──僕達は、この世界になにを祈り、なにを願って生きていくのだろうか
過ぎた科学が生み出した大気制御プラントの暴走とエネルギーを巡っての戦争で、人類はその数を大きく減らし、わずかに残された閉鎖型都市《シティ》に追いやられ滅亡の縁に貧していた。そんな世界で、情報を自在に書き換え物理法則すら操る《魔法士》の少年・錬は破格の報酬と引き替えに胡散臭い仕事の依頼に応じていた。奪還を命じられたのは少女。名をフィアと言った。彼女の存在が、シティの存続の鍵を握るということを、錬は知らない。
大切なひとりの命と、見も知らぬひとびとの多数の命、そのどちらかを選ばざるを得ないという、少年には荷の重すぎる選択を迫られるお話。それゆえに、物語の結末は、決して大団円でもなく、残されてしまったひとびとも、過酷な世界に対して生きていかなければならないという、重荷を背負わされるという、なんともやるせないものでした。
主人公の錬と、彼の前に立ちふさがる《騎士》祐一は、その天秤の両端に位置して、それぞれが選択した未来のために、戦って、傷付いて、そして新たな選択をしました。結局、どちらを選んでも、正解にはならない二択だけれども、一度過ち、後悔の念に沈んでいた祐一に対して、世界を敵に回しても、たったひとりのフィアを守るために戦うことを選んだ錬はどう映ったのか。エピローグで、祐一が選んだ旅路で、その答えが出ると良いのですが……。
存在の情報を書き換えるというトンデモなバトルですが、万能ではなく、制約の中で読み合い、策で上回ったものが勝利に近づけるというのはありがちだけれど、最強設定にならないだけ良い設定でしょうか。錬が、設定上最強っぽいのは、何となく厨二設定っぽいなあとも思いつつ、彼の未熟さとこれからの成長が見られるのなら、それはそれで良いのかもとか思います。
にしても、最後の戦いのスケールはでかいんだけれど、なんとなく違和感を覚えてしまうなあ。想像力が追いついてないせいだろうけれど。あと、祐一って名前で、ああいうキャラ設定されてしまうと、なんとなくもにょるなあ。完璧に余談ですが。
hReview by ゆーいち , 2008/04/16
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