ラノベ部

2013年4月18日

stars ……私はあなたに、こういう本を読んでほしいと思う。こういう本に、あなたのような人と出逢ってほしいと思う。それは多分、本と読者の双方にとって幸せなことだから。

文化系の部活に入ろうと、あれこれ見て回っていた一年生の物部文香は、気がつくと軽小説部――通称ラノベ部――に所属していた。濃ゆい先輩たちと、おとなしい感じのクラスメイトの部員、そんなみんなに囲まれて、文香はこれまで手に取ったこともなかった様々な物語に触れていく。部室で、書店で、自室で、出会うことになるたくさんの本たちに。
なんかこういう物語を読む物語な、メタ的なお話が流行中? いや、面白いんですが。

内容的には、ラノベ部の面々がただ駄弁り、どうでもいいような話題に花を咲かせるという、生徒会シリーズみないなお話で、ただ話題の中心がラノベに特化されているような感じ。

物語の視点の中心となる文香が、ラノベ初心者であるということで、確かにあちこちで言われているように、初めてラノベを読むときの入門書的に他の本と一緒に読んでみるのが良いのかもしれませんね。作中で語られているように、いろいろなストーリーの本があるし、気に入った本に出逢えるかもという、わくわく感が文香の視点を通して感じられますね。

ネタ的には比較的ライトなチョイスをされているのか、大部分は元ネタも分かる ((ただ、文香が最初に読んだ本は『スレイヤーズ!』しか分からなかったですが。))し、あんまり古い作品から取ってきてないので、それこそ今の中高生が読んで、ここから次の一冊を読んでみたくなったときに入手しやすいというのは小さいながらも粋な心遣い? 単に鮮度が高いネタだったからかも知れないけれど(笑)

そんなこんなでラノベにのめり込み始めた文香の周囲の面々と、和気藹々とした雰囲気が楽しめる一冊。最後の暦の興奮具合は、確かに物語を書いたことがあるひとにはかなり理解できる感覚かなあ。あそこまでえっちっぽくなったりはしないけど。なんか、文香と暦の百合百合な展開は、美咲ならずとも期待したくなりますが、ここはひとつ、遠くから眺め愛でるのが作法というものでしょう。

hReview by ゆーいち , 2008/09/26

ラノベ部

ラノベ部 (MF文庫 J ひ 2-14)
平坂 読
メディアファクトリー 2008-09