絶望系 閉じられた世界

絶望系 閉じられた世界 電撃文庫 (1078)読了。

実験作は実験作以上ではなかったかな? 正直、面白いともつまらないとも断じることの出来ない内容でした。

舞台の、そう、この物語はおあつらえ向きに用意された主人公とミワにとって、何度でも再利用可能な舞台なのでしょう。ちょうど7日間で終了するのは、世界を創造し直すにはそれくらいの時間で十分だからという、天使の言葉への揶揄でしょうか。

淡々と、不条理に、理不尽や、狂気や、虚無を綴られていると、こちらの感覚が麻痺してきますね。どいつもこいつも、自分の言葉で自分の論理を語るものだから、もういいやと序盤で思ってしまうのは、損してるんじゃないかな。

で、この世界の中で、一番割を食ったのはカミナですかね。7年も仕込みを続けてきたのに、結局退場させられてしまったわけですし。あぁ、「世界」に絶望したというのなら、その世界から消えることができたということは、あるいは唯一の救いだったのかもしれませんね。

谷川流には、ハルヒシリーズ的な物語を期待してるんだな、私は。

この作品は、谷川流にとっては意味があるかもしれないけれど、受け取る読者の中には、困惑する人も少なくないのではないかなぁ?

ブラックさでいうなら、砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないとか、そして、楽園はあまりに永く―されど罪人は竜と踊る〈5〉とかの方が、大きかったように思えます。

この作品を世に出したことで、谷川流の新たな境地が開けるとしたのなら、この流れを組むであろう別の作品で、今度は、真剣勝負をしてほしいものです。