いつか本当に長き時の刹那にでも、あなたがこうして安らげる「人間」と出会えれば良いですね…
奇妙な行動を取るシャナ。それを不審に思ったヴィルヘルミナは、悠二とともにシャナの尾行を開始する。シャナが秘密にしているささやかな出来事。悠二とシャナの道が別たれる以前の小さな物語『ドミサイル』。そして、新米たる炎髪灼眼の討ち手だったころの出会い、『ゾートロープ』。ヴィルヘルミナと『約束の二人』の出会いの契機となったエピソード『ヤーニング』。それは、今は遠き日の物語たち。
……えーと、ここまで露骨に引き延ばし戦略を採られると、最初に憤りが来るわけですが。
ということで、前回の短編集が出た時にも思いましたが、物語の佳境にさしかかっている時に、この短編集を出すのは読者の神経を逆なですると思わないのですかね。本編は、おそらくは来るアニメ第3期との連動狙ってたりするんでしょうけれど、そっちに興味ない人間にとっては、焦らしプレイどころか嫌がらせになってしまうことを理解してもらいたいなあ。都合1年待たされることになるのか。う~ん、ここまで来て切るのも微妙だし、適当に付き合うんですけどね。
さて、物語自体は、これまでの短編集よろしく、本編以前の外伝的な3編。
『ドミサイル』は、本編の殺伐さを思うと、懐かしくなることひとしおですが、この日常が、戦いの後、彼らの帰る場所であると願うことは、たぶん無駄なんだろうなあ。だからこそ、この日々の暖かさを、懐かしさとともに噛みしめるわけですが。
『ヤーニング』は因縁めいたヴィルヘルミナと『約束の二人』の出会いを描く物語。享楽的に生きる『約束の二人』と、使命に生きるヴィルヘルミナの不釣り合いな組み合わせがこのようにして生まれたんだなあと。キャラに思い入れないと、華麗にスルーされそうなエピソードですが、まぁ、これはこれで。
そして、人間界での経験がまっさらに近い、まだ名もなき炎髪灼眼の討ち手であった頃の彼女が、ゾフィーとの出会いで何かを学んでいく『ゾートロープ』。ゾフィーの予言めいた願いが、形を変えて本編で、シャナをどう苦しめているのか、それを今後彼女が知ることはあるんですかね。世間知らずな彼女を育ててきた父親代わりのアラストールが、ゾフィーとタケミカヅチのコンビに叱咤される様はコミカルなんですが、その境遇って実は結構きついんじゃないのかなあ。悠二と出会うまでのエピソードは、またこれからもいろいろ描かれたりしそうだなあ。
しかし、とにもかくにも、内容はともかく出版の順序が空気読めてないことこの上ないのは確かかと。こういうサブストーリーは本編の進行を妨げない形態で出してもらいたいんですが。次巻は秋とか冬になるのかなあ。とにかく待たせすぎですよ。
hReview by ゆーいち , 2008/06/15
- 灼眼のシャナS 2 (2) (電撃文庫 た 14-22)
- 高橋 弥七郎
- アスキー・メディアワークス 2008-06-10
コメント