捕まえた。里見のこと、もう逃がさないんだから
『七月の英雄』、そう呼ばれる後期生徒会長選挙への、真行寺遼一突然の出馬宣言がなされた。一方、現生徒会長の和美は、吉野と、里見を巡っての微妙な、けれど良好な関係を維持していた。自分から選択のできない里見に、吉野は一計を案じ、行動に移す。会長選の行方は、そして里見の想いの行き先は?
えー、完結です。なんか、やたらと駆け足な終わり方だった気もしますが。結局ヒロインは吉野だったということでOK? 和美さんの方は、里見との関係があるだけに、恋愛成就というのは重い方向になってしまうので難しいかなとは思っていましたが、こういうケリの付け方とは。ああいった、自分の想いを滔々と語る姿は、彼女本来の臆病さから一歩抜け出た証ですね。結局、初恋は実らなかったりしましたが、この失恋が、きっと彼女を素敵に成長させていくのかなあ。一番割に合わない役所だったのはかわいそうでしたが。
吉野は、ずっとずっと、里見への好意を誰憚ることなく口にして、作者自らあとがきにて「重い」なんて書かれちゃうようなキャラですが。確かに一歩間違うとヤンデレ路線だよなあ、なんて思いますが、彼女のまっすぐさはダークサイドに落ちることなんてなさそうだし、里見とのパワーバランスが絶妙なので、きっとその先もなんやかんや、トラブルいっぱいでも上手くやって行けそうな予感。
エピローグで書くキャラのフォローがありましたが、アズマの件とかバレバレだけど、なんで誰も気づかないのかなあとか。マネーパワーか? 第1巻で感じた、薄暗さな要素は、その実、単なる嫉妬なのか裏切られたことへの失望だったのか、種が明かされてみれば、誰も彼もが恋に恋するお年頃だったってことですか。
なんか、盛り上がりらしい盛り上がりもなく、けれど落ちるべきところへ落ちたお話。身近な恋に気付けたか気付けなかったか、そんな鈍感な藤森里見の、これからの未来はまだまだ波乱がありそう。黒河家へ引き取られて、そこで起きるドタバタとかも、どっかで短編で書いてくれないかなあ。
……そして、もう一方のシリーズ『さよならトロイメライ』は富士見ファンタジア文庫へ移籍、と。ああ、ミステリー文庫は完全終了なのですね。カウントダウンは何時?
hReview by ゆーいち , 2008/03/22
- 待ってて、藤森くん! 4 (4) (富士見ミステリー文庫 58-12)
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