このシリーズ、長編シリーズはどんどん重くなっていって、救いがもたらされることがあるのだろうかとビクビクで読んでいるわけですが。
前巻のラストで礼子の身柄の保証の代わりに、彼女の記憶を手放す決意を固めた京介。冒頭からすれ違いや、望みを絶たれる礼子と豊花の描写があったりして、今回も危険な予感! 区画均整の現在のボス・泉水なつきの本格的な進行と相まって、またロクでもないラストを想像していたら……。
良い意味で裏切られましたね。
後ろ向きな考えしかできなかった京介が、ようやく変わってきたことを実感できるラスト。そこに至るまでの、京介と豊花を思う親父・尚の感謝の言葉も、本家の人間の、家長に逆らってまでも二人の未来を開こうとする行動も、小さな子の願いも。
なつきとの決着は一つの区切りで、彼女がこのまま退場してしまうのか、あるいは次巻以降も世界をまっさらに還すために行動するのかは不明ですが、ひとまずここで大きな山場は超えられたように思います。
もっとも、部下を道具としてしか見ていない家長も、灯台に囚われたとある人物の行動も、むしろ本家の中に潜む危険こそが今後の障壁であるとにおわせたりしているのですが。
それでも、ようやく通じ合った京介と礼子の気持ちと、二人の決意、笑顔で閉じられた本巻は、これまでの鬱屈とした展開を吹き飛ばすだけの報われたものだったと思いました。
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