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清野静 Tag Archive

時載りリンネ! 4.とっておきの日々

stars ね、G。これからも、ずっとずっとそばにいてね。

「わくわくするような冒険がしてみたい!」 何気ないリンネの一言から始まった冒険は本当に波瀾万丈の一語に尽きる。けれど、リンネだってもちろん巻き込まれる僕だって、四六時中冒険しているばかりじゃない。これから語るお話は、そんなお話だ。僕たちの日常。それはきっとどこにでもあるけれど、思い返してみれば唯一無二の思い出になっている、そんなとっておきの日々たちのお話だ。

天体観測

夏休みの課題を最後まで手を付けないあたりがリンネらしいというか。その逆に久高は自分だけ片付けているのもお約束。うんうん唸りながら最後まで残った自由研究の課題に途方もない事を思いついて挑戦する、そんなお話。

流れ星の時を止めて観察しようなんて発想はなかなか思いつくものじゃないし、それを実行に移す決断の早さも並じゃないというか。思いついたら一直線の暴走列車よろしく、周囲を巻き込みつつも、その一夜の出来事がみんなにとって素敵な思い出に変わってしまう、そんな優しさが感じられる物語。

ジルベルト・ヘイフィッツの優雅な日々

なかなかにミステリアスな存在だったGことジルベルト・ヘイフィッツ嬢のプライベートに迫る!

彼女が箕作家のひとたちに注ぐ愛情の根源となる過去が少しだけ語られたり。彼女の献身は、過去に受けた恩を返す、その一点だけでなく、G自身が得る事のできた家族にとって、自分ができる最良の方法だからこそという、なんとも心温まるエピソード。

そのために、心を鬼にしてリンネを教育することも厭いませんよ? リンネの言葉を借りますが、彼女にとってGという存在は、この先、いつになっても欠かすことのできない、大切なひとであること、ってことなんでしょうね。

フィーバー・ピッチ

なんか、脳内ではキャプ翼ばりの超人フットサルな光景が展開していましたが。リンネ、敵に回すと恐ろしい子!

あるいは、反則的な力で対戦相手を翻弄するのは『涼宮ハルヒの退屈』みたいな。リンネは時間を止めるわ、凪はこっそり物理法則に手を加えるわ、とこのチームの通った後にはぺんぺん草も生えるまい(笑)

凪、凪、夕凪

そんな前章の楽しさとは打って変わって、穏やかなエピソードで締め。

久高の妹の凪が自分の我が侭を叶えてもらえる「凪の日」のお話。

凪自身に与えられた力はとても大きくて、けれど、凪はそれを理解しているせいか思うまま使うこともなくて。そんな凪が、我が侭をゆるされた一日の最後に願ったことは、やっぱり彼女の心根を形にしたような優しい願いで……。

彼女自身の力ゆえに、口数も少なめな凪が唯一お兄ちゃんに、家族に甘えられる大切な一日。久高の恥ずかしがりながらも妹を大切に扱う良いお兄ちゃんぶりと、心底楽しそうな凪の姿が見ている方も嬉しくなりますね。

どれもこれも、大冒険とはちょっと違った、日常を切り取った小編たち。けれど、そこに描かれたみんなの姿は、冒険しているときと変わらないくらいの元気と楽しさを溢れさせていて、見ていてこちらも楽しくなる、そんなお話たちでしたね。

hReview by ゆーいち , 2008/10/21

時載りリンネ! 4    とっておきの日々
時載りリンネ! 4 とっておきの日々 (角川スニーカー文庫 203-4)
清野 静
角川グループパブリッシング 2008-10-01

時載りリンネ! 3.ささやきのクローゼット

stars 私、ぜったい今日のこと忘れないわ。いつまでもいつまでも憶えているわ。

時砕きとして承認されたリンネに、先輩時砕き・ハルナが渡したのは、時砕きだけが所持できるという道具の詰まった大きなトランク。その中のひとつ、時の把手と呼ばれる不思議なドアノブは、それを取り付けた扉をバベルの塔へと繋ぐためのものだった。冒険心を刺激されバベルの塔を探検するリンネと久高。そこでふたりは、塔の住人の少女と出会う。

友情・努力・勝利!

冒険といえば様々な難問に知恵と勇気でぶつかって、それを乗り越え芽生える友情、昨日の自分よりもっと成長した自分。これまでのエピソードに比べて、リンネの時砕きとしての戦いのシーンがなくなったかわりに、リンネと、バベルの塔の中で出会った少女ネリーとの友情のはぐくみがしっかりと描かれていて良い感じですね。

魔法のドアノブでバベルの塔へ直通する扉を手に入れたリンネ。塔内で過ごした時間は、リンネたちの街で過ごす時間の1/25しかないことから、たっぷり遊べるなんて思ってしまったのが運の尽き。ネリーとリンネの過ごす時間のずれが、リンネが想像していたものよりずっと大きいこと、待つことと待たせることの意味の違いに気付いて心を痛めるリンネの優しさは、彼女が成長したことの証でしょうか。

そして、街に憧れ、街で短い時間を過ごし、しかし、そのせいでネリーの身に起こってしまった出来事の責任を取るために必至になるリンネ。リンネだけではできないことも、久高と、リンネを支えてくれるひとたちの助けがあれば成し遂げられる。みんなの気持ちと助力があってこそ、未熟なリンネはネリーを助けることができたわけで。今までの無鉄砲な感じだったリンネから少しだけ成長した感じが得られましたね。

ラストのネリーからの手紙もずるいなあ。ネリーにとっては無二の親友となったリンネ。時間という断絶に、ふたりは引き裂かれているけれど、未来で交わした約束を果たすために頑張るネリーと、少しずつ時砕きとしての自覚を得て、成長していくリンネ。再会の約束はいつかきっと果たされる、それだけは確信できますね。

いやいや、良いお話でした。

hReview by ゆーいち , 2008/08/24

時載りリンネ! 2.時のゆりかご

stars ドキドキワクワクなリンネの冒険第2弾!

時載りの職人・ジュビュックの手による不思議な書棚。中に納めたものの時間を止めるというそれを、大切に使ってきた老婦人・緒方と仲良くなったリンネは、彼女から今度開催されるオークションにかけられる、ジュビュックの家具の鑑定・落札を依頼されて……。

時載りから時砕きへと華麗な変身を果たしたリンネは、別に何も変わることなく相変わらず本は読まないわ、甘いものは大好きだわ、久高たちと過ごす毎日は平和だけどきらきら輝いていて楽しそうに過ごしているみたい。けれど、やはり冒険へのあこがれは捨てきれず、時砕きとなったおかげで変身後のコスチュームを悩んでみたり、決めポーズをこっそりと考えていたりと、そんなところは普段の跳ねっ返りなところとは違って女の子だったり。

そして、彼女の感じている楽しさとかが文面から滲んでいて、本書を綴っているという久高自身の彼女への温かい気持ちも感じられて、なんとも優しくてきれいなお話に仕上がっています。小学6年生の男の子が、やたらめったら凝った言い回しを使うのは、未だにちょっと違和感あるんですが。教養溢れる少年です。

今回も後半は、時載りの残したとあるアイテムを巡って、逸脱者たる時載りとの対決。この辺の描写は、前半の美しい世界の描写と違って普通な感じがして、戦闘の危機感とか緊張感とかとは縁遠い印象。もともと、リンネの言葉通り、大団円な結末になることがわかっているので、あくまでハッピーエンドへの過程として、リンネが成長する試練として、用意されているような印象ですね。

ラストは久高の妹・凪による反則気味の解決方法で、すべて元通り。これはさすがにご都合にすぎるように思うのですが、リンネと久高の関係こそが、こういった素敵な出来事を生み出す起点であり、だからこそリンネが「時の旋法」に選ばれた理由の一つだったりするのですかね。

一つの冒険の後には、さらに大ききな冒険が待っていて。正式に時砕きと認定を受けたリンネの、本当の冒険はきっとこれから。いろいろな出会いと別れがあって、きっと誰かと争うこともあって、でもその終わりは彼女が望んでいるような大団円で。彼女がそう望む限り、悲しい結末なんて予想できない、ドキドキに溢れた物語は、これからも続いていくんでしょうね。

hReview by ゆーいち , 2008/01/05

時載りリンネ!〈1〉

stars ドキドキとワクワクに満ちた大冒険のはじまりはじまり

情報──主に活字――を糧として生きる種族・時載りと、人間の共生する世界。時間を止めるという能力を持つ時載りの多くは、バベルの塔に引きこもり、人間とともに生きる道を選んだわずかばかりの時載りは、その能力を隠しつつ、慎ましやかに人間社会にとけ込んでいた。箕作リンネもそんな『街の住人』のひとりで、父が人間、母が時載りのハーフ。これは「わくわくするような大冒険がしたいな」そんなリンネの一言からはじまった、リンネと幼なじみの久高の織りなす一夏の物語。

丁寧な作品という印象でした。しっかりとした情景の描写、積み重ねられた会話から生まれる人間関係、冒険を夢見るリンネと、それに引っ張られる久高の、最初は小さく、ラストは文字通りの大冒険で、大団円。こういう爽快なストーリーは、まっすぐで気持ちがいいです。

物語の最後で大きな力を手にしてしまったリンネは、これから否応なしにさまざまな冒険に巻き込まれていきそうな予感。いつも笑顔を絶やさずに元気に走り回っていた彼女も、どこかでつまづいたり、悩んだりすることもあるだろうけれど、彼女の周りに集まった久高をはじめとした友人たちがいれば、最後はきっと笑顔で締めくくってくれる、そんな予感も同時にさせられますね。

hReview by ゆーいち , 2007/09/10

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