……結局みんな、自分のことが、一番わかんないんだよね
大河の停学が明ける。登校再開の前日、彼女を祝おうと、竜児は大河と買い物に出かける。時節は折しもクリスマスシーズン。無邪気にクリスマスを楽しみにし、サンタを信じる彼女は、普段の凶悪な手乗りタイガーとは違って猫を被ったかのような良い子ぶりで。一方、生徒会長に就任した北村は、有志によるクリスマスパーティを企画。元気のない実乃梨を盛り上げようと、竜児は彼女を誘おうとするが、ふたりの距離は微妙に離れてしまったみたいで……。
ラブコメのコメの要素がどっか行ってしまった!? 前半のだらだらとした、あるいは、陽気な学園祭準備とかクラスメイトとの馬鹿騒ぎとかはどこ行ったんでしょう。というか、全編通してやっぱりどことなく雰囲気が重い感じがしました。
ムードメーカーたる、実乃梨が消沈していて、彼女のワケの分からない勢いの良さがなりを潜めてしまうと、かみ合っていた歯車はこうも容易く空回りしてしまうのかと。実乃梨が竜児と距離を取りがちになった理由、大河と北村の近づいた距離にやきもきする竜児、そして、竜児と実乃梨の恋の行方を応援しながらも、ふたりの関係が接近することに言いようのない不安を感じてしまう大河、お互いの気持ちの方向が一方通行じみているだけに、この混沌とした状況は簡単には解決できないだろうな……と思っていたら。
最後の最後でとんでもない展開が。というか、これ、ラブコメじゃなかったのー!? なんか修羅場の予感がひしひしとしてきましたよ。というか、竜児の恋の行方はどうなってしまうの!? 実乃梨も大河も、自分の気持ちを自覚しつつも、ふたりが互いに遠慮し合っているようなもどかしさが、親友という間柄だけになおのこと切なく映ります。竜児自信も、自分が誰といっしょにいたいのか、誰に幸せになってもらいたいのか、おぼろげな答えを得つつも、それと真っ正面から向き合うには少々遅すぎたような……。
そして、この四人とは別の視点から彼らを眺める亜美。後からこの輪に加わった彼女がこぼした本音とも取れる一言は、それこそ彼女の後悔と切望なのか。猫被りを止めて本性を見せつつも、受け入れられているこのクラスに、彼女なりの愛着を感じつつも、真に交わることができないと悟ったような達観さも見え隠れして、損な役回りに思えてしまいますね。
しかし、ここまで来たら、この物語のラストの選択肢というのは絞られ切ったような感じですが、一体どうなることやら。このエピソードとして恋愛ものとして大化けした感のあるお話ですが、だからこそ、これまでやって来たバカな展開が懐かしくもあり、いつか戻るべき日常として大切に思えてしまいますね。
hReview by ゆーいち , 2008/04/26
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