後味の悪い終わり方ですね。でも、最初から最後まで一貫して描かれていたテーマからすると、各キャラクターの最期は、それぞれ迎えるべくして迎えたものなのかもしれませんね。
救いをもたらされることもなく、文芸部メンバーも散り散りになり、唯一日常へと帰還できたのは近藤と、稜子の二人だけ。この二人が、異常な風景を描き続けてきたシリーズの中にあって、ひたすらに平凡で普通であったことが、運命の明暗を分けたということでしょうか。理性的たらんと必死に自分を保ち続けてきた、木戸野亜紀が最後まで他のメンバーにとけ込むことができず、敵だらけの日常へ放逐されてしまったことが一番哀れかも。空目への仄かな思慕すら、言葉にできなかった堅牢なまでの自我こそが、彼女の不幸。ガラスで象られたケモノはその裡に御しきれない何かを抱えたまま、また一人で生きていくのかと思うと……。
空目は、結局は自らが神隠しに遭った過去の時点で終わっていて、物語の結末にて再びその場所へ戻っただけなのかも。その後、都市伝説となり、新たな物語と化した彼が、いつかどこかの次巻と場所で近藤らとまみえることがあったとしたら、それは幸と不幸、どちらの結末が用意されるのか興味は尽きません。
何もかもうやむやな、らしいといえばらしい結末。このシリーズで描かれた物語は徹頭徹尾、神隠しを巡る物語であり、これまでに語られたすべてはここへ収束するための断片だったというなかなかに壮大なストーリーでしたね。惜しむらくは、校正不足で誤字脱字が散見されたこと。こればっかりは興醒めで、残念なことこの上なしでしたね。
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