ただただ続く、平穏な日常。高校生の彼らの時間はいつまでも続くようで、その岐路は目の前に迫っていて。
冒頭からの裕一と里香と、仲間たちの何気ない日々の会話の一つ一つが、とても貴重なもので、そのためだけに本巻を書いたという作者氏の言葉が真であるということが自然に感じられる優しい風景ばかり。
そんな中でも、夏目の口を借りて突きつけられる、里香に残された時間の短さに気付かされ、否応なく覚悟を迫られる裕一の気持ちの揺れ動きに共感してしまうと、逆に思い気持ちにもなってしまいますが。
病院という場を舞台に出会った裕一と里香の物語は、一応のハッピーエンドで幕を閉じた感じです。それでも、里香の時間、東京への憧れより、彼女に寄り添うことを選んだ裕一の選択、それぞれの道を選び始めた、彼らの仲間たちの思い。
本編の最終巻となる本巻で、ようやく寝具以外の服を纏い、表紙を飾った里香の姿と笑顔は、それこそ誰もが望んだ幸せの形の現れなのだと、感慨深く思うのです。
変わらないようで、少しずつ積み重ねていく日常を、手を取り合い歩んでいく二人の姿がいつまでも色褪せないことを願いつつ。
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