思い出してちょうだい。あなたがこれまで届けてきた、温かくて優しいシゴフミの存在を。人々が努力の果てに得た、輝かしい奇跡の数々を
シゴフミは人に許された最後の奇跡。そう信じる文伽にとって、名も無き殺人鬼の存在は、どうしようもなく悲しいものだった。それは、彼女の終わりの始まりを決定づけた、彼女の絶望そのものだったから。物語は文伽の核心へと至る。始まりの終わりの物語へ。
シリーズ完結。なんかアニメに出てきてるキャラがこちらにも顔を出してるみたいですが、最初の数話しか見てないのでなんとも……。
最終巻は前巻からの物語を引き継いで、シゴフミにまつわるひとびとの物語から、シゴフミの配達人たち、文伽がそうなるまでの物語へ移行していきました。彼女がシゴフミにこだわる理由、信じようとしない、受け取ろうとしなかったひとへ見せる感情の正体、それは配達人としての彼女の出自に深く根付いたもので、この作品で語られた様々な出会いの果てに、ようやく彼女は自分のシゴフミを望んだ相手に届けることができたという、そんな気の遠くなるようなお話。
残された奇跡は、遺されたひとびとにとって、結局はこれから生きていくひとがどう受け取るか、それが全てで、そこに特別な感情を見いだしてしまった不幸な配達人である「彼女」が、これからどういう道を選ぶのか。カラー口絵で短く語られた、彼女と相棒の会話を見直してみると、彼の遺言が叶えられることを願いたくなりますね。
そんな彼女に憧れ、配達人としての矜持を身につけた文伽。彼女がこれから出会っていくひとたち、別れていくひとたち、その誰にも平等に与えられた奇跡が、文伽を悲しませることがないよう、絶望させることがないよう、そんな祈りを捧げたいと思います。
hReview by ゆーいち , 2008/03/26
- シゴフミ 4―Stories of Last Letter (4) (電撃文庫 あ 17-8)
- 雨宮 諒
- メディアワークス 2008-03-10
コメント