レジンキャストミルク〈3〉

2013年4月18日

レジンキャストミルク〈3〉読了。

これから読む人は4巻もそろえてから読みましょう。やたらめったらいいところで次巻へ続くだから、そりゃ巻末で舞鶴も切れるわと。そういった本編とあまり関係ないところはなかなかに和む──カラー口絵のよくわかる《虚軸》講座も必見、そうかそんなにプリンが好きか──のですが、本編はハードハード。この期待を裏切らない精神的な追いつめ方は、なかなかに来るものがあります。

今回の物語を引っ張るのは、硝子と舞鶴蜜の二人。舞鶴の欠落前の君子との交友を仄めかしたりして、またどんな落とし方をするのかと思っていたら。君子という、硝子と蜜共有の友人の姿をした無限回廊の策に良いように翻弄される二人。硝子は生まれたての感情をもてあまし晶との連携を欠き、全く本来の性能も出せずに敗北、また蜜もその苛烈な感情のままに戦い、的の実力を見誤り敗北。どちらも痛烈な打撃を受けたまま後編へ。

登場人物の誰もが、どこか歪な精神を保ちながらも、彼ら・彼女らなりの方法で、大切な何かを愛しているし、守りたいと思っていながらも、そこが空回りしている滑稽さが悲劇。結局《虚軸》持ちは、舞台となる街から出られないようだし、その狭い世界にある大切な何かを守りながら生きて行くには、彼らの抱える欠落は大きすぎるということでしょう。また、友人らも《虚軸》に関わってしまったばかりに不幸一直線。それを理解する前に、何らかの方法で世界から消えてしまったり、記憶を消されてしまったりと、真実にたどり着く前にリセットされてしまう。そこに感じる日常への亀裂というものは、主人公視点や読者視点でしか観測し得ないものであるという構造が、この作品の危うさを際だたせているように思います。

けれど、無限回廊によって、強制的に《虚軸》持ちにされてしまう人々も、犠牲者といえば犠牲者なのでしょうが、彼らの嫌悪すら覚える自分の世界は、やはり他人とは相容れない、淘汰されうるべき儚い世界なのでしょう。