銀槌のアレキサンドラ

2008年8月7日

stars 戦う意志は大切なものを守る力 立ち上がる力

バイトを上がり、友人たちとの合コンの約束に急ぐ道すがら、近道のために突っ切った公園で、光輔は謎の生き物(?)に襲われる。この世のものとは思えぬ異形の獣。怪我の後遺症が残る右足に噛みつかれ、引き裂かれる感触を最後に意識は途切れ、けれど、命は失われず怪我も嘘のように消え失せ、そして、彼の前に立つのは巨大な銀のハンマーを携えた少女・アレキサンドラだった。

正統派な感じのボーイミーツガールでした。世界を守るという使命と、かつて大切な人を自分の未熟さから失ったという負い目を背負うサンドラと、怪我のために情熱を傾けてきたテニスから離れざるをえず、燻り続けてきた光輔の物語。

異世界から訪れた、世界の護り手、という大層な肩書きの割には、よく食べ、ちょっとおっちょこちょいな面を見せるサンドラ。そんな彼女に巻き込まれ、自分の存在すら脅かされる事態になりながらも、彼女と最後まで付き合う覚悟を決めた光輔。最初は少しぎくしゃくしつつも、中盤以降の息のあったコンビプレーはなかなか。いいパートナーとなりそうな予感がひしひしですね。

惜しむらくは、光輔に憧れてテニスを始めたというクラスメイトの初美嬢が、光輔とサンドラの関係を引っかき回すに至らなかったところ。男1人に女2人、揃ったら三角関係でしょう、と言わんばかりのシチュエーションですから、日常シーンではそういった恋の鞘当て的な展開も見てみたいなあ。前のシリーズの『彼女は帰星子女』ではその辺も堪能させて貰えたので、期待。あと、もうちょっとはっちゃけてくれても。手堅いんだけど、もう一段上を見たいという我が儘な感想になってしまいます。

hReview by ゆーいち , 2007/12/17

銀槌のアレキサンドラ

銀槌のアレキサンドラ (電撃文庫 う 3-5)
上野 遊
メディアワークス 2007-11