫 J み 1-11)
- 三浦 勇雄
- メディアファクトリー 2008-09
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聖剣の刀鍛冶 #2 Blacksmith
彼女の愛を、リサの想いを、そしてあなたの意志を鞘に収めたままにするな。
帝国・軍国・群集列国、そして独立交易都市の代表者による三国一都市会議が開かれる。通称『ヴァルヴァニル』対策会議。かつての忌まわしい戦争の名を冠するその会議で議題とされるのはルークの過去にも関わるとある強大な人外の「王」の存在。そして、セシリーは知る。ルークの過去を、リサの存在の意味を、そしてブラックスミスと呼ばれる刀鍛冶の名の由来を。
良い良い良い。これはまた、らしい展開でとても燃える。セシリーを中心とした、アリアとの戦友の絆だったり、ルークに対する微妙な感情の芽生えだったり、そして、リサと彼女の由来となった少女への思いの語られが大変好みの展開。
第2巻にして、いきなりこの世界の最大の秘密が明かされたり、ルークが打とうとしている刀の意味が分かったり、そして、セシリーの家名にもなにやら因縁が仄めかされたりと、濃い展開が堪能できました。
そして、当面の敵となるのか、これまでのエピソードで事件の原因となった黒幕も登場。どういう腹づもりで顔を見せたのか、彼の中に巣くっている憎悪や怨念の根幹に何があるのか、これまた一筋縄ではいかなさそう?
ともあれ、セシリーとルークの関係が、ニヤニヤできそうな感じに発展していって素晴らしい。決めるときはしっかりと決める、勇ましいおふたりさんですが、ときにはその少年らしい、少女らしい年相応の時間を楽しんでみても良いんじゃないですかね?
hReview by ゆーいち , 2008/05/31
- 聖剣の刀鍛冶 #2 (2) (MF文庫 J み 1-10)
- 三浦 勇雄
- メディアファクトリー 2008-05
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聖剣の刀鍛冶
『上等。』シリーズの三浦 勇雄 & 屡那 コンビの新シリーズ開幕!
独立交易都市ハウスマンの自衛騎士団に成り立てのセシリー・キャンベルは、痛んだ剣の修復を断られた帰りの道すがら、禁忌たる悪魔契約の力でもって暴れる男との戦闘で、その剣を折られてしまう。剣を折られ、今まさに振り下ろされようとする凶刃を、見慣れぬ拵えの剣で断って見せた青年。彼と、何よりその手にした剣に興味を惹かれたセシリーは、彼の連れの少女リサから、青年が鍛冶屋「リーザ」を営むルーク・エインズワースであることを聞き出して……。
未だ未熟なれど、熱い意志に燃える主人公・セシリーと謎多き刀鍛冶ルーク、リサを中心に繰り広げられる物語。ちょうど、『上等。』シリーズが男主人公メインで展開したのとは逆の構成ですかね。頑張る女の子って感じで、けれど三浦勇雄らしい熱い展開は健在です。
かつて引き起こされた代理契約戦争で使われた忌まわしき悪魔契約。平和な時代においても、その代償を見に刻んだ人々は存在し、記憶は薄れても、それを用いる人間は決していなくならない、そんな世界。
主人公のセシリーは、持ち前の使命感や家の誇りとか、気概は一人前だけれど、まだまだ経験不足。実戦で臆し、逃げだそうとしつつも、最後の一線で踏みとどまり自らを奮い立たせる。主人公らしい活躍は、ルークに譲りつつも、精神的な部分で、二度と折れまいという固い意志を獲得し、これから成長していきそう。
一方のルークは意味深な台詞を呟いたり、何か目的を持ってあるものを探していたり、何よりもリサという少女との関係がいろいろと予想させられますね。終盤で見せた彼の奥の手を見る限り、彼とリサの関係というのもなかなか一筋縄ではいかない類のものに思えますね。彼の過去といい、まだまだ謎の多い人物です。
シリーズの第1巻とあって、説明部分が多い割には比較的すんなり話に入れたかな。ファンタジーな世界なのに、用語の大部分が現代と通じてるというのは少々違和感ですが、そこはわかりやすさ優先で、そのうち慣れてくるかなあ。
むしろ、何気に人死にがばんばん出てたりするので必要以上に暗い展開に持って行かずに、熱い物語にしていってほしいですね。
hReview by ゆーいち , 2008/01/09
- 聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) (#1) (MF文庫J (み-01-09))
- 三浦 勇雄
- メディアファクトリー 2007-11
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サクラサク上等。
ついに完結! 新シリーズに入ってから、ダイハードな感じに拍車がかかって、重苦しい雰囲気だったのを吹き飛ばすに足る燃える展開。それぞれのキャラに見せ場が用意されていて、大団円にふさわしい巻だったかと。
まぁ、鉄平とゆかりの恋愛模様としては、『ジューンブライド上等。』で完結してる部分はあるので、それ以降のストーリーが鉄平メインの熱血アクションものの比重が増してしまったのは個人的に残念な部分ですが。
どうにも登場してきた新キャラの性格や理念・信条が殺伐としてて、雰囲気ががらっと変わった印象を引きずったままだった感があります。
鉄平と五寸釘の、決して相容れない夢やら信念やらのぶつかり合いが、新シリーズのテーマでもあったと思うのですが、その決着がああいう形になってしまったのは、非常にらしい感じもするし、何も解決してないんじゃないかという感じもあったり。それでも、鉄平の提示した五寸釘にも、あるいは内世界の誰もが思いもしなかった方向への共存の可能性もあるので、その未来は少しずつでも前進していけるとも思えるのですが。
そんなこんなでありとあらゆる障害を叩いて潰して乗り越えて、ようやくたどり着いたゴールは新しいスタート地点。この先のドリーム満点な大学キャンパスライフが描かれないのは少々残念ですが、気持ちの良い終わり方だったのは間違いないですね。
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サクラ上等。
前巻の衝撃的なラストからどのように展開させるかと期待していたら、なんとも鉄平らしい愚直で猪突猛進なリスタート。途中でくじけそうになって、茜さんに尻を蹴飛ばされたり、あひるちゃんや柚子ちゃんの、孤独の中でも失われない闘志に、鼓舞されたりと、展開的にはこれまでのシリーズと同じようなステップを踏んでいるのですが……。
周囲の記憶が失われる中、頼みの綱の内界人の槍ヶ岳やら越後屋やらも囚われの身。新シリーズに入ってからというもの、この明確な悪意にさらされているせいか、空気が重いわ痛い状況が続くわで、鉄平もゆかりも、その他の面々もらしさが失われているのが辛いところ。ここは堪え忍ぶターンなのか。
終盤に来て、ようやく逆転の目が出そろった感じで、最終巻ではこれまでの鬱憤を晴らしてくれるような痛快な展開に大期待。
記憶が取り戻された暁には、その、なんというか、鉄平もゆかりも歯止めが利かなくなって大変なことになりそうですが、それはそれでLOVEの力で万事オッケー。絵に描いたような大団円をきっと用意してくれていることでしょう。
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