飽き果てた。待ち続ける日々の長さと、この世界に生きる全ての人に
バントーラ図書館で異変が起きている。書架を守るはずの衛獣たちが、あり得ない行動を取り始めた。自らが護るべき領域を超え、地上を目指し、そして武装司書たちを襲い始めた。そんな中、館長代行のハミュッツは、防戦一方となる武装司書たちを助けることなく語り始める。バントーラ図書館と、武装司書たちの存在の真の意味と、これまでひた隠しにされてきた世界の真実を。そして、世界の終末の始まりを。
これまで積み重ねてきた世界の全てが、一気に崩壊を起こすエピソード。世界のため、平和のため、正義のため、戦ってきたはずの武装司書たちの存在意義が根底から否定され、何もかもが結末を迎える物語。
これまで、物語を引っ張ってきた、キャラクターたちが一気に退場したりして、この全滅エンドまっしぐらの静かな終末は、恐ろしさに勝る虚無感を覚えますね。
動き出した天国、それを滅ぼす唯一の手段『菫色の願い』の真の意味、そして、ここに来てようやく明かされたハミュッツの過去。これまでたくさん散りばめられていた伏線が一気に回収されると共に、最後の最後の伏線が張られたということでしょうか。
世界に絶望したもの、倒れたもの、何もできず後悔に苛まれるもの、そして、息絶えつつも目的を果たし笑うもの。一体誰が勝者足り得るのか。ハミュッツの笑みの真意も謎のまま、緩やかに死に行く世界。ここからどんな展開があるのか想像もできませんが、いよいよクライマックス。なんか、とんでもないラストがありそう。とにかく、完結まであと一息。期待が高まってます。
hReview by ゆーいち , 2008/05/01

- 戦う司書と終章の獣 (集英社スーパーダッシュ文庫 や 1-8)
- 山形 石雄
- 集英社 2008-04-25
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