パンツァーポリス1935

stars えー、こちら伯林上空。全周波数に向けて送信中

人類史上初の有人宇宙飛行の不幸な結末から十五年。宇宙への挑戦が無意味なものとして誰もが顧みない世界。そんな中、ヴァルターとパウルは、独自に建造した超常識飛行戦闘艦カイザーブルクで宇宙を目指す。カイザーブルクを巡ってドイツ空軍との激しい戦いを繰り広げながら、ヴァルター、パウル、そしてふたりと出会ってしまったエルゼは、その野望の成就へ向けてただ真っ直ぐに飛び続ける。

川上稔のデビュー作。ずっと積んでいたのですがようやく読むことができました。都市シリーズの最初のエピソードとなるお話ですね。

全体的に読みやすいです。『終わりのクロニクル』のようなアクの強さはあまりなくて、すんなりと読めます。逆に言うと、直近の作品のような文体を期待すると肩すかしともなりかねない可能性が。

かつて宇宙を目指した男の後を追って、誰も目指さない天頂を目指すヴァルターとパウル。憧れや使命感にも似たその情熱とかは、『宇宙英雄物語』などを彷彿とさせ、なんとも懐かしいロマンを思い出させてくれました。

キャラは意外にもまっとうな性格をしているようで、口絵やあらすじに書かれているような破天荒な性格ではないかなあとも思いました。なんだか、みんな良識が残っていて変な感じです(笑)

戦闘シーンなども空中戦メインで描かれていますが、無駄に長くもなく過剰な描写もなく、割とあっさり目。意外に短く物語が完結してしまったのが、なんとも不思議な感じです。

ともあれ、独特の世界観を構築する都市シリーズの第1作。以降のシリーズも、またがらりと雰囲気を変えて書かれているらしいので、様々な楽しみ方ができそうなので期待です。

hReview by ゆーいち , 2008/04/15

パンツァーポリス1935

パンツァーポリス1935 (電撃文庫)
川上 稔
メディアワークス 1996-12