ムシウタbug 7th.夢高まる鳴動

stars 想像してみて。誰よりも強いあなたたちが戦うんじゃなくて、手を取り合うことがあれば……特環とかそんなもの、ちっぽけだと思わない?

亜梨子の身体を蝕んでいく摩理の“虫”銀色のモルフォルチョウ。残された時間が少ないことを悟りながらも、亜梨子は一号指定の虫憑きたちを一堂に会させることに成功する。対立し、戦うことしかできなかった“かっこう”・リナ・ハルキヨたち。亜梨子の願いは三人の手を繋がせることができるのか……。

過去の物語を紡ぐ『ムシウタbug』もいよいよ終局へ向けて加速が始まった印象。本編においてその存在感を失くしてしまっている亜梨子が、過去において“かっこう”やリナ、ハルキヨたちと何を語り、何を目指したのか。このシリーズの最後で語られる物語こそが、本編において変わってしまった彼らの原因となっているのでしょうか。

そして、亜梨子と摩理の求める答えはどうなるのか。生きたいという夢を残しながらも、親友を思い続けている摩理の心と、それを知ってしまった亜梨子の心。提示された答えはふたつ。あるいは別の選択でもって、新しい答えに至ることができるのか。

書き下ろし中編「夢抗う語り手」にて示された、摩理と“先生”のエピソードを見ると、摩理の願いも純粋で儚く切実なもので、そしてイレギュラーによって生まれてしまった彼女だからこそ、ある種の不幸と、また別の未来を手にする可能性を併せ持ってしまったんですかね。

物語の収束点が見えてきました。ゴールはあと少し。答えまであと少し。

hReview by ゆーいち , 2008/06/09

ムシウタbug  7th.夢高まる鳴動

ムシウタbug 7th.夢高まる鳴動 (角川スニーカー文庫 163-57)
岩井 恭平
角川グループパブリッシング 2008-06-01