あぁ、先を読むのが辛くなる導入ですね。
病院を舞台にしている以上避けられぬ生と死の空気は、前面に出てくるわけでなく、単純にそこに在ると感じられる絶妙な描写が素敵。辛いけど。
主人公の裕一とヒロインの里香の病人らしからぬ冒険は、微妙な部分があるとは思うけれど、里香の覚悟の質が変じるために、あの山への冒険は不可避であったのですねぇ。
そして、この巻だけでは何も変わらない。裕一は身体を壊して入院延長。里香は手術を受ける決意をしたけれど、死という可能性は以前高いままに。気持ちだけでは何も変わらない現実と、けれども若さ故に言葉にした気持ちを信じてみたくなる里香の気持ちが読者には伝わるだけに、静かな展開ながらも、重さは確実に描かれているのでしょう。
蛇足。主人公の名前がこれだから、変に感情移入してしまうよなぁ……。
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