絵描きさんの描くキャラクターの造形が何か変なのを除けば
静かに滅亡に向かい行く世界の中で、繰り広げられるいくつかの人間模様。作品の性格上、恋を中心に据えて描かれるわけですが、すでに文明的な生活が破綻しつつある壊れた日常の中で、それでも大切な誰かと共にあることを選びたかった彼らの心情、特に痛みだけはひしひしと伝わってきてまぁ……。これが、さぁ泣かせてやるぞ的な盛り上げ方だったら冷めたんでしょうけど、淡々と描かれるもんだから、ついつい感情移入しちゃいましたよ。
「この人さえいれば世界なんて要らない」という言葉が重みを得るには、現実世界はやや軽いのかなと。こういう滅び行く世界の中で、こういう台詞を吐けるような連中こそが、結果として世界を救う。皮肉ですが、だからこそ、その恋に命さえ賭ける価値があったんだと、秋庭と真奈の二人を見ていると思えるのです。
惜しむらくは、淡々と世界を描いたおかげで、この二人の感情の変遷の描写まで淡泊になってることかなぁ。もうちょっと、恋愛方面への描写があると良かったのに。読後に何が残るのかというのも結構大事だと思うのですよ。そういった意味では、ややインパクト不足だったかな。惜しい。
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