真実は常に退屈で凡庸なものだよ
物理法則に干渉し、様々な事象を操る方程式、咒式。ガユスとギギナは咒式を使い、様々な依頼をこなす咒式士事務所を営んでいた。万年赤字のふたりの事務所に、ガユスのかつての友人経由で舞い込んできた依頼は奇妙なもので、祭り見物にやって来たツェベルン龍皇国枢機卿長のモルディーンを護衛しろという内容。折しもエリダナの街は咒式士の連続殺人が巻き起こり不穏な空気も漂っていて……。
ガガガ文庫に刊行の場を移して第1巻から再刊行開始のされ竜。作者による大幅な加筆修正、っていうか、これは完全に書き直しになっていますが、そんなおかげで角川版の総ページ数が359頁だったのに対し、本作は456頁とバカみたいにページ数増えています。オリジナルを読んだのも数年前なので、あらすじくらいしか覚えていませんでしたが、大まかな流れはそのままだけれど、細かい伏線が新たに張られたり、設定の変更がなされたりと、これからの展開が大幅に変わりそうな予感も抱かせます。あの、絶望まみれの3巻4巻は一体どうなってしまうのか……。
強大な竜を倒したことがきっかけで、咒式士連続殺人犯・ニドヴォルクに狙われる羽目になる、ガユスとギギナ。そして、そこに絡んでくるモルディーンの策略。物語の舞台は、モルディーンの手によって整えられ、最初から最後まで、彼のシナリオ通りに進むという、戯れにもにた理由から命がけの戦いをさせられるガユスたち。今後の因縁の元凶ともなる「宙界の瞳」の入手経路の設定が変わったあたりは今後の物語にどういう影響を与えてくるのか? 禍つ式との戦いは多かったけれど、竜族との戦いは本巻以降はあまりなかったような気がしますが ((まぁアナピヤとかいましたが……。))、宙界の瞳の出所がどうにも竜族に関連するところにありそうだから、そちらに向かって本来あるべきだった物語が展開していくのでしょうか?
読みづらい読みづらいと言われるシリーズですが、まぁ、慣れてしまっていればこれくらいは普通に読めますね。やたらと難解な漢字やら、化学物質名やらその辺は感じればOK(笑) むしろ、本作の魅力の一つである、ガユスとギギナの命がけの罵倒の応酬にこそ、楽しみを見いだして欲しいところ。荒削りだった角川版に比べて、その辺、かなりわかりやすく書き直されているようでしたが、毒の部分では多少効能が落ちてしまったかも……?
まぁ、本編が怒濤の暗黒展開を見せるのは、次巻以降なので、そこがどのように新展開するのか非常に楽しみですね。第2巻『されど罪人は竜と踊る2 Ash to Wish』は6月発売です。
hReview by ゆーいち , 2008/05/23
- されど罪人は竜と踊る 1 ~Dances with the Dragons~ (ガガガ文庫 あ 2-1)
- 宮城
- 小学館 2008-05-21
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