相も変わらず、ラノベ界唯一にして無二(多分)のスポ根フィギュア小説の最新刊。今回も存分にその卓越したフィギュアシーンを楽しませていただきました。
ジュニアスケート界とシニアスケート界の断絶に近い溝。スポーツとしてのフィギュアスケートに真摯に取り組む者と、そうでなかった者の差。アスリートたらんとたゆまぬ鍛錬の積み重ねの果てにある、ほんの一握りの人間のみが辿り着ける頂がいかに遠く高い者かを、新キャラ、キャンドル・アカデミアの視点から描いていきます。振り返れば、終盤で彼女が感じた絶望と、来るべき大会への恐怖はVol.1~Vol.2でタズサが辿った道と極めて近しく感じます。タズサをして本質的に似ていると言わしめるキャンドルは、果たして過去のタズサのように逆境をすら糧に変えることができるのか、このまま腐らず意地を見せてほしいところ。
才能で伍するとしても、明暗を分けるのは、その他多種多様の要因──練習量に支えられる体力・技術力・精神力──であることを冷徹なまでに突きつけたタズサのアンチヒーローっぷりに乾杯。このまま世界一の嫌われ者になる日も近いかも? けれど、彼女は笑って「望むところ」と言うのでしょう。その魅力を欠片も損なうことなく、毅然と、あるいは傲慢に。
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