十三番目のアリス〈4〉

2008年8月18日

stars 南海のメガフロートが決戦の舞台! 守られるだけの三月は苦渋の選択を迫られる

短期海外留学で南の島『ブルーエデン』にやってきた一行。技術の粋をこらした洋上に浮かぶ大規模建造物は、実は『組織』の拠点の一つで、そこには『七番目』ことノエルと彼女の主・エレノア。
自身の立ち位置と、役割、そして自ら望む在り方とのギャップに悩みつつも、三月はアリスやリリスにいじられて悪い気はしなさそう。って女装したりしてる場合じゃないって……!

そんなこんなで海外遠征の第4巻。序盤でバカなノリを炸裂させつつも、後半のシリアスでどろどろ風味の展開は、落差が激しすぎると思うのですよ。三月はアリスに守られるだけの足手まといでいるのに耐え難いものを感じつつ、けれども、すでに人外たる彼女らの戦いは、そこの一歩足を踏み入れることすら許されない領域へエスカレートする一方。三月の価値は力ではない部分であると、アリスやその母・ラミアが説きつつも、そこは男の子、やはり好きな子は守りたいという気持ちはひしひしと感じますね。ノエルとの一戦はそんな彼の、決してスマートではないけれど、戦いに臨むなら何をおいても生き残ることを一義にするという決意の現れ。搦め手から攻めようと、正攻法でなかろうと、守りたいものを守る力を望み、好意の裏切りと苦悩の果てに初めて得た勝利の味は、味わいの良い美酒などではなく、辛酸に塗れたもので。

『組織』も一枚岩でなく、それぞれの思惑で敵と通じ、味方を欺き、その先に何を望むのかがまだ見えない状態。ラミアですら、手段を選ばぬ冷徹さを見せるし、敗者に情けを見せないシビアな世界が、脳天気なラブコメ展開と表裏一体なのは冗談みたいなシビアな世界。

なかなか敵が減らない展開だけど、今回の退場シーンは後味悪かったなあ。アリスも見せ場が少ないし、三月自身の戦いも、こういう活躍をさせたかったのかなあと疑問に思うよなものだったし、ちょっと各キャラの役割が迷走気味な感じなのかな?

hReview by ゆーいち , 2007/08/24

十三番目のアリス〈4〉

十三番目のアリス 4 (4) (電撃文庫 ふ 8-4)
伏見 つかさ
メディアワークス 2007-08