死に至る病 あなたは死を理解してますか?
透と由宇の奇妙な同居生活は続く。人間らしい感情を少しずつ見せるようになる由宇に、これまでとは違う何かを感じつつも基本はドタバタの毎日。そんなある日、ふたりの前に欠片を宿した女性・栗林浅黄が現れて……。
良かった。前巻では微妙と思ってた部分がかなり改善されてて、日常のドタバタのギャグパートと、シリアスパートのバランスが大変好み。
人の身に宿り、これまでとは全く異なる価値観のもとで生きて行かざるを得なくなった由宇。彼女にとって人間として生きるという行為そのものが、まったく未知のもので、どうしてもついて回る「死」への不安がありありと描かれていきます。常識知らずで幼さを感じさせながらも、その長命から達観した部分を併せ持ち、そして今まで獲得し得なかった死という概念を理解し、その先にある絶望にたどり着いた彼女の選択と後悔のお話。
絶望を知ってしまった透と、これから人間を知っていく由宇のふたりの距離と関係とか成長とかが主となるお話なのかな。分かたれてしまった欠片の回収や、未だ見えない「白い人」の目的など、大局的にストーリーの進行方向は見えていつつも、ふたりの不可分な関係が主従から新たなものへと変わっていく様を見るのも楽しみです。
由宇が理解した孤独と絶望というものは、裏を返せば隣にいてくれる誰かの温かみを、幸せを感じられるということ。これまで叶わなかったそういった感情を得ること、それ自体はきっと由宇も予想もしなかった別の形の進化なのでしょうか。
hReview by ゆーいち , 2007/11/09
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