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θ―11番ホームの妖精

stars そんなに世界のことを思ったら、世界はあなたに振り返ってくれますか?

未来。C.D.と呼ばれる技術の普及によって、人類の輸送手段は一変。地球の裏側まで数時間という、物理的な距離の概念が大きく意味を失った世界。東京駅上空にそれは浮かんでいた。存在しないことになっているはずの東京駅11番ホーム。訪れるものも少ない、誰にも忘れられたホームにて、彼女──T.Bはオオカミのアンドロイド義経と、AIのアリスとともに、今日も勤めを果たしている。

SF は「すこしふしぎと」読む私が通りますよ、と。ハードSFとか銘打ってるけれど、それは作品の枝葉な部分と見て、T.Bや義経、そして11番ホームを訪れたひとたちとの物語を楽しみましょう。用語とかはなんだか難解な文字の羅列になっていますけど、そんなの雰囲気です、考えずに感じましょう。

ということで、これは良いお話ですね。果たされない約束と、それを頑なに信じるT.B。彼女のペットなのか相棒なのか友人なのか恋人なのか家族なのか、あるいはそのすべてなのか。T.Bとの会話が楽しくて、彼女への献身が勇ましい義経。AI ながらも、微妙に空気を読んだり読まなかったりするアリス。この三人しかいない、遥か上空の11番ホームで出会ったひとびととの物語。

こんなところをわざわざ訪れるひとが無目的なわけはなく、それぞれの理由に基づいてT.Bたちと会話して、あるいは目的を果たすために対立して。そんな彼らとの間で、T.Bが語りかける言葉は、彼女がこの場所いる理由に裏付けられているからこその重みがあったり。

世界がどこまでも短く繋がって、誰もが誰とでも簡単に繋がれるようになっている世界で、その世界から隔絶され、鳥籠に囚われ、けれどそれでも誰よりも大切なひととの繋がりをがむしゃらに信じ続けるT.B。彼女の言葉は世界の何処へも届かないけれど、彼らには確と届いていましたよね?

この一冊で完結しても十分なくらい、綺麗にまとまっていますけれど、残されている謎とかT.B自身の秘密とかもまだありますね。そして、何よりも、彼女の約束の行方は成就こそ難しいかもしれないけれど、なにがしかの回答を与えてほしいですね。続編希望です。

hReview by ゆーいち , 2008/05/11

θ―11番ホームの妖精
θ―11番ホームの妖精 (電撃文庫 と 10-1)
籘真 千歳
アスキー・メディアワークス 2008-04

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