だが、大物では通れない小さな道が世の中にはたくさんある
『狼の足の骨』の噂を追い、港町・ケルーベへとエーブを先回りしたロレンスたち。エーブから紹介を受け、とある商会で仕入れた情報から、『骨』の情報の信憑性に確信を深めるロレンス。しかし、ケルーベは三角州を挟んだ南北で対立し続ける訳ありの町で、今まさにその対立の緊張感は頂点に達しようとしていて……。
上下巻の上巻です。なんだかすごいところで続いています。
旅の連れにコルを加え、ロレンスとホロのやりとりに、純粋な少年が加わることで、ふたりの会話の大人さ加減が引き立てられているような雰囲気。逆に、ここ数巻のような、ふたりの甘甘ないちゃつきより、久方ぶりに大きな商売の兆候を巡っての駆け引きが行われているのが、むしろ楽しく思いますが。
仇敵ともいえるエーブとロレンスの駆け引きもそうですが、さらにロレンスの後ろ盾ともいえるローエン商業組合の遣り手・キーマンの静かな圧力もまた緊張感に拍車をかけますね。
エーブとキーマン、対立する町の構造の縮図かのようなふたりの、表には決して出てこない策謀の手駒として数えられてしまったロレンスは進退窮まったかのような状況に陥ってしまいます。裏切りを是とするエーブと、裏切りには徹底した制裁を辞さない商業組合の中で辣腕を振るうキーマン。どちらも、今のロレンスからは一枚も二枚も上手のような存在。
『骨』を巡る情報収集のつもりが、なんだかより大きな陰謀を構成する小さな歯車としてはめ込まれてしまったロレンス。ここから、望む結果を引き出せるのかどうか。気圧されてばかりで後手後手のロレンスですが、次巻は活躍(?)するようですし、この遣り手どもに一泡吹かせるような展開を期待したいですね。
hReview by ゆーいち , 2008/05/18
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