レヴィアタンの恋人〈3〉

2008年8月3日

stars 武蔵野共同戦線VS白河軍 大血戦!

調布新町町長・高比良啓十率いる武蔵野共同戦線と、白河軍は新宿にて激突した。優秀な特進種を擁しながらも、軍師不在の武蔵野勢は、白河軍の術中にはまり、戦線を分断。苦戦を強いられ、徐々に戦力を失っていく中、タマは武蔵野側の負けを確信し、しかし、最前線で奮闘するユーキは援軍を信じていた。

全編大戦争。いや、大戦争というにはその規模は800対1700と数だけ見れば大きくない気もするけれど、ほぼ1冊、その闘いの描写に使ってくれれば壮絶さはこれでもかと伝わってきますね。

個人の力では敵軍を圧倒しながらも、数の論理で徐々に押され始める武蔵野勢。士気をくじかれたものから死んでいく容赦ない戦場で、それぞれの思いを抱えながら戦うひとびと。その戦況を覆したのは、意外といえば意外な人物で。そしてそれのための準備を用意周到に行った高比良町長の腹黒さはなかなか侮れないと思ったり。

結末は思ったよりあっけなくて、序盤の活躍は特進種のユーキらの手によるものでも、最後まで戦線を維持したのは、守りたいもののために自らの命をかけ、闘い散っていった一般の兵士たちのおかげ。闘いの後の、守り切れた自らの町に帰還した彼らの安堵のほどやいかほどか。だからこそ、エピローグのひとときの平穏さと暖かさが染みるように感じるのでしょうね。

ユーキ、タケル、シュンの過去から現在に繋がる話も今後大きな意味を持ってきそう。タマと美歌子の関係とも密接に繋がっていそうだし、一同が今後どのような形で物語を動かしていくのか? そして、うっかりフラグが立ってしまった沙也加は、タマとユーキの間にどう割って入ってくるのか。激しい闘いと、妙にほのぼのした日常のギャップがなんとも魅力的なシリーズになってきましたね。

hReview by ゆーいち , 2008/01/26

レヴィアタンの恋人 III

レヴィアタンの恋人 III (ガガガ文庫 い 2-3)
犬村小六 赤星健次
小学館 2008-01-19