そらいろな

2008年8月8日

stars エースいるかい? スポ根野球ノベル

中学時代、ナンバーワンサウスポーとして将来を嘱望されていた白川祐樹は、左肘の故障によって尊敬する監督が率いる名門校への進学を諦めざるをえなかった。そんな彼に声をかけ、スカウトしてきた唯一の高校へ進学し、再起をかける決意をした裕樹だが、入学式当日に出会ったメイド服でとても先輩には見えない少女・天音が野球部監督と知って。

ありそうでなかなかなかった、高校野球をテーマにした作品。雰囲気的には『おおきく振りかぶって』だけれど、主人公のうじうじしたベクトルが正反対に近いので、受け取る印象はずいぶんと違うかも。

故障により名門校への進学を断念し、唯一拾ってくれた学校の野球部監督が先輩の女生徒。監督業の難しさを知っているからこそ、同年代の天音がそれを務められるはずがないと、彼女と野球部を拒絶しながらも、野球への思いを捨てきれない祐樹。やや誘い受けな性格に思えてしまうけれど、彼の野球への思いと、故障した身体のために満足に投球もできない事実への板挟みがあるので、全面的に彼が悪いとは言えないでしょう。

そんな祐樹を優しく応援しつつも、厳しい言葉で叱咤する天音の思いも素敵。ふたりの間にあるのは、監督と選手の信頼関係に思えて、けれど、天音の大変な覚悟を知ってしまった祐樹は、今後彼女とどういう関係を築いていこうとするのか。

野球の試合描写は、終盤の集中しているので、スポーツものとしてよりも、青春ものとしての比重が大きい感じがしますが、試合の展開などは駆け引きも含めて面白かったので、ぜひ甲子園を目指しての物語を続きで読んでみたいです。

スポーツものの小説はさわやかで気持ちがいいですね。

hReview by ゆーいち , 2008/02/16

そらいろな

そらいろな (電撃文庫 い 2-9)
一色 銀河
メディアワークス 2008-01-10