……僕はくだらない人間かも知れないけど、それでもあの人に『ここを守る』って約束したんだ
中央招集会議でアニル明かされたマザー・システムの真相は、シティ・ニューデリーのすべての市民の前につまびらかにされた。しかし、〈賢人会議〉の参謀・真昼は、アニルの語った事実の裏に隠されている、もう一つの真実を明かす。それは、シティ・ニューデリーだけでなく、地球上に生きるすべてのひとびとにとっての運命ともいえるもので。そして、マザー・コア交換を巡り、シティ内部は内戦状態に陥っていく。
[tegaki]燃える! 燃えるぞ!![/tegaki]
アニルとルジュナの論戦に始まり、賢人会議・サクラと真昼の乱入により世界を巻き込み、そして、アニルの願いを叶えるために錬たちが戦う。全編これ見せ場の連続。終始盛り上がりっぱなしのストーリーをどう語れと。四の五の言わずに読めってことで。
魔法士の犠牲の上に成り立つ世界。その是非を巡りどちらが正しいのかではなく、これからの未来をより幸いなものにするためにこそ言葉をぶつけ合うアニルとルジュナ。そして、人間のために犠牲となることを強いられてきた魔法士たちのための世界を築くため、世界の真実をすべてのひとびとに明かす賢人会議。参謀・真昼の真意は、未だ隠されたままのような印象を受けますが、この会議を通して語られたそれぞれの主張は、誰が正しいかとかではなく、これからこの世界で生きていくために考えなければならない、その事実を世界に対して見せたことこそが、彼の言う「世界を変える」に繋がっていくんですかね。タイムリミットは迫り、決して長いとはいえない時間の中で、これから人類が何を見出していくのか、それが語られたりはするんでしょうかね?
対決する各キャラの見せ場も盛り上がりましたね。ディーはやっぱりでたらめだし、どうすんのこいつと思っていたらヘイズの奇襲で撃退、ってか彼に対して有効な手って、もうこういうI-ブレインを強制停止させるくらいしかないんじゃね? 的な最強っぷり。吹っ切れた彼は強いですね。
セラVSクレア。ディーを通して繋がっていたふたりが、直接に向き合う戦い。しがらみから解き放たれ、初めて自分として空を舞ったクレアと、これまでの戦いを通して、強さを身につけていったセラ。クレアの言葉通り、次に出会うときが敵同士でないことを祈るばかりですね。
そして、錬VSサクラ。きょうだいのようなふたりでありあがら、依って立つ信念が対極にあるふたり。これと決めた道を、迷わず歩むことを決めたサクラと、選択を為さないまま迷い立ち止まったままでいる錬。すでに、相互理解の道は閉ざされてしまったようなふたりだけれど、これからいくつも刃を交えつつ、それでも互いが幸せを見つけられる道を探って行けたなら……。だからこそ、真昼はサクラの側にいるのかもしれませんね。錬と過ごした9年という時間を、サクラにも与えてあげたいのかも、とか、彼の人間性からするとちょっと違うかなあとか思ったりもしますが。
何より、アニルの生き様はこれまでのどの人物よりも輝いていたなあ。彼の綺麗すぎた望みは、この世界には眩しすぎるかもしれないけれど、彼の残したふたつの言葉は、これからも世界で生きるひとたちの標となって残っていくのでしょうね。
ともあれ、賢人会議が世界に示した残された時間の少なさ、そして、未だ明かされないままの世界の秘密、そして謎の人物『アリス』と、これからの展開にも目が離せませんね。
ようやく、既刊全部読み終えたけど、次のエピソードは、今年中に出るのかなあ……?
hReview by ゆーいち , 2008/05/05
- ウィザーズ・ブレイン 〈6〉 再会の天地〈下〉 (電撃文庫 (1500))
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