味乃ひらきさんより寄稿いただいた、ToHeart SSです。
あかりちゃんの就職活動☆
「はい、浩之ちゃん。今日もがんばってね☆」
就職活動が始まって早2ヶ月。そして、あかりとの朝食もこれで2ヶ月連続である。
就職活動が始まるやいなや、あかりが「浩之ちゃんの役に立ちたいの」と言って、お弁当と朝食を作ってくれるようになった。夜になると「明日は何時に出かけるの?」ってしっかりチェックまで入れてくれる。まったく、せっかくの春休みなのに、わざわざ俺のために・・・。
「いつも悪いな。大学も春休みだってのに、毎日弁当に朝飯まで作らせちまって」
「ううん。浩之ちゃんのためにお料理するのって楽しいから」
「・・・」
いつもの台詞。でも、あかりが俺のために陰で色々と苦労していることも知っている。だから、俺も今ではそれ以上のことは何も言わない様にしている。
「就職活動、頑張ってね☆」
「ああ、やれるだけのことはやるさ」
もうすでに、いくつかの企業からは最終面接のお誘いがかかっている。内定はまだ先だが、手応えは十分感じている。
「・・・でね、浩之ちゃん」
「ん?」
「浩之ちゃんの就職活動が終わったら、私も就職活動したいんだけどいいかな?」
ん? どうしたんだ急に。以前は『就職なんて絶対しないもん』って言ってたくせに。「いいんじゃないか。でも、俺が終わったら頃には企業も採用が終わってるぞ」
「えへへ。実は、とってもいい所があったんだ」
「ふぅ~ん。で、どこなんだ?」
う~ん。あれだけ「就職しないもん」を連発していたあかりの目に留まった企業か。なんか興味あるぜ。
「・・・うんとね」
「ああ」
「・・・え~っと・・・」
「(いらいらいら)」
「・・・ど、どうしようかなぁ?」
「だぁ~! 会社の名前を言うのに悩むなぁ~!!」
一体何を悩むことがあるんだ! 昔の漫画の中なら、とっくに「早く言えぇ~」ってちゃぶ台返しをしてるぞ。
「で、でも・・・」
「・・・言えないような所なのか?」
まさか、あかりがそんなことをするとは思えないが。
「あ、あのね・・・」
「だぁ~! 俺は時間がないんだぁ~! 早く言えぇ~!」
「ふ、藤田浩之って会社なの」
ぶはぁ!!
意を決してい言い放った会社の名前に、俺は思わず飲みかけていたお茶を吹き出してしまった。マツモ○キヨシならいざ知らず、藤田浩之だとぉ? そんな会社、聞いたこともないぞ。第一そんな企業があったら、志保が真っ先に俺の所に言いに来るはずだ・・・あれ? ってことは、ま、まさか、それって・・・
「・・・む、無理かなぁ~」
顔を真っ赤にしながらもじもじするあかり。や、やっぱり今のは・・・
「・・・残念だが、そこの採用活動はもう終わったみたいだぞ」
「え?」
「もう何年も前から『神岸あかり』に内定が出ちまってるから、これ以上採用はできないそうだ」
「ほ、ほんとに?」
ぱっと顔をほころばせるあかり。
「ああ。社長から直接聞いた話だから間違いないさ」
「・・・ありがとう、社長さん」
心なしか潤んだ瞳で俺を優しく見つめるあかり。そんな瞳で見つめられると、なんだかこっちまで恥ずかしくなってきちまうぜ。
「そ、そろそろ行って来るわ」
恥ずかしさのあまり、急いでお茶を飲み干し、あわててリビングを飛び出す俺。この辺は、小さな時からちーっとも変わってないなぁ~。
「浩之ちゃん」
「な、なんだあかり?」
自分でも笑ってしまいそうな程うわずった声を出してしまう俺。あかりもあかりで、顔がトマトのように真っ赤だ。
「来年の春になったら・・・ステキな式を挙げようね」
今にも消え入りそうな声で、恥ずかしそうにささやくあかり。そんなあかりを見てると、かわいさのあまり、逆にいぢわるしてみたくなってしまう。
「内定式か?」
「もう、浩之ちゃんってばぁ~」
案の定の反応だ。あかりってからかいがいがあるなぁ~。
「はははは。ま、そのうち俺の内定と一緒に、おまえにも最高の内定書を出してやるから、あとちょっと待っててくれや」
「うん」
最高の内定書・・・か。あまり高価な物は出せない分、俺からの想いをたっぷり詰め込んでやらなくちゃな。
「じゃ、いってくるぜ」
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会社へ向かう途中にこんな事を考えているようでは、先は暗いかもしれない(T-T)
つーわけで、根っからクリエイター(自称)な私を拾ってくれ企業を大募集(笑)
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